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俺の初出張
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週が明け、草野主任は出張だったので、あの日少し険悪になった話は蒸し返さずに済んだ。
その後草野主任が帰ってきても特に普段と変わらず業務を進めている。
そして、俺は斎藤さんと出張のスケジュールを確認し合うために個室に移動している。
個室で仕事のスケジュールや訪問先に提示する内容など全て確認を終え、少し休憩時間をとっていた。
泊りがけになるのでホテルは斎藤さんが進んで予約を取ると言ってくれた。
「あのさあ、田上君だから言うんだけどさあ…。」
「はい、何でしょう?」
「女性社員に聞かれたら村八分になるんだけど、田上君だから言うんだけど…。」
「むちゃくちゃもったいぶるじゃないですか。何ですか?」斎藤さんのこういうノリ結構好きだ。斎藤さんは職場ではベテランで、プライベートは3児のパパさんだ。
「泊まる日は串カツを食べに行きたいんだよ。そこでビール飲んでさ。」
「良いじゃないですか。お供しますよ。」
「そんで、俺が予約予定のホテルの近くにお姉ちゃんの店が沢山あるわけ。」
「ああ、綺麗なお姉さんいるお店ですか?」
「そうそう。ちょっと触らせてもらう系。」
「なるほど。興味深いですね。」
「ああ、田上君ならそう言ってくれると思った。田上君も興味あるなら社会見学で付いてきてもいいよ。」
「そうですね、考えておきます。」
「まあ、田上君はこれからいくらでも遊べるもんな。俺は今三人目産まれて、嫁さんにいっつも怒られてさあ。たまには気分転換しても罰は当たらないと思うんだ。」
「俺、結婚してないし子供もいないから分からないですけど、大変そうですね。」
「そうそう。田上君独身だし、よく見るとカッコいいから今後結婚と言う名の檻に入った時後悔しないように存分に遊ぶことをお勧めするよ。」
「は、はあ。アドバイスありがとうございます。」
「楽しそうな会話してますね。」後ろから聞きなれた低い声がした。
斎藤さんと俺はビクッと肩が震える。
振り返ると口は笑ってるけど目が笑っていない草野主任が立っている。
「草野主任、お疲れ様です。先ほど大阪出張の日程スケジュールを組んで完成したところです。なあ、田上君。」
「は、はい。先方の提出資料も説明も予習してきました。」
「なんせ、田上君入職後初の出張ですからね。現場で色々と習得してもらおうと思います。」
「なるほど、頼もしいですね斎藤さん。」
「はい。ありがとうございます。」
「けれど、その出張は私と田上君で行くことになりました。これは部長、課長指示です。」
「うえ?草野主任がですか?」斎藤さんがびっくりしている。
「まあ、私も遠方の現場に向かう回数が減ったのですが得意先に顔を見せることも大切ですから、この指示に従うつもりです。」
まじでえ?勘弁してくれ。詰んだ…。
「田上君、出張で斎藤さんに色々教えてもらおうとしていたみたいだね。仕事と夜の楽しみ方も。」
「いえいえいえ。滅相もありません。ね、斎藤さん?」
「はい。至って真面目に出張に臨む次第です。」
「へえ。まあ、そう言うことにしておきましょう。斎藤さん、この日は休日にして普段子育て頑張っている奥様に変わって育児を担い、気分転換してもらってはいかがでしょうか?家族休暇つけておきます。せっかく福利厚生で休暇がありますしね。」
「は、はい。ありがとうございます…。」最後の方は聞き取れないほどがっかりしたお礼だった。
「では、田上君よろしくお願いします。出張先のホテルは私が手配しますので君は先方に行った際のシミレーションをしっかりしておいてくださいね。」
「は、はい。承知しました。」
「はい、では解散しましょう。」有無を言わせないような圧を感じる言い方だ。
俺と斎藤さんは肩をがっくりと落とし無言でとぼとぼと自分のデスクに帰って行った。
「全く…。油断も隙もないな。」その様子を見て草野主任がぼそりとつぶやく。
その後草野主任が帰ってきても特に普段と変わらず業務を進めている。
そして、俺は斎藤さんと出張のスケジュールを確認し合うために個室に移動している。
個室で仕事のスケジュールや訪問先に提示する内容など全て確認を終え、少し休憩時間をとっていた。
泊りがけになるのでホテルは斎藤さんが進んで予約を取ると言ってくれた。
「あのさあ、田上君だから言うんだけどさあ…。」
「はい、何でしょう?」
「女性社員に聞かれたら村八分になるんだけど、田上君だから言うんだけど…。」
「むちゃくちゃもったいぶるじゃないですか。何ですか?」斎藤さんのこういうノリ結構好きだ。斎藤さんは職場ではベテランで、プライベートは3児のパパさんだ。
「泊まる日は串カツを食べに行きたいんだよ。そこでビール飲んでさ。」
「良いじゃないですか。お供しますよ。」
「そんで、俺が予約予定のホテルの近くにお姉ちゃんの店が沢山あるわけ。」
「ああ、綺麗なお姉さんいるお店ですか?」
「そうそう。ちょっと触らせてもらう系。」
「なるほど。興味深いですね。」
「ああ、田上君ならそう言ってくれると思った。田上君も興味あるなら社会見学で付いてきてもいいよ。」
「そうですね、考えておきます。」
「まあ、田上君はこれからいくらでも遊べるもんな。俺は今三人目産まれて、嫁さんにいっつも怒られてさあ。たまには気分転換しても罰は当たらないと思うんだ。」
「俺、結婚してないし子供もいないから分からないですけど、大変そうですね。」
「そうそう。田上君独身だし、よく見るとカッコいいから今後結婚と言う名の檻に入った時後悔しないように存分に遊ぶことをお勧めするよ。」
「は、はあ。アドバイスありがとうございます。」
「楽しそうな会話してますね。」後ろから聞きなれた低い声がした。
斎藤さんと俺はビクッと肩が震える。
振り返ると口は笑ってるけど目が笑っていない草野主任が立っている。
「草野主任、お疲れ様です。先ほど大阪出張の日程スケジュールを組んで完成したところです。なあ、田上君。」
「は、はい。先方の提出資料も説明も予習してきました。」
「なんせ、田上君入職後初の出張ですからね。現場で色々と習得してもらおうと思います。」
「なるほど、頼もしいですね斎藤さん。」
「はい。ありがとうございます。」
「けれど、その出張は私と田上君で行くことになりました。これは部長、課長指示です。」
「うえ?草野主任がですか?」斎藤さんがびっくりしている。
「まあ、私も遠方の現場に向かう回数が減ったのですが得意先に顔を見せることも大切ですから、この指示に従うつもりです。」
まじでえ?勘弁してくれ。詰んだ…。
「田上君、出張で斎藤さんに色々教えてもらおうとしていたみたいだね。仕事と夜の楽しみ方も。」
「いえいえいえ。滅相もありません。ね、斎藤さん?」
「はい。至って真面目に出張に臨む次第です。」
「へえ。まあ、そう言うことにしておきましょう。斎藤さん、この日は休日にして普段子育て頑張っている奥様に変わって育児を担い、気分転換してもらってはいかがでしょうか?家族休暇つけておきます。せっかく福利厚生で休暇がありますしね。」
「は、はい。ありがとうございます…。」最後の方は聞き取れないほどがっかりしたお礼だった。
「では、田上君よろしくお願いします。出張先のホテルは私が手配しますので君は先方に行った際のシミレーションをしっかりしておいてくださいね。」
「は、はい。承知しました。」
「はい、では解散しましょう。」有無を言わせないような圧を感じる言い方だ。
俺と斎藤さんは肩をがっくりと落とし無言でとぼとぼと自分のデスクに帰って行った。
「全く…。油断も隙もないな。」その様子を見て草野主任がぼそりとつぶやく。
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