俺の事嫌いなんですよね？

焦ってはいけない

肝試し中、涼君と本当に色々話が出来た。


名字の事やお金の事情も教えてもらい色々納得できたが、恋愛に関しては涼君と付き合った女性たちに恨みをもってしまう。

今日、俺は市川の事を期待するといった涼君に俺は懐の深さを知ってしまった。

ここまで素晴らしい涼君になんの不満があるというのだ。

ああ、でも歴代の彼女のおかげで今無事涼君が独身で居てくれているのだから、ここは感謝も必要なのかもしれない。


そして、猫のぬいぐるみから、幼少期の話題が出て涼君はおぼろげながら俺の事を覚えてくれていたのが無茶苦茶嬉しかった。

そのときの少年は俺だという事を伝えようかと思ったけど、それはもっと後でいい気がしたから言わないでおいた。

肝試し中に怖がりだと架空の設定を涼君に相談し、手を握ってもらうことが出来た。

ただつなぐだけじゃない、恋人繋ぎで指と指が絡んでいるのを全神経を指に集中させて涼君の感触を感じる。

嬉しすぎて武者震いが起こってしまうほど感動してしまった。


アフタヌーンティーへの誘いも受け入れてくれて、気が付いたら涼君のつないだ手を自分の頬に当ててしまっていた。


涼君に指摘されて、自分でも驚いてしまいその反動で手を離してしまった。


もっと涼君と手を繋ぎたかった…。また、何かしら機会を作って彼と触れ合えるよう画策しよう。



アフタヌーンティーでは涼君の可愛い姿を見ることが出来て、いつまでもこんな時間が続けばいいのにと柄にもなく思ってしまった。


この機会を作ってくれた池崎成美に感謝する。


他部署だからあまり会うことはないし、わざわざ会いに行くこともしないが。



そして、優しい涼君につけ込み、一緒に映画まで見てもらえるなんて俺はラッキーだ。

あの時もっと握りたかった手も、何かと理由をこじつけて握ってもらう。


途中涼君が隣で寝ていることに気が付き、後半はずっと涼君の寝顔を見ていた。


そしてしばらくすると、涼君は俺にもたれかかってきて寝息を立てている。


寒いのかな？軽く涼君の身体を覆うと「あったかい…。」と寝言を言った。


ああ、これが恋人なら毎日のようにこんな触れ合いがあるのだろうか？


少しだけ、少しだけごめん…。


涼君の頬にそっと自分の唇を押し当てた。ふわりと涼君の香りがして唇には涼君の頬の感触が伝わった。

と思ったら、涼君がもぞもぞと動き出したからすぐ体を離す。



だめだ、だめだ。

相手が同意していないのにこんなことしてしまったらセクハラと思われてしまう。

焦るな、俺。


何とか平静を装って涼君に対処した。


そして最悪な事に、市川に涼君との先を越されるのではないかと焦った俺は壮大に涼君の怒りを買ってしまった。


ああ、なんでこう空回りばかりしてしまうんだろうか…。

今まで何でもそつなくこなしてきたのに、涼君の事となると余裕がなくなってしまう。


くそっ。



ただ、仲良くなりたいだけ、良く思われたいだけなのに…。