上 下
23 / 29

石橋君

しおりを挟む
俺は草野優成(くさのゆうせい)28歳独身の男だ。


実家は地元では名の知れた裕福な家庭で育った。

親の言われるがままに勉強に取り組み、成績はいつも上位をキープした。

美人と言われる母と男前と言われる父の遺伝子を継いでビジュアルも上位に評価してもらえる外見だ。

そんな俺の初恋は男の子だった。

井出島涼君と言うものすごくかっこいい男の子が近所に住んでいて、その子にいじめられっ子から助けてもらったのが縁で野良猫を一緒に世話をした思い出がある。


しばらくしてから引っ越したようで、その時の猫も居なくなったからきっと涼君に可愛がってもらったんだろう。


涼君は俺の中でずっとヒーローだった。

喧嘩が強くて、かっこよくて、すごく優しい子だった。

いつか彼に会った時堂々と友達として横に並べるようにと勉強もがむしゃらに頑張った。きっと会える日を信じて。


順調に成長した俺は坊ちゃんが多いと言われるK大学に入学した。

坊ちゃんだからエスカレーター式でお気楽に入学したんだろうと思われていたが、それは違う。


成績は外部からの生徒と負けず劣らずの上位をキープしていた。

学部は経済学部。いわゆる文系だ。

周りは内部、外部からの入学者問わずほとんどが裕福な家柄の子が多かった。

勉強はもちろん、遊びも抜かりないキャンパスライフだった。

どれだけ遊んでも少し寝れば体力は回復したし、この大学のブランドとビジュアルをもってすれば短期間にお金を稼ぐのはたやすかった。

ただ、性の対象は男。

あと腐れのなさそうな奴と適当に夜を共にして性欲を処理するのが習慣となっていた。
カミングアウトはしていないし不便さも感じなかったのでそれなりに楽しい生活だった。


順調に学年は上がり、就職活動もいよいよ本腰を入れる時期となった時、俺は出会ってしまった。

かつての初恋の人、涼君と。


あの日珍しく学生食堂で友達と昼食をとっていたら明らかに異様な集団が目に入った。


どこから見ても全員ザ・オタクって感じの冴えない男連中。

留学生もいるけどそいつらも洋風オタクな感じで集団でいると別世界が形成されたかのような禍々しい雰囲気だった。


「なあ、あの眼鏡の集団なに?」


「あれ?優成知らないの?K大名物のキャンパスゾンビ集団だよ。ほら、みんな生きる気力を感じないだろ?あいつらゴリゴリの理系でえぐい教授に毎日しごかれてるらしいぜ。おちおち日本語も使えない環境でずっと研究とレポート作成してるから別名芋虫って言われてるんだ。」


「芋虫?」


「家に帰る時間も惜しんでレポートを仕上げているから寝袋が住みかって噂。だから芋虫。まあ、エリートなのは間違いなんだけどちょっと引くよな。」


「ふ~ん。」確かに異様だ

。あ、でもあの中でもマシな男子いるじゃん。

分厚い眼鏡をかけ髪の毛はぼさぼさで着てる服もダサすぎるけどよく見ればスタイルよさそう…。何か見たことあるような?


「石橋君、食堂ってごちゃごちゃしてて並ばないといけないから面倒な場所だね。」

「石橋君、昨日のメカ特集テレビで放送してたけど、僕見れなかったからお母さんに録画してもらってるんだ。石橋君もDVDにして焼こうか?」

「石橋君、今日のレポートありがとう。すごく助かったよ。」

異様な集団は『石橋君』とやらが人気らしい。

まあ、あの中ではマシなビジュアルだもんな。

その『石橋君』は穏やかな口調で返事をしている。


へえ、異様な集団だけどあんなタイプもいるんだ。

そんなきっかけで俺は『石橋君』に関心を持っていた。

けど、学部は違うし大学内で男をナンパすることは絶対にしないマイルールがあったから、時々食堂で見かけたら目で追う程度だった。


それに『石橋君』はいつもオタク集団の中心にいたから安易に近づくことが出来なかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

処理中です...