疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン

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見逃せない 2

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「ほら!彼氏がそう言ってるんだから良いでしょ!」
店員が警戒しないようにリリアはわざと、おバカなふりをしながら話す。

「ちっ。まあ良い。ギャラリーが多くなってきたから早く終われよ、お嬢さんよ。」

「分かってるわよ。早く終わらせたいから彼氏に配球してもらうわよ。彼氏に球を全部渡しておいて。」

「へい、へい。」めんどくさそうに店員がロイに玉を渡す。

その後店員が屋台に戻った時リリアはロイにささやいた。

「ロイ、状況によってはあの店員、的に細工しかねないから、私が投げたらすぐ球を配球してね。スピード勝負よ!」

「あ、ああ。」

リリアが真剣な顔つきだ。いや、勝負師の顔だ。ロイも緊張し始める。

「ねえ、おじさん。これ球が3個入ったら商品ゲットよね。渡された6球全部入ったら私、ここの商品ぜーんぶ欲しいな。」

リリアはヘラヘラと笑う。

「け、馬鹿な小娘だぜ。何でもいいよ。早くなげろ。」

「もう、せっかちね。じゃあ、やりますか…。」

(昔ソフトボールの試合のヘルプに行ってピッチャーをしたけど、この体でもコントロール鈍っていないかしら。
そうよ、ほぼ毎日薬草農園で体は鍛えているわ。今、この体は完全に私のもの。

いけるわ!)

リリアはヒールを脱いで、土の感触を確かめた。

(スパイクじゃなくても大丈夫そうね。スカートの下にズボンは履いているし、これで振りかぶれる。)

リリアは裸足のまま、おおきく振りかぶって球を投げた。

ボールは迷うことなくスパンっ!と的に入った。

「え?」

「え?」

「え!?」

周囲で見ていたギャラリーが皆変な声で驚いている。

「ロイ!球!」

リリアはロイの顔を見ていない。手だけをロイに出して、視線は的をずっと見て距離を測っている。

「お。おう!」ロイは我に返ってリリアに球を渡す。

立て続けに残りの5球全て的に入れた。

屋台の店員が何かしようとゴソゴソしていたが、リリアの投球があまりにも早いため的に細工するのが間に合わなかったようだ。

相手が若い娘ということで油断していた。



「ふう。ロイ、ありがとう。最後にお手を貸していただけるかしら。」やっとロイを見るリリア。

ロイが手を差し出すと、リリアが手を添えて優雅に再度ヒールに足を通す。

「おじさん、ありがとう。とても楽しかったわ。えっと。全部的に入れたから商品全部私のもので良いのかしら?」
わざと邪気のない笑顔で話しかける。

「そ、そんなわけあるか!こんなのイカサマだ!この小娘。女のくせに舐めやがって!」

店員が真っ赤な顔でリリアに近づこうとした。
リリアは逃げもせず堂々と正面から受けて立とうとしている。

(ここで逃げたら私がイカサマしたって思われるじゃない。相手がどう出るのか見てやるわ。)


ロイは目が据わっているリリアを連れて場所を変えるか、店員の男を捉えるか迷っていた。
魔法で何とかできないこともないが、騒ぎを大きくすればラジオのイベントが台無しになってしまうからだ。

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