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「お兄様ですね。お騒がせしております。
今しがた目が覚めたのでデリスに色々と確認していただけです。お気になさらないでください。」
(何か、リリアの雰囲気が違うな。まあいい。)

「お前が相談するのは食事くらいだろ。
それ以上太るともう人という認識で見てもらえないだろうな。滑稽だなリリア。」
(またここから金切り声で泣くんだろうな。)

リリアはフウッとため息をつきながら何かぶつぶつ言っている。

「この発言は兄だから良いのかしら。でも人権侵害もはなはだしいわ。
 でも、状況が整理しきれていないから、大人しくしておいた方がいいわね。」

「おい、リリア何をぶつぶつ言っているんだ!」

「あら、声が漏れていましたか?もう、歳とると独り言が多くて嫌になるわ。
申し訳ありませんお兄様。
私にしては長期間食事が取れてないので頭が回りませんの。
本日はお兄様とのご歓談はやめておきます。せっかく来てくださったのに本当に残念ですが、お引き取りくださいませ。」

と言いながらお辞儀をする。

「は?あ、ああ。」とケントは混乱した表情で部屋を後にした。

ケントは、自室で気持ちを整理していた。

「リリアのヤツ、何があったんだ。
いつもはすぐ汚らしい顔で泣き始めて醜態を晒していたのに。
今日は僕を見てもオドオドさえしなかったぞ。
僕が疲れているからあいつになめられてしまったのか。また出なおそう。その時はまたいつものどうしようもないリリアだろう。」


ーーーーーーーーーーーーー

数日かけて、
リリア工藤皐月の頃の記憶と、リリアの記憶を短時間でざっくりと整理した。

今、リリアとして存在するのなら優先するのはリリアの身の安全ね。

しかし、あのケントって兄も言い方は最悪だけど、この体は確かに酷いわ。
家具や小物、ジュエリーの趣味も統一感がなくて一つ一つは高価でも揃うとケバケバしくて悪趣味とも言えるわね。
体が重過ぎて腰も膝も足首も痛いわ。
ちょっと動くと息が切れるし、鼻息がすごい。

リリア…今の私は外に出るのも億劫だしお風呂に入るのも面倒なのね。
今の部屋は本家の離れにある建物ね。
父親と兄が一緒にいて私は隔離ってところかしら。

あの兄のリリアに対する接し方は異常だし度を超えているただ、ここまで贅を尽くせるってことは当主であるお父様の援助は期待できるってことね。
兄が実権を握るとそれも出来なくなるでしょう。
今後、こんな生活長くは続かないってことね。

半年後、隣領の修道院に行くことは決定なのよね。
それまでにできる限りこの世界での基礎学力をつけて情報を集めないと。

あの兄は絶対関わりたくないし、間違いを教えられかねない。
デリスは教養が十分でないし、あの子も人の足を引っ張りかねないタイプだわ。
…。
仕方がない。不本意だけど、強行突破といきましょうか。


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