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この世界でも通用するもの

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日中、メイドや執事たちは自分たちの自宅から通いで働きに来る。

住み込みは居ないから朝食の支度だけ私が行うことになった。


早朝出勤のメイドもいたんだけど、私が希望して朝食を担当させてもらった。


一食でも携わればこの世界の食材とか調理法とか材料の入手方法、通貨、生活レベルの相場が分かるじゃん。

地味に見えるかもしれないけどこの方法が一番環境に馴染むのにいい方法だと思う。


ってことで、今日もせっせとみんなが家に帰った後のキッチンで明日の朝のパンを仕込んでいる。


キッチン広いし食材がケチらなくても良いほど豊富にある。

無駄遣いはしないけど、この環境での料理は超楽しい。


保存庫には私が朝食に使う食材は専用のかごに入れてくれている。


ああ、明日はこのクランベリーでベーグルを作ろう。

あ、クリームチーズもある!これ私用に厨房長が買ってくれてたやつだ。

もう、厨房長無駄にイケメン!顔はゴリラだけど。




朝食の用意をすることになって、屋敷のスタッフたちは徐々に私と仲良くしてくれるようになった。

メイドと一緒に買い物について行ったら、ちゃんと自分の荷物を持つし、美味しそうなものがあれば一緒に食べ歩く。


ちゃんと高校に行ってなかったからこういうのすごく楽しい。

メイドによってはちょっとめんどくさそうな子がいるけど、だからって特に不便はない。


総じて快適な日常なのだ。





デイビット様は足が悪いけど杖を突けばどこでも移動できるから、夜遅くまで領地の視察や会議に出て忙しい。


でも、朝食だけは私と一緒にとってくれる。

私が作った朝食を嬉しそうに食べてくれるから調子に乗ってまた凝ったものを作ってしまう。


デイビット様が笑うとハンサムなおじさまから一気に可愛い癒し顔になるのがたまらない。

不覚にもドキッとしてしまうし、惚れてまうやろー-!と思う場面もしばしばある。


けど、私はデイビット様の愛しの妻になることはないけどね。


デイビット様の恋愛や性的対象は男性だから。


だから私はデイビット様を好きになっても報われないのだ。

こればかりは仕方がない。残念だけど。



そんな調子でデイビット様に癒されたりドキドキさせられたりしながら、偽りの夫婦であっても息が合ってきたんじゃないかと思う今日この頃。



デイビット様は私の約束通り家庭教師をつけて、この世界の知識を学ぶ機会を用意してくれた。

魔法とかめちゃくちゃ気になるけど、まずは経済とか歴史、地理から学んでいる。


もし、デイビット様に捨てられたら一人で生きていかなくちゃいけないし、魔法とか私に備わってなさそうな分野を頑張るよりも生活に密接している分野を熟知する方が良いもんね。


ルキアの時も同じだったけど、私馬鹿そうって言われるんだよね。

けどその辺は結構真面目で現実主義だから変なものに飛びつかないし、優先順位を立てて行動してるし、人は基本信用しない。

デイビット様が裏切るとかではないけど、いつ心変わりするか分からない。

誰かを頼り切って生きていくことほど怖いものはないんだから。




と言うことで、真面目に勉強してます。


嬉しい誤算だったのが、数学においては日本と概念が全く変わらなかった。

この世界の難しい方程式とかはなかなか理解できないけど、単純な計算は何も変わらない。


つまり…。私の得意なそろばんがこの世界でも使えると言うことだ!




さっそくデイビット様にお願いしてそろばんを用意してもらった。

もちろんこの世界には売っていないので木工職人にオーダーメイドで作ってもらった。


完成品を見たデイビット様は頭に?が沢山飛んでいた。



「エレノア、この木の玉が沢山ついているのは何なんだい?何かの楽器か?それとも呪術で使う道具か?」


「ふっふっふっふ。デイビット様、これは膨大な計算がものすごく的確にはかどる道具です。
デイビット様の好きな数字をどんどん言ってみてください。全て足して見せましょう。
何桁でも大丈夫ですからね。」


「なんだい?そんなこと出来るのか?はははは。ものは試しだ。やってみよう。」


そう言って私はデイビット様の言われる数字を全て計算した。


デイビット様は自分が伝えた数字を紙に控えている。

「終わりましたか?では、答えは10万飛んで293ですね。」

「ちょっと待て、執事にこれを計算させるから。」

デイビット様は私の答えを言わず、執事に計算させた。

結構時間かかったけど執事は頭をうならせながら計算を解き続けた。


「できました!答えは10万293でございます。」


「おお~エレノア!正解だ!」


「デイビット様なぜこのような計算をわたくしにさせたのです?
私を老いぼれと思い、ボケていないか試したのでございますか?」

執事は少し不服そうだ。


「ああ、すまないね。いや、エレノアがこの不思議な道具を使ってあっという間に計算を終えたんだよ。
しかも、これは魔法でも何でもないらしい。すごくないか?」


「え?エレノア様がですか?」信じられないという顔をしている。

「疑うのなら執事さんも問題出してもらって良いですよ。」

「ふむ。ではお言葉に甘えて…。」


それから何度も問題を出されるが全て正解した。


執事さんは口をパクパクさせている。

「全問…正解です。参りました…。」

「ふふふふ。昔ガッツリ仕込まれましたから。
まだ鈍ってなくて良かったです。
でも、感覚がまだ十分戻っていないので、何か数字が沢山並んでいるものとかもらえると練習でつかえるので嬉しいです。」


「ならば…。デイビット様エレノア様は奥様になられたことですし、この屋敷のお見せしてよい帳簿をお渡ししてみませんか?

」執事さんは嬉しそうに提案する。



「君、そういえばここ2年ほど食費や雑費類の帳簿をしっかりつけていないだろう?
エレノアに計算させようとしていないか?」

「いえいえ、滅相もありません。
…けども、確かに国に提出する機密事項の帳簿はきっちり計上していますが、この屋敷の雑費類の帳簿は確かにまだ処理できておりません。」


「やっぱりそうじゃないか。まったく。まあ、いいだろう。エレノアやってみるか?」



「はい!ぜひ!」

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