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前編

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 んー! 疲れたぁ……、早くシャワー浴びたいなぁ。
 蝉の歌声がうるさくなってきた初夏、伸びをしたせいで肩からずり下がったオフィス鞄を直す。
 私達が住んでいる家はもう目視出来ていて、彼が使っている部屋からはカーテン越しに光が漏れている。倒れてなければ良いけど。
 玄関に到着して、鞄から鍵を取り出す。それを鍵穴に刺して捻った。カチャリと音が鳴りながら鍵は開く。

「ただいまー」
「…………」

 私の言葉には誰も反応しない。まあ、返事が来る予想はしていなかったけど。
 パンプスを脱いで、スリッパに履き代えて廊下を歩く。まずは洗面所だ。洗面所の近くにオフィス鞄とスーパーで買った惣菜のエコ袋を置いて洗面所の中に入る。鏡を見ると、汗でメイクが流れかかっているのに気がついた。仕事中じゃ無くて良かった。ほっとする。
 メイクを落すために、慣れた手つきでメイク落とし剤を顔に馴染ませていった。数分経ったら蛇口を捻って温水をだし、その水でメイクを落していく。額やもみあげ、顎下といったメイクが落ちにくい部分にも指を伸ばして、しっかりと落していく。
 25歳の直前ということもあって、なんとなくアンチエイジングにも気を配るようになってきた。なんとなく朝が辛くなってきたような気もするし、脂っこいものも避けるようになっている。
 ん、上出来かな。
 鏡で自分の顔をチェックしてそう判断した。洗面所を出てオフィス鞄とエコ袋を追ってリビングに向かう。すると、彼の声が聞こえてくるようになった。

「お疲れ様です。っとですね、ここのコードがエラー吐いてる原因っぽいのでちょっと確認して頂きたいです。
 ……大丈夫、佐久間さんなら余裕ですよ。はい、はい。翌週で大丈夫なので引き続き宜しくお願いしますー。お疲れ様でした」

 どうやら仕事相手と会話していたみたいだ。一瞬佐久間って誰? そんな嫉妬心が芽生えてしまったけどなんとか抑える。大丈夫、大丈夫。優希は隠れて浮気するような人じゃ無い。

「あれ、葵さん。帰ってたんですね!」
「あ、うん。ただいまー」

 どうやら優希も私のことに気がついたようだ。部屋越しに彼の声が聞こえてくる。数秒経たずに優希はリビングの私に駆け寄って来る。顔を近付けてきたので、私も目を瞑って彼を待つ。
 チュッ。
 言葉にするならきっとそんな表現で。私達は軽くキスをした。そして、彼に抱きしめられる。彼の体温が伝わってきた。

「お帰りなさい、葵さん。スーハー」
「ちょっと? 私お風呂入れてないんだけど」
「っとごめんなさい! 俺葵さんの匂いが好きなんで!」
「むぅ……」

 仕事してきたから絶対に匂う。というか自分でも何となく分かる。……恥ずかしいけど、そう言われるのはまあ嬉しいかな。それに、表裏関係なく直接感情を伝えてくれるので、疑うことが無くて楽だ。

「どうします? 風呂入りたいですよね?」
「そうだね、汗流したいかな。……今日は大丈夫な日だよ」
「え!? イヤッホーイ!」

 テンション爆上がりな優希はそのままお風呂を洗いに行った。昔から知ってるけど、こんな所はまだまだ子供だ。そのギャップが可愛い。……可愛いと言うと、優希は若干拗ねるけど。

「あ゛ー!」

 扇風機の前で、扇風機に向かって声を出す。普段の声とは違う自分の声が聞こえてきて面白い。仕事のストレスやら"結婚"の二文字が頭を過ぎっていて、それを払拭するために私のささやかな反抗を行なう。なんとなく溜飲が下がった。
 夏の火照った身体を冷やすためにそうしていたら、優希が戻ってくる。

「風呂洗い終わりました!」
「うむ、ご苦労ご苦労」
「なんだか久々ですね」
「ごめんね、あの日だったからさ」
「責めてるんじゃ無くて! えっとその……!」
「分かってる、行くよ」

 朝干していた下着や部屋着を手に取って、2人で脱衣所に向かって歩いていく。優希は目に見えてやる気満々で、私も優希に求められて嬉しい。ちょっと困ることもあるんだけど。


 脱衣所に着いた。
 優希はちゃっちゃと自分の服を脱ぐ。細いながらもしっかりと筋肉がある身体が見えた。思わずその筋肉に触れたくなる。

「相変らず筋トレ続いてんだね」
「え、そうですね。パソコン触ってると動くことないので。自発的にでも身体動かさないとって」
「私も頑張らないとなー」
「うーん、ほどほどが良いです!」
「優希のエッチ……」

 全くもう、私だって簡単なストレッチとかしてるんだよ? なのにあまり効果は出てないように感じられて。もう少し時間を増やしたいところだけど、なかなか時間は取れなくて。ジムとかにも通ってみたいけどなぁ。

「ん、んん!」
「もう……、はい」
「やりぃ! へへ、じゃあ!」

 咳払いをして優希は私を脱がそうとする。呆れながら私は了承する。すると、優希は手をワキワキさせて、私のブラウスのボタンを外していく。上から順々にボタンが外されていって、キャミソールが見えてくる。
 一心不乱な優希の興奮度合いはおちんちんに現われていて、おへそに当たるんじゃ無いかってくらい直立している。
 ゴクッ。
 思わず生唾を飲む。女性である私には付いていない部位で、男女の営みのために必要なもの。男性の象徴とも言えるおちんちんはとても雄々しく、勇ましい。早くそれを挿れて欲しい。一日の終わりということもあって、若干オスのにおいもして。私も次第に興奮してくる。

「はい、両手挙げて下さーい!」
「はーい」

 優希に言われたまま、私は両腕を伸ばす。彼は器用にブラウスを脱がした。あっという間だった。そして、優希は顔を私の脇に近付けて犬みたいに匂いを嗅ぐ。

「ちょっと!」
「すいません、マジすいません」

 謝罪の言葉とは裏腹に、優希の行動は続く。……彼のちょっと困った性癖だ。イヤじゃ無い、イヤじゃないんだけど、好きな男に身体を見せるんだからその準備位はさせて欲しい。
 私は脇を隠すように手を縮める。優希は名残惜しそうにした。その顔はお預けを食らった動物みたいで思わずクスッと笑ってしまう。
 じゃれている間にキャミソールを脱がされた。ブラジャー姿になる。
 次第に鼻息を荒くしている優希は真正面から私の背中に手を伸ばして、ブラジャーのホックに手を掛けた。なんともスムーズにホックが外されて、ブラジャーの紐が私の肩から滑り落ちる。抑えなかったブラジャーはそのまま地面に落ちていった。前身がむき出しになる。

「葵さん、綺麗です」
「……うるさい、バカ」

 恥ずかしいからそんなにジロジロ見ないでよぉ。
 優希の視線は私の裸体をくまなく観察して、ついには一点で止まる。そう、私の乳首だ。見られていることに気づいた私は身じろぎする。それでも尚彼の視線は注がれている。

「もう終わり!」
「えー……」

 耐えきれなくなった私は雑にスカートとストッキング、下着を脱いで、洗濯籠に放り投げた。そして、お風呂がある浴室にはいる。優希も慌てて着いてきた。


 シャワーから丁度良いお湯を出して被っていく。汗が流れて気持ちが良い。

「じゃあ、優希からねー」
「はーい!」

 私はシャンプーを数滴手に取って、泡立たせる。十分あわだったので、少ししゃがんでくれている優希の髪の毛を優しく揉んでいく。彼は気持ちよさそうな声を出す。

「痛くない? 痒くない? なんかあったら言ってね」
「いや、マジ最高です……」
「そう? なら良かった」

 ハミングをしながら彼の髪の毛を洗っていく。私の手が進む度に優希の頭は白い山を作っていく。男性にしてはちょっと長い髪の毛を泡立たせて、耳の裏とかも丁寧に洗っていく。最終的に真っ白な山が出来た。

「流すから目を瞑っててねー」
「あーい」

 シャワーヘッドを持ってお湯を出す。……こんな感じかな。
 優しく優希の頭にかけていって、その雪山を無くしていく。今度は真っ黒な山が見えてきた。その黒い山に雪が残っていないか確認するけど大丈夫そうだ。

「終わったよ」
「ありがとです!」

 次は私だ。とは言っても私は自分で洗う。前にやって貰ったら雑に洗われたので触れさせていない。
 優希にやったみたいに髪の毛を洗った。その間に優希は自分の身体を洗っている。

「うへへ、じゃあ俺の番です!」
「痛くしないでよー?」
「うっす!」

 優希は私用のボディタオルにボディーソープを垂らして泡立たせていく。グニュグニュすると泡が溢れた。

「じゃあ!」
「うんー」

 私は両腕を前に伸ばす。優希はまず私の左肩にボディタオルを乗せて、脇を含めて満遍なく洗いながら指先の方に沿わしていく。その優しい触れ方に思わず快感が生まれてしまって、艶がかった声を出してしまいそうになる。
 落ち着け、私。まだ始まったばっかだよ?
 必死にそう言い聞かせて、なんとか堪えていく。後の方になるとそんな余裕も無くなるんだけどね。私は優希に喘がされてしまうだろう、その未来が既に見えている。
 右腕も同じように洗って貰った。次は脚らしい。優希はしゃがむ。丁度私のおへそ当たりに顔がきて、上目遣いでわたしを見つめてくる。くりくりした目で見られてしまって、子宮がキュンとなった。……全く、この男は!

「洗いますねー」
「っん、お願い」

 優希は私の左太ももにタオルを近付けて、優しくタオルを滑らせる。大事な部分が近いこともあって快感が腕よりも強い。私は悩ましい吐息を漏らしてしまうようになる。
 大事なところに当たらないように内股にもタオルが来て、思わず浴槽の縁に手を掛ける。そんな私を優希は意地悪そうに茶化してきた。

「葵さん、どうしたんですか? なんか辛そうですね?」
「っふぅー。気にしないで?」

 声が震えないように頑張りながら、先を促す。彼は私のふくらはぎとすねを洗う。

「ちょっと脚上げて貰って良いですか?」
「……ぅん」

 言われたとおり、私は脚を上げる。すると、優希は泡だった自分の手で私の足裏や足指を洗ってくる。

「んんん!?」

 くすぐったさと恥ずかしさと快感と。色んなものが入り交じって私はよがってしまった。慌てて自分の口を塞ぐ。視線を下げて優希を見ると優しく。でも、意地悪そうに私を見ていた。次第に"男"の本能を醸し出している。

「ありがとうございます、次は右脚ですね」
「ふぅ、ふぅ……。お願い」

 左脚と同じように、優希は私の右脚を洗っていく。さっきと違うのは、彼はタオルを使わずに自分の手で私の足を洗い始めたことだ。

「スベスベですねー、痛くないですか?」
「っ! っ!? だ、大丈夫だよ……?」

 彼の優しい手が私の右脚を伝っていって、快感が全身へと広がっていく。私はこの快楽から耐えるために優希の肩に手を乗せてバランスを保つ。
 それを待っていたかのように、優希の手はさっきよりも動きが増した。優しいんだけど、自分の欲求を満たそうとする手つきで私の膝裏や指と指の間にまで手をかけて私を虐めてくる。私の身体は徐々にできはじめている。

「じゃあ、次は背中ですねー」
「っふう、っふう、っふう、っふう……」

 私は言われるがまま、優希に背中を向ける。私の目の間には大きな鏡があって、鏡の中の自分と目が合う。
 お風呂の熱気か、優希の愛撫か。よく分からないけど、鏡の中の私は既に"女"の顔をしている。瞳は潤んでいて、太ももを擦り合わせてて。客観的に見てもメスの表情だ、いやらしい。

「はい、じゃあ」
「ひゃう!?」

 優希の手が私の背中に伝ってきた、今までに無い感覚のせいで思わず跳ねてしまう。彼は自分の手のひらでマッサージするように私の背中を満遍なく洗う。お尻のちょっと上から肩甲骨、肩といったあらゆる場所に手をかける。
 私を労る優希の手で虐められながらも、私は鏡に手を伸ばして必死に耐える。鏡の中の私はひどく扇情的だ。

「このまま前側も洗いますねー」
「ふぇっ!? ……ぁっ!?」

 優希の手は私のお腹へと移動してこようと脇腹を触ってくる。その快楽に耐えきれず私は逃げようとするけど、優希の手からは逃げられない。為す術無く蹂躙される。
 また、さっきよりも密着したからなのか、優希の硬くなったおちんちんが私のお尻をグイグイ押してくる。いや、なすりつけているのかもしれない。そんな判断も出来ないほど、私は快楽に身を投げている。
 優希の手が私のお腹をまさぐった後、徐々に上に来ている。遂にはアンダーバストへと迫った。わたしのDカップの胸の曲面をなぞるようにして手を動かしている。
 っあ、乳首……!
 けれど、私の予想に反して優希の手は私の乳首に触れなかった。乳首に触れないように指を広げて私の胸を揉んでいく。
 もにゅん、もにゅん。そんな風に優希は私の胸を優しく揉んでいって、感触を確かめられている。

「っはぁ……、っはぁ……、っく」

 優希の手によって与えられる快楽から必死に耐える。時折喘いでしまうけど、今の所は大丈夫。そう思っていたけれど、彼の左手が徐々に下に移動していく。

「下も洗いますねー!」
「えっ!? ひゃぁ!」

 優希の手は私の陰毛をかき分けて大事なところへ到達した。割れ物を扱うかのような手つきで私の大事なところを触っていく。

「っん、……ぁっ! ……ぁっ!」

 前にこうして欲しいって言ったことを実践されている。膣穴をゆっくり広げてなぞられて洗われる。数mm動かすだけの指使いで私の大事なところを洗っていく。徐々に快感が蓄積されていって、達してしまいそうになる。
 けれど、優希は私の身体から手を離した。

「ふぇっ……? どーしてぇ?」
「今お風呂に入るんですよね? 葵さん?」
「むぅぅぅぅ!」

 確かにそうだけどさぁ! ここまできたらイかしてくれても良いじゃない!
 もう少しでイけそうなところを邪魔されて若干不機嫌になった私の耳に優希は顔を近付けて囁いてくる。

「ベッドでいっぱいシてあげますね?」
「……ぁっ」
「お湯かけますねー」

 私の肩くらいにシャワーヘッドが近づき、お湯が泡を流していく。仕事のストレスや疲れが流れていく気がした。
 そして、私達はお湯が張ってある浴槽に入る。優希の身体に寄りかかるように座った。

「重かったら言ってよ?」
「大丈夫ですよ、葵さん軽いですし」
「そう、じゃあ遠慮無く!」
「ぐえっ、それは違うんじゃないですかー!?」

 体重をかけると、優希は潰れたカエルみたいな声を出す。それでもなお、優しく抱きしめられる。
 彼の手は私のお腹らへんで止まり、いやらしさを含まない手つきで触れられる。

「葵さん」
「んー?」
「好きです」
「……うん、私も」

 そのまま幸せに包まれた時間を過ごした。
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