7 / 31
御前試合の噂
しおりを挟む
コーネリアと婚約してから、毎日が充実していた。だがそれと同時に
早く結婚したい。
僕のものにしたい。
彼女を一日中、堪能したい。
片時も離れたくない。
そんな愚かな欲望が頭を悩ます様にもなっていた。そろそろやせ我慢も限界に近い。
もうそろそろ、いいだろう。
結婚する意志を固めていた僕に朗報が齎される。
この頃は騎士の仕事も順調で、五年位勤めていると新人後輩の指導も徐々に任されて来るようになっていた。そして、ある噂が流れ始めていた。
それは近衛親衛隊という騎士なら誰でも憧れる花形。その『増員が決定した』という事だった。ここに配属が決まれば、引退しても安定した生活が保障される為、皆の目の色が変わって行くのが分かる。
「おい、聞いたか?」
「何をだ」
「今度の御前試合の結果で、親衛隊空きを選ぶって」
「本当か?」
「ああ、団長らが言っていたのを聞いたんだ。間違いない」
各騎士団ではその噂で持ち切りだった。斯く言う僕も御前試合で勝って、コーネリアにプロポーズをすることを決意したのだ。
理由は騎士の間では、勝利者のオリーブの冠を恋人に捧げてプロポーズするという事が、最高のシチュエーションとされていた。実際に騎士団長らも実行した事から、更に拍車がかかっている。僕以外にもそうしたいと考える同僚は多いはず。しかも今回は、親衛隊に入隊できるというご褒美付きだ。
薄給の下級騎士にとって、この上もない餌だったに違いない。昇進と言う名の餌に誰もが食いついた。皆、誰も彼も必死になって試合まで鍛錬に励んだ。
僕は試合前日にコーネリアを訊ねて、
「リア、明日の御前試合は是非、君に見に来て欲しい」
「はい、必ず行きます。アレク様、応援しますから、頑張って下さいね」
二年前から愛称呼びをして欲しいと頼み、初めはシドロモドロで呼び合っていたが、いまでは自然と呼べる仲になった。彼女に応援され、喜びを噛みしめながら帰途に着いた。
こうして騎士たちの様々な思惑をのせて、御前試合は始まった。
早く結婚したい。
僕のものにしたい。
彼女を一日中、堪能したい。
片時も離れたくない。
そんな愚かな欲望が頭を悩ます様にもなっていた。そろそろやせ我慢も限界に近い。
もうそろそろ、いいだろう。
結婚する意志を固めていた僕に朗報が齎される。
この頃は騎士の仕事も順調で、五年位勤めていると新人後輩の指導も徐々に任されて来るようになっていた。そして、ある噂が流れ始めていた。
それは近衛親衛隊という騎士なら誰でも憧れる花形。その『増員が決定した』という事だった。ここに配属が決まれば、引退しても安定した生活が保障される為、皆の目の色が変わって行くのが分かる。
「おい、聞いたか?」
「何をだ」
「今度の御前試合の結果で、親衛隊空きを選ぶって」
「本当か?」
「ああ、団長らが言っていたのを聞いたんだ。間違いない」
各騎士団ではその噂で持ち切りだった。斯く言う僕も御前試合で勝って、コーネリアにプロポーズをすることを決意したのだ。
理由は騎士の間では、勝利者のオリーブの冠を恋人に捧げてプロポーズするという事が、最高のシチュエーションとされていた。実際に騎士団長らも実行した事から、更に拍車がかかっている。僕以外にもそうしたいと考える同僚は多いはず。しかも今回は、親衛隊に入隊できるというご褒美付きだ。
薄給の下級騎士にとって、この上もない餌だったに違いない。昇進と言う名の餌に誰もが食いついた。皆、誰も彼も必死になって試合まで鍛錬に励んだ。
僕は試合前日にコーネリアを訊ねて、
「リア、明日の御前試合は是非、君に見に来て欲しい」
「はい、必ず行きます。アレク様、応援しますから、頑張って下さいね」
二年前から愛称呼びをして欲しいと頼み、初めはシドロモドロで呼び合っていたが、いまでは自然と呼べる仲になった。彼女に応援され、喜びを噛みしめながら帰途に着いた。
こうして騎士たちの様々な思惑をのせて、御前試合は始まった。
1
お気に入りに追加
2,714
あなたにおすすめの小説
【完結】堅物な婚約者には子どもがいました……人は見かけによらないらしいです。
大森 樹
恋愛
【短編】
公爵家の一人娘、アメリアはある日誘拐された。
「アメリア様、ご無事ですか!」
真面目で堅物な騎士フィンに助けられ、アメリアは彼に恋をした。
助けたお礼として『結婚』することになった二人。フィンにとっては公爵家の爵位目当ての愛のない結婚だったはずだが……真面目で誠実な彼は、アメリアと不器用ながらも徐々に距離を縮めていく。
穏やかで幸せな結婚ができると思っていたのに、フィンの前の彼女が現れて『あの人の子どもがいます』と言ってきた。嘘だと思いきや、その子は本当に彼そっくりで……
あの堅物婚約者に、まさか子どもがいるなんて。人は見かけによらないらしい。
★アメリアとフィンは結婚するのか、しないのか……二人の恋の行方をお楽しみください。
たとえ番でないとしても
豆狸
恋愛
「ディアナ王女、私が君を愛することはない。私の番は彼女、サギニなのだから」
「違います!」
私は叫ばずにはいられませんでした。
「その方ではありません! 竜王ニコラオス陛下の番は私です!」
──番だと叫ぶ言葉を聞いてもらえなかった花嫁の話です。
※1/4、短編→長編に変更しました。
【完結】白い結婚が成立した女神の愛し子は、隣国で狼に狙われる
らんか
恋愛
白銀色の髪にアメジスト色の瞳を持つ者は、この国では女神の愛し子として扱われている。
その力を欲する者達に狙われることを恐れ、ミラはその姿を魔道具で隠し、普段は醜い姿で過ごしていた。
そんなミラに、没落寸前の伯爵家が強引に婚姻を結び、借金返済をミラの実家に肩代わりさせた後は、お飾りの妻として、夫の仕事を押し付けられるだけの日々。夫は結婚前より公認の愛人とよろしくやっている。
でもそれも今日で終わり。
ようやく3年の月日が経ち、白い結婚が成立する。
ミラは希望を胸に抱き、意気揚々と伯爵家を出たのだった。
ミラが出て行ったから、順風満帆だった伯爵家は徐々に翳りが差してきて……。
*全9話の短編です。
私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください
迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。
アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。
断るに断れない状況での婚姻の申し込み。
仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。
優しい人。
貞節と名高い人。
一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。
細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。
私も愛しております。
そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。
「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」
そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。
優しかったアナタは幻ですか?
どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。
【完結】夫もメイドも嘘ばかり
横居花琉
恋愛
真夜中に使用人の部屋から男女の睦み合うような声が聞こえていた。
サブリナはそのことを気に留めないようにしたが、ふと夫が浮気していたのではないかという疑念に駆られる。
そしてメイドから衝撃的なことを打ち明けられた。
夫のアランが無理矢理関係を迫ったというものだった。
私は修道女なので結婚できません。私の事は忘れて下さい、お願いします。〜冷酷非情王子は修道女を好きらしいので、どこまでも追いかけて来ます〜
舞花
恋愛
マリーは婚約者に断罪されたわけではなかったが、とある聖女に憧れて、伯爵令嬢を辞めてから『修道女』として質素かつ地味、真面目だけを取り柄に平和に暮らしていた。
美しさはさておき、修道女らしく無欲に、清く正しく『色恋沙汰とは無縁』な穏やかな人生を歩んでいた。
ところが、そんな平和に暮らすマリーはついに修道院の昇進試験を受けることになった。
それは初の潜入捜査で、任務の一環として王都での社交界デビューが条件だった。
そして何かの手違いで、巷で噂の墓荒らしが趣味だというサイコな王子(顔は好みのドストライク、身体も声も最高)を怒らせないように彼の『恋人ごっこ』に付き合う羽目になった。
よって、修道女マリーの『時に甘い、時に悲しい』忍耐の日々が始まった。
※ 少々変態じみた登場人物が多い為、苦手な方はご遠慮ください。
※ヒーローは「王都と気まぐれな鳳蝶」から登場。前置きが長いです。マリーが依頼を受けるにあたっての内容で、詳しく知りたいと思ってくれる方はぜひ。
なろうで連載中です。
二人の妻に愛されていたはずだった
ぽんちゃん
恋愛
傾いていた伯爵家を復興すべく尽力するジェフリーには、第一夫人のアナスタシアと第二夫人のクララ。そして、クララとの愛の結晶であるジェイクと共に幸せな日々を過ごしていた。
二人の妻に愛され、クララに似た可愛い跡継ぎに囲まれて、幸せの絶頂にいたジェフリー。
アナスタシアとの結婚記念日に会いにいくのだが、離縁が成立した書類が残されていた。
アナスタシアのことは愛しているし、もちろん彼女も自分を愛していたはずだ。
何かの間違いだと調べるうちに、真実に辿り着く。
全二十八話。
十六話あたりまで苦しい内容ですが、堪えて頂けたら幸いです(><)
【完結】今も昔も、あなただけを愛してる。
刺身
恋愛
「僕はメアリーを愛している。僕としてはキミを愛する余地はない」
アレン・スレド伯爵令息はいくらか申し訳なさそうに、けれどキッパリとそう言った。
寵愛を理由に婚約について考え直すように告げられたナディア・キースは、それを受けてゆっくりと微笑む。
「その必要はございません」とーー。
傍若無人なメアリーとは対照的な性格のナディアは、第二夫人として嫁いだ後も粛々と日々を送る。
そんな関係性は、日を追う毎に次第に変化を見せ始めーー……。
ホットランキング39位!!😱
人気完結にも一瞬20位くらいにいた気がする。幻覚か……?
お気に入りもいいねもエールもめっちゃ励みになります!
皆様に読んで頂いたおかげです!
ありがとうございます……っ!!😭💦💦
読んで頂きありがとうございます!
短編が苦手過ぎて、短く。短く。と念じながら書いておりましたがどんなもんかちょっとわかりません。。。滝汗←
もしよろしければご感想など頂けたら泣いて喜び反省に活かそうと思います……っ!
誤用や誤字報告などもして下さり恐縮です!!勉強になります!!
読んで下さりありがとうございました!!
次作はギャグ要素有りの明るめ短編を目指してみようかと思います。。。
(すみません、長編もちゃんと覚えてます←💦💦)
気が向いたらまたお付き合い頂けますと泣いて喜びます🙇♀️💦💦
この度はありがとうございました🙏
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる