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姉は乳牛

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なるほど…。


大体の事は分かったぞ。

まあ、事前に聞くことは聞いたし、あとは本人たちに会って確かめるか。


「おっけ~。ありがとう。それで、このドレス結構ヒラヒラして落ち着かないんだけど、それに化粧してないから服と顔がちぐはぐなんだよね。今から化粧するよね?」


「は、はい。本日はお化粧が許されているのでこちらに道具一式用意しております。」


メイドのおばさんはワゴンテーブルのようなものを引っ張りメイク道具を持ってきてくれた。


「おばさん…えっと、あなた名前何だっけ?」


「キャッシーでござます。」


「キャッシーさんが化粧するの?」



「あまり慣れておりませんが、そう奥様から聞いております。」


「なら、私に任せてくれない?」


「エレノア様がですか?」


「そうそう。このドレスとこの顔に合いそうなメイクしてみたいし。ねっ!お願い!」


「…。分かりました。もしおかしなようでしたら、お直しいたします。」


「了解!じゃあ早速やってみる!」


瞳がこげ茶色か…。

そばかすはコンシーラーみたいにちょっと濃い色のファンデで消して、パーツ配置は結構いいからあんまりくどくないように…。

今からその元侯爵って人に会いに行くんだったら夜じゃないよね。

明るい時間に見せる顔だからメイク濃すぎるのはやめておいて…。

アイラインは細めに、マスカラはこうやってボリュームより長さ重視…。


「できた!!18歳のお肌って化粧楽だわ~!キャッシーさん見てみて!良い感じじゃない?」

私はキャッシーさんに力作を見せた。


「え、エレノア様…?なんと美しい…。ああ、このような美しいお姿を殿方に見せておけば婚約者も容易に見つかっただろうに…。」

何か感動しながら後悔するって言う複雑な反応している。

まあ、良い感じに仕上がってるって事だよね。よっしゃよっしゃ!



18歳のあどけない感じを全部消しはしない、けどちょっと大人に見えるようにメイクしてみた。


ルキアの時もそこまで整った顔じゃなかったからメイク研究はかなりのめり込んでたんだよね~。


今それが役に立ってる~!



「ああエレノア様、そろそろお時間です。ご当主様もお待ちでございます。」


「ああ、父親って人ね。はいはい。行ってみましょう。」


私はキャッシーさんに屋敷の中を案内してもらいながら父親と言う人が待っている部屋まで歩いた。


何かフランスとかイタリアとか、そうヨーロッパ風な世界観なんだよね~。

育ちが日本の関西の田舎だから新鮮だわ~。

とか何とか考えているうちに名前を呼ばれた。


「エレノア!何きょろきょろしてるのよ!こっちを向きなさい!」


「え?何?」私が振り向くと


「げ?あんた、エレノア?」


「そうらしいけど、あなたは?」


すっごい金髪でばっちりメイクの、バービー人形にごっついドレスを着た感じの女の子が私を睨みつけている。

何だろう、まあ美人なんだろうけどまずメイク下手すぎ。

あと巨乳なのは良いけど露出しすぎじゃない?


この子の見せ方だと牛って感じだわ。

乳牛ってお客さんに聞いたことある、何だったっけ、ホル…ホル…ホルスタインだ!



「ホルスタインの姉だ!」つい口から自信満々に出てしまった。


「何言ってんのよ!あんたの義理の姉のルーシアでしょ!」


ああ、この子がルーシアか。ホルスタインで名前覚えるところだった。


「ああ、ルーシアお姉さまですね。すごいお胸ですね。」言っちゃった。

それしか言うことないじゃん。

これだけ見せてるから言ってほしいんだよね。


「ふっ。あんたみたいな貧相な体の持ち主じゃ私の素晴らしい素材にくぎ付けでしょうね。」


「え、ええ。」

何か喜んでるよ。

もう一回ホルスタインって言ったらブちぎれるだろうな。

そう考えたら言いたくなるよね。ダメダメ。


「それにしても、何その化粧?キャッシーがやったの?
何か生意気な顔だわ。
あんたみたいな卑しい子はもっとみすぼらしいので良いのに。」


なになに?嫉妬?そんな言い方じゃあ頭下げられてもあんたにはメイク教えてあげない。


「いいえ、本日は自分で化粧を施しました。キャッシーさんは関係ありません。」にっこり笑って答える。


「なーんか、ムカつくわねえ。いつもみたいにオドオドしておけば良いのに!」


突然ホルスタイン女に髪の毛を引っ張られる。


「ちょっと何するんよ!キャッシーさんにやってもらったの台無しやろ!」

ああ、関西弁が出てしまう。キレるとどうしても隠せない…。


私がどすの聞いた関西弁で怒鳴ったのでホルスタインも傍で見ていたキャッシーさんも固まってしまった。

あかん、あかん。これ、東京の子に出して泣かれてしまったやつや。


「うふふ。ごめんなさいね。もう、お姉さま私びっくりしちゃった。
ああ、髪がぐちゃぐちゃだわ。あ、キャッシーさん、あなたの挿している髪留め譲ってくださる?
私の髪留めと交換。」


「いえ、そのような高価なものいただけません。私の髪留めで良ければ…。」

キャッシーさんはすぐに自分の髪に挿していたかんざしの様な髪留めを渡してくれた。



「いいの。せっかく髪の毛セットしてくれたのにごめんなさいね。
良いから受け取って。

これから大切な方たちにお会いする直前に誰かさんがいきなり髪の毛を引っ張るだなんて、乱暴な女の人がこの世界に居るものね。びっくりしちゃう。

誰に報告すればいいのかしら?」




ホルスタインの方を見ると、まずいと思ったのか一時怖気づいた顔をしていた。


そりゃ、流石にこれから重要な場に出る家族に掴みかかったと報告されるとまずいよねえ。
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