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その日起きた事

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その日、穏やかで充実した日が続いてたので、リリアとロイは修道院前で楽しく話していた。

二人は恋人同士となったので、自然と距離も近くなる。
リリアは年頃の女の子としていきいきとしている。精霊もそれが嬉しいようで、遠くからリリアを見守っていた。
ダンも、仲の良い二人を見てロイにリリアを任せて良かったと安心していた。


ただ、ダンは修道院やバスク地区が平穏になっても欠かせない日課がある。
ダンは毎日仕事が終わり、自宅に帰ってからある道具の手入れを続けている。
また、体は徐々に老いているができる限り魔力や体力、キレのある動きを維持し、その時のベストを保つよう日々鍛錬している。
時々ダンの家を訪れる精霊はその様子を見て心配そうにしていることがあった。

「ああ、チビか。お前よくこの家に来るな。まあ、良いけどよ。この地区が平和なのは良いことだ。お前のおかげもあるぞ。でもな、平和ボケが一番厄介なのよ。あの世界とは縁が切れたけどな、この習慣は体に染み付いてるんだ。こんな老いぼれが何してんだって思うだろう?
なあチビ、この事はお嬢ちゃんや他の連中にわざわざ言うなよ。お節介な奴らだからな。変な気を起こされるとたまんねえんだよ。」と鍛錬中、精霊に約束させていた。






妖精とダンさんが二人を見守る中、リリアとロイは二人の存在を知らず、穏やかな表情で恋人の時間を過ごしている。

「なあ、リリア。次のデートは新しくできた服屋に行かないか?これからラジオがどこの世代をターゲットに装飾関係を展開したいとか考えてただろ?」

「そうお話ししていたわね。今の流行りとか逆に不動の人気デザインとか知りたいわね。新しく服屋さんが出来たの?」

「ああ。店の規模は小さいけど、王都の本店からビッツ領のバスク地区に支店を置いたらしいんだ。」

「まあ、そうなの?確かに、ここ最近治安が良くなってきたから移住者が少しずつ増えてきたものね。街に活気が出てすごく良いわね。」
「だよな。で?俺の彼女さんは俺とのデートを楽しみにしてくれそうか?」
「フフフフ。もちろんよ。服屋さんを視察して、美味しいものを食べたいわ。」リリアが笑う。
穏やかで幸せな時間だ。




同じ頃、マーガレットが何かの気配を察知した。

「なんだか、まがまがしい気配が近づいていくる。」

一緒にいたシスタージャスミンとリタさんが首を傾げる。

「何かしら?稀に貴族や力のある商人がお忍びでラジオ様に会いに来るんだけど、その護衛の魔力かしら?」
シスタージャスミンが考察する。


薬草事業やその他の事業も地区を豊かにすることが目的なので、他の争いごとに巻き込まれないために目立たないように配慮している。

しかし、情報の早い貴族や商人が時々偵察にやってくる。
ほとんどが友好的な者だが時折、ラジオの過去を知っているせいか、かなり横柄な輩も混ざっている。
これまで、面倒な来客はラジオとその執事で何とか対応してきた。
そろそろ本格的に地区全体のセキュリティや人の流れを制限するなどコントロールが必要になってきたと会議でも議題に上がっていた。
その一環で、修道院の一角に簡易のシェルターを作ったところだ。
リタさんも協力し、結界代わりになる魔力封じを練り込んだ素材で覆った仕様だ。
子供達や女性を優先に入ることができるようになっている。避難訓練も何度か行ったが子供達は実感が湧かないので半分ふざけてしまう。

この地区は元々魔力がない弱者とそれに漬け込む輩で成り立っていたので、ごろつきがほぼ居なくなった今、魔力で対抗できるものが少ない。

武力行使で来られるとひとたまりもない。

ラジオはその問題にいつも頭を悩ませ不安になっていたのだ。表面上は平和になったが、問題は山積みである。
自分がビッツ家で権限がないことや魔力がない事がどうしてもネックになってしまう。

そんな課題を抱えた時期だった。


「マーガレットさん、まがまがしいって何だい?普通じゃないの?」

「ああ、何だろうね。ただの強い魔力ってだけじゃないね。懐かしさもある…。ああ。この感じは…。あれだ。魔力に取り込まれた馬鹿たちから感じた気配と一緒だ。でも、膨大な魔力だね、これは。かなりやばいのが近づいてくる。すぐラジオ様の所に行って全員避難させた方がいいよ。」

「分かった!すぐ知らせてくる。合図も出してくるよ!」

リタさんが駆け足で外に出ていった。

リタさんが空に向かって雷の魔力を三発派手に飛ばした。これは緊急時の合図だ。
ドーン!バチバチ!と皆が分かるように空中で魔力が見えた。


関係者全員がリタさんの発した異常事態の合図を確認した。

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