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前編

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 暗い地下の階段を上り、王宮の裏口から、市民の広場迄、檻の付いた馬車で護送される一人の囚人がいた。

 民衆にその憐れな姿を晒されながら、その囚人の向かう先は、広場の断頭台だった。

 目的地に着くと、執行人の合図で、囚人を檻から出すと、優雅な仕草で薄汚れたワンピースで、ゆっくりと階段を上る。

 最上段まで上りきった時、ふと後ろを振り向いた。

 そして、淑女の礼をすると、二人の執行人が囚人の両肩を掴み、頭を断頭台に押し込んだ。

 囚人は、微笑みながら

 『呪われろ』

 そう呟いた。合図で頭上の刃が落ちてきた瞬間、空から稲光が落ち、断頭台は真っ二つになった。

 だが、囚人は、傷一つ無い状態で、まるで眠っているようだった。

 囚人の亡骸は、【白い神殿】に安置された。

 神殿には、若い神官が一人いるだけだった。

 神官は、囚人の遺体を祈りの間の台に寝かせ、生きている時と同じ様に世話をした。

 囚人の名は、

《サスキア・カーネル》

 この国の側妃であり、この【白い神殿】に仕えていた神子だった。

 彼女が断罪された理由は、「王族殺し」

 生まれるはずの皇帝の子供を殺した罪を擦り付けられたのだ。

 彼女の生家は、カーネル伯爵家で、領地等はなく、名前のみの貴族だった。

 何故なら彼女の生家は代々、安寧や平穏をもたらす神が祀られいる【白い神殿】に仕えていたからだ。

 この国に安寧と平穏が常に訪れるよう神子として、祈り続ける事を定められた一族だった。

 彼女もその一人だった。

 ある日、この帝国の皇帝が神殿を訪れた。そして、祈りを捧げている彼女を見初めて、連れ帰った。

 多くの人が反対する中、皇帝は、押しきった。

 若い頃から早くに皇帝の座についた彼は、暴君だった。

 
 



  

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