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4 便秘を開く

4-3 試す理由 解放の刻印

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「なんか、楽しいんよ」
ポワは、飽きることを望む御神の気持ちとは裏腹に何度も何度も試し続けていた。

「真守、あれ、何を確認しているのか分かる?」
「死ねないことですか?」
「違うの。あれはね、何度試しても止められないこと、私達が消えないことを体に刻み付けてるのよ。
想像してみて。
否定されて、誰からも隠されて、暗闇の中でずっと存在してはいけないって押さえつけられてたの。
そんな中解放されたら、はしゃいじゃうわよねぇ」
引きこもり経験がある真守は身につまされた。

同じ結果になってもいいのだ。
同じ結果でも確かめずにはいられないのだ。
振り返って安心して、また試す。
向き合えること、試せること、見守る人がいるということ。

真守は自分の過去を思い出す。
「闇しか自分の居場所がない」と自分の存在を部屋に隠した。
気持ちが楽になっても光に戻れず途方に暮れた。
それからいろいろあって、光を浴び、自分の弱さの存在をゆるし、普通に動けるようになった今でも急に足元が揺らぐ瞬間がある。

自分が全部間違っているような気分になって動けなくなるときがある。
「そんな弱い自分さえ、存在していいのだ」と思えるようになったのは最近の話だ。

ポワは真守が長年少しずつやってきたことを急ピッチで行っている。
無意識という気持ちがむき出しの世界で、自分が望んだことを実行して、存在がゆるされていることを試して確認して心に刻んでいる。

「ちょっと、何?どうしたの?
これから働いてもらうんだから、しっかりしなさいよ」
うつむき静かに泣いていた真守に容赦ない言葉を投げかける。

御神さんはずるい。

心理的ことを計算した結果なのか、天然なのかは分からないけれど、真守がどんなに弱いところをさらけ出しても躊躇なく使おうとする。
弱いヤツだと思われてなぐさめられるよりずっといい。
どんなに情けなくても、どんなに弱くても、この上司には関係ないのだ。
自分の都合で振り回す。
どんなに弱ってもこの上司の目には入らない。
弱ったらすぐ立ち直ればいい。
「いつでも頼れる強い人間だ」と見えているなら、その姿でいたい。

「やりますか」
と覚悟を決めて立ち上がった真守に、御神は白い目を向けた。
「何するつもり?」
ポアは変わらず首つりを試し続けている。
変化が生まれていない以上、試すことはない。
真守は、恥ずかしくなって何もなかったかのように元の姿勢に戻った。

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