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休日
しおりを挟む浩二は、ゲーセンでぶらぶらしていた。
久しぶりの休日、友達との待ち合わせ
待ち合わせた友達から「遅れる」
とメールが入って、空いた時間を潰していた。
浩二は、最近新しいバイトをはじめたばかりで、心身ともに重い疲れに付きまとわれている。
なんとなくUFOキャッチャーを見つけて、百円を入れた。
ちっ
一回目は、失敗した。
二回目の百円を入れる。
注意深くぬいぐるみの位置を確認していると、耳元に温かい息がかかった。
「今日は、お休みかい?」
浩二は、動けないまま、UFOキャッチャーの透明カバーに映った自分を見つめる―正しくは、その横を。
浩二の後ろにぴったりと寄り添うように男が立っていた。
浩二は、「客だ」と感じてのどがカラカラに渇いていくのを感じた。
浩二が最近始めたバイト。
高給の誘惑に勝てずにやむにやまれず手を出した―ゲイバーのホスト。
浩二は、男に興味はない。
しかし、ゲイが好むルックスを持っていることに自信があったので、楽に稼げる自信があった。
生活に困ってなければ、絶対に手を出したくなかった。
横に立った男は、自分の体を支えるようにゲーム機に置いていた浩二の手に自分の手を重ねた。
浩二は、ゴクリとつばを飲んだ。
放せ!
振りほどけ!
なぜか体が動かない。
近くの太鼓の達人の曲が―踊る大捜査線のテーマソングが―耳につく。
「休みなら、どっか二人で行かないか?」
男の息が耳を撫でる。
浩二は、叫んで逃げたくなる。
いつの客だ?
こんな客、直接ついたことはない。
まだ一週間しか入ってない。
自分のついた客ぐらい覚えている。
―こいつは、誰だ?
「君が、入ってから、ずっと見てたんだ。
こんなところで会えるなんて思わなかった」
男の声は弾んでいる。
―助けてくれ。
金縛りにあったように自分の体が動かない。
言え!
断れ!
早く!
こんなところをだれかに見られたらどうするんだ!
「すみません。約束があるので」
やっと押し出した言葉は、自分でも泣きたくなるぐらい情けない声をしていた。
「残念だね」
そう言って男は消えた。
息を吐いて、振り返ると、後ろには誰もいなかった。
「浩二、遅れてごめん。それ、やんねーの?」
やっと来た友達は、いつまでも動かそうとしないUFOキャッチャーのクレーンを指差した。
「おっせーよ。」
悪態をつきながら、ボタンを押す。
浩二は、決意した。
あのバイトは、絶対にやめよう。
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