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新たな仲間 1
しおりを挟むセリ先生に紹介してもらった新たなメイド。
セリ先生の幼馴染リタさん。
幼馴染とはいえセリ先生より8つ年上のお姉さん的存在だったとのこと。
リタさんは結婚が早く、3人子供がいたが皆学校の寮で暮らしており、手が離れている。
本人はいわゆる肝っ玉母ちゃんキャラだ。
夫はというと浮気症で1年のほとんどは別の女性宅に入り浸っている。
生活費も入れてくれない。
離婚しないのは子供が就職していないので、最後の自立を見届けたらすぐ夫は捨てる予定らしい。
最近酒に酔った夫がリタさんの職場で金の無心に来たところ大暴れして
リタさんは関係者と見なされ解雇(クビ)になったところだった。
「あんなバカ男早く捨てたいんだけどね。
子供が就職するときやっぱりあんな父親でもいた方が良いって言われちゃうんだよ。
生活費も子供の学費も老後の資金も貯めたいしね。
要は地獄の沙汰も金次第ってやつだよ。あっはっはっはっは!」
まだ四十前後というのにリタさんは苦労が多いのか着る物など身なりに無頓着なようだ。
金銭の余裕もないのだろう。
でも不潔な感じはなく、古いものを身につけているが汚れはない。
持ち込んだ調理器具もしっかり手入れされている。
ものを大切に使う人のようだ。
リタさんは肥満とまで言わないが胸とお尻が大きく迫力のある体つきをしている。
リタさんが豪快に笑うと胸とお尻が震えて余計迫力が出る。
その辺にいる男性は一喝で言いくるめてしまいそうなパワーがある。
下品さはない。感性も常識的だ。人情深いのだろう。
「食える時に食っとかないとね!」がリタさんお口癖だ。
セリ先生が言うには昔はもっとおしとやかな人だったそう。
夫や子供の苦労でそうならざるを得なかったみたい。
どの世界も女は大変と思う。男にも男のうんぬんがあるんだろうけど。
これは永遠のテーマね。
皐月の頃は結婚も出産もしてきてないからわからないけど、片親の母の苦労を間近で見てきているので他人事とは思えなかった。
リタさんは3人の出産子育て経験があるので、セリ先生のお世話も頼んでいた。
食事は今まで本家の屋敷で作ったものをデリスが運んでいたが、
リリアの離れ屋敷にも簡単なキッチンが設置してあるのでそこでまかなっている。
セリ先生にはお腹の子供にも栄養がいくよう
滋養のあるものをバランスよくリタさんに作ってもらう。
私は今まで偏った食事を摂り続けていたので、質素で栄養のあるメニューを頼んでいた。
セリ先生の調子の良い時はリタさん、セリ先生、リリアの3人で食事を取ることもあった。皆良い大人なので、お互いの状況に不用意に踏み込まず、楽しい会となっていた。
この距離感は私リリアにとって非常に心地よかった。
そう言えば、教師を始めて少し余裕が出てくると
同僚の未婚女性集まりたわいのない話を時間気にせず楽しく過ごせた。
あの感覚に似ている。
今思えば、あの頃は上の立場に守られ、しがらみも見えず希望に満ちていた頃だった。
今は、皆それぞれ人生の随所で傷を負いながらそれでも前を見ようとしている者たちだ。
これはこれで良い。
リリアにならず、皐月のままでいたらこんな時間を過ごすことができただろうか。
あまり、皐月の頃の思い出は出さないほうがいい気がするわね。
今は、リリアとして精一杯生きよう。
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