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交渉です

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ある日、リリアはシスタージャスミンの事務室にいた。



「シスタージャスミン。お願いがあります。
修道院の横に薬草を育てる土地を買いたいのです。
それと、収穫した薬草を加工し売るためにこの地区に店を出したいです。

ですが、今この地区の代表者は不調で不在と聞いています。」

シスタージャスミンはジロリとリリアを見ている。


「不在とわかってるならどうしようもありません。諦めなさい。」


「私のお父様の力でこの領地の地区をどうこうする交渉は可能です。
私が言っているのは表の代表ではありません。裏の代表です。」


「何を言っているのです?」


「ダンさんからこの地区を取り締まっている組織があると聞いています。
人身売買や土地の確保、出店の権利全てに関与しているのでしょう?
その組織に認められなければ、いくら表向き許可があっても見事に潰されるのは目に見えています。
手は回しておかなければ。」


「なぜ、その話を私にするのですか?」
苛立ったような表情でリリアをさらに睨む。

「シスタージャスミン。私がこの地区に来た時部屋やうってつけの男性をすぐに手配されましたよね。
その様なことが瞬時にできるのはなぜかしら?
それに、この修道院だけが荒れている輩から手を出されないのは…
シスタージャスミン、あなたがその組織に少なからず影響力があるからでしょう?」


シスタージャスミンは返事をしない。

リリアをじっと見つめて返事を考えているようだ。


「薬草をどうすると言うのですか。無駄なことはやめておきなさい。」
シスタージャスミンはやっと静かな重い口調で問いかける。


「この修道院に暮らす子供たちや通う子供たちはほぼ魔力がありません。
だから不当な扱いをされているのでしょう。
子供に魔力があっても親がお金目当てに器持ちに無理やり売ってしまう。

そんな子供たちが12歳を超えたら待っているのは悲惨な労働でしかありません。
カズは稀な子供でしょう?」


「その意見は否定しません。でも、だから何なのですか。
あなたのような貴族の思いつきに付き合うエネルギーはこの地区のどこにもありません。
慈善事業なら別のところでおやりになりなさい。」

「慈善事業なんて非生産的なことはしません。
私も魔力なしの人間です。
シスタージャスミンも知っておられるでしょう?
私のこの身分もいつまで続けられるか分かりません。
私は私の将来のためにこの修道院を利用するのです。」


「これは取引ということでしょうか?リリア・アルバ。」


「その様に受け取っていただけると嬉しいですわ。シスタージャスミン。」


お互いが睨み合う様な格好だ。
一人は不敵に笑い、
一人は口を固く結んでいる。


「分かりました。良いでしょう。ダンも関わっている様だから、
話し合いに同伴してもらいます。そう伝えておいてください。」

「ご協力、ありがとうございます。シスタージャスミン。」

「私は代表に会わせるだけです。それ以上の関与はしません。
礼を言われる筋合いはありませんから。」とそっけない回答をする。


それでもこの地区でのスタートラインに立てる機会を作ってくれたことには変わらない。
リリアは深々と頭を下げた。

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