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 春から国立大学生になって数ヶ月が経った。どことなく講義やサークルにも慣れてきて新生活を楽しむ余裕が出来ている。高校までとは違って俺の世界はぐっと広がった。後は彼女が出来ればもっと充実するんだけどなぁ。
 午前中の講義が終わり、つるむようになった連中と一緒にキャンパスの食堂で飯を食い終わる。母さんと父さんからの仕送りとバイト代で美味い飯を食えてるけど、そろそろ自炊も考えても良いかもしれない。
 食休みがてらダラダラ過ごしていると、雅人が俺達を煽ってきた。

「なぁ、お前らって童貞なの?w」
「「「……あ゛?」」」

 何だ、コイツ? 喧嘩か? 喧嘩売ってんだな?
 雅人から喧嘩を売られたことだけは分かる。宗佑、剛史と湊人も俺と同じように切れた。

「雅人だって童貞だろ? 何言ってんだよ」
「俺? どうだろーなぁ」

 雅人は俺達を余裕綽々の表情で見下してくる。どういうことって、まさか……!?

「もしかして卒業したのか……?」、「は? それマジ?」
「イエェェェェッス!! 人生変わったわ、マジ最高っ!」

 剛史が俺と同じように正解に辿り着いて思わず雅人に聞いた。雅人は傲岸不遜といった態度で格差を見せつけてくる。童貞と非童貞、越えられない壁が俺達を分ける。神となった雅人は地べたを這いずる俺達を見てあざ笑う。
 うっぜぇ……。まあ、雅人がそういう態度ならこっちだって。

「夏休みさ、"4人"で海とか行かないか?」
「さんせー!」、「いやー、楽しみだな!」、「どこ行く? 沖縄とか?」
「えっ? おいっ!?」

 雅人を省いて4人で夏休みの計画を立て始める。童貞だからじゃ無くて、いつもつるんで楽しいやつらだからだ。海とかー、バーベキューとかー、お祭りとかー。夏休みはこれから始まる。
 省かれた雅人は自分の選択が間違えたことにやっと気がついたようだ。俺達の会話に入ることが出来ず、オロオロと視線を行ったり来たりして俺達を見てくる。

「じゃあ車の免許合宿に行って楽しむとすっか!」
「「「オッケー!!」」」

 時間を確認すると、午後の講義の準備を受けに移動してもいい時間だ。俺達は自分が使っているバッグを持って準備をする。そこで、雅人が割り込んできた。

「ちょっと! 俺を無視しないでくれよ~」
「……なんだよ、お前は女と遊べばいいだろ? 童貞じゃないんだし」、「そうそう!」
「悪かったって、ほら紹介するからさ」
「「「……しょ、紹介…………?」」」

 ゴクッ。
 思わず喉を鳴らす。俺も女の子とあんなことやこんなことが……!?
 俺達は手のひらを返して雅人を受け入れる。剛史は雅人と肩を組んだ。

「いやー、持つべき友は女の子を紹介出来る男友達だよなー! ……で、どんな娘? 可愛い?」
「……ったく、お前らときたら」

 気分はさながら悪の取引を行なう人間だ。俺達は悪い顔をしながらヒソヒソと声を細める。
 雅人はリュックからスマホを取り出して操作する。さてさて、可愛いくてスタイルが良い娘が良いなぁ。
 ところが、雅人が見せてきたのは女の子の写真じゃ無かった。なんかのホームページだ。

「何、これ……」
「ん? ホームページだけど?」
「…………かいさーん!!」、「なんだよ、期待して損した」、「信じらんねえ」

 肩透かしを食らった俺達は、今度こそ講義室へ向かう準備をしようと雅人から離れようとする。でも、雅人は俺達を引留めた。

「待て待て! これはアプリだ! 出会い系の!」
「ふーんそっかぁ。うん、解散。じゃあな」
「話聞けって! 年上の女の人と出会えるやつだよ!」
「……ママ活とかってこと?」
「そうそう! そんな感じ!」

 ママ活ねぇ……パパ活とかなら聞いたことあるけど。そんな需要あるもんか?
 美人局とかにしか思えず、話半分で聞く。

「あった瞬間に恐い人とかに恐喝とかされそうじゃ無い? 恐いのパス」
「そんなこと無いから! ったくしょうがねえ奴らだなぁ」

 雅人は再びスマホを操作し始める。俺達はジトッとそんな雅人を見つめるが、次の瞬間には目を見開いた。

「ほら、これでどうだ?」
「「「っ!?」」」

 雅人が見せてきたスマホの画面には、汗だくの雅人ととんでもなく美人でスタイルが良い女の人が裸でハグをしていた。精液が溜まったゴムも散らかっていて行為終了後に見える。思わず下半身に血流が溜まってチンコが硬くなった。

「えっ!? おま、これ!!」
「言っただろ? 大丈夫だって」
「おいおい……マジかよ」

 硬くなったチンコの位置を直そうとゴソゴソすると、雅人以外の3人も俺と同様にチンコの位置を直していた。グラビア雑誌とかAVとかよりもエロくてやばい。今すぐにでもトイレに駆け込んで抜きたくなった。

「名前【Love&Peace】な? 結果は保証するから使ってみ、SEX出来るぜ?」
「「「お、おう……」」」
「じゃあ移動すっか」

 俺達は前屈みになりながら次の講義へと向かった。



 午後の講義とバイトが終わって家に帰ってきた。夏が始まったこともあって汗だくだ。玄関からTシャツやらジーパンやらを脱いで脱衣所に向かう。実家にいたときには母さん達の目もあってこんなこと出来なかったけど、一人暮らしってサイコーっ!
 脱衣所についた時には既に全裸になっていてチンコがプラプラ揺れている。昼からずっと反立ちの状態が続いていて、雅人のスマホの写真で見た目茶苦茶どエロい女の裸が頭から離れない。
 はー、あんな美人とSEX出来たらなぁ……、あ。
 ムクムクムク。
 俺のチンコは最大まで勃起しちまった。14cm強ある俺のマグナムが女を求める。

「お前もそろそろ女を知っても良いよなぁ」

 痛いくらい勃起したチンコに手を伸ばして軽く扱き出す。いつもは皮を被っているけれど、勃起したときにはサーモンピンク色の亀頭がにょきっと見える。穴の部分から少し先走り汁が漏れ出していた。
 風呂入るし、1回抜いとこーっと。
 そう思いながら、俺はシャワー室へと入っていった。


 無事にシャワーも浴びて、帰りにスーパーで買った【半額!】のシールが貼ってある唐揚げ弁当を食べてゴロゴロ時間を過ごす。風呂に入った充足感と1回抜いたことの疲労感が心地よい。でも10代真っ盛りの体力はまだまだ有り余っていて、寝付くにはまだまだ時間がかかりそうだ。

「あ、調べてみるか。【Love&Peace】……だったっけ」

 ベッドに横になりながらスマホを操作する。検索サイトで【Love&Peace】と入力するとすぐに結果がでてきた。雅人の言うとおり童貞向けのマッチングアプリみたいで筆下ろしをされるみたいだ。アプリをダウンロード出来るサイトへの遷移リンク先も載ってる。評判も4.2あって高評価らしい。

「値段はっと……、はっ!? 1ヶ月1万!? ぼりすぎだろ!」

 雅人の奴、嘘つきやがったな? ただのぼったくりサイトじゃねえか。電話して抗議してやる。
 そう思って、俺は雅人の連絡先を見つけて電話を掛ける。数秒経たずにやつはでた。

「おい、雅人! おまえ嘘……え?」
『雅人君、いっぱいだして良いわよ?』、『令美さん、俺……! あ゛あ゛!!』

 電話が繋がったと思ったら、雅人のイった声と知らない女性の声が聞こえてくる。全く状況が掴めない。
 友人の情事中で、声をかけようか電話を切るべきかわからないまま固まっていると雅人は虚無時間から復活したようだ。俺に話し掛けてくる。

『一樹か……、どうした?』
「雅人……、取り込み中なら後にするけど」
『気にすんなって、【Love&Peace】のことか?』
「そうだけど……」

 なんというか、幼い頃に父さんの部屋からアダルティなDVDのパッケージを見つけた時みたいに罪悪感でいっぱいになる。電話を切るべきだと俺の良心は囁いていた。しかし、"令美さん"という人物が俺に話し掛けてくる。

『初めまして、雅人君のお友達よね?』
「っ!? はい、そうです!」
『学生には1万円って高額だけど、その分の価値以上はあると思うわよ』
「……何で言い切れるんですか?」
『それだけ女にも需要があるってこと。レスだったり夫の単身赴任だったり……後は若い男の子のエキスを求めたりとか』
「美人局とかの可能性は?」
『無いわ』
「そう、ですか…………」

 思わずスマホを見つめながら唸る。信じる信じない。信じない信じる……。頭の中でぐるぐると思考が回っていく。
 そりゃあ、俺だって美人とSEX出来るならしたいけど、その結果が恐ーい人に目を付けられたりすんのはイヤだ。親にも学校にも迷惑掛ける可能性があるならお断りだ。むむっ、どうするべきか……。

『男は度胸だ、俺が金だしてやろうか?』
「いやいやいや! それは駄目だって!」
『変なところで真面目だよな、一樹って。……キャバクラとかソープとかよりも価値がある1万だと思うから試す価値はあると思う。まあ、あとは一樹の気持ち次第だな』
『付け加えると、今ってモテる男性に女の子が集中しちゃってモテない男性との恋愛格差が広がっているのを何とかしようって考えてる対策の一環なのよね、これ。
 童貞なら病気の可能性もぐっと低くなるし、初々しい男の子なら食べたいって女性は割といるし。少なくとも【Love&Peace】は男女ともに厳しい審査があるから無料のアプリとかよりは安心出来ると思うわよ?』
「……ありがとうございます」

 登録だけしてみて危なそうなら消せば大丈夫だよな? っ良し、やってみっか!

「雅人に令美さんもありがとうございます! 登録だけして平気そうなら続けてみたいと思います!」
『おう、頑張れよ?』
『駄目そうなら私が雅人君と一緒に相手するわよ?』
『令美さぁん、それはなしですよぉ』
『冗談よ、さ、続きしましょ? 私まだイけてないし』
『ぐへへ、いっただっきまーす!!』
『んっ、ちょっとがっつきすぎよ』

 ブツッ。
 俺は雅人との通話を切る。これ以上友人の痴態を想像したくない。それよりも今はこっちの方がやばい。
 俺は下半身を見ると、1回出したっていうのに股間がテントを張っていた。

「……トイレ行ってこよ」

 今はチンコの興奮を静めてこよう。あの画像の女の人が令美さんなら、声も目茶苦茶エロかった。


 あー、気持ちよかった。
 無事に抜いてきて、俺は再びベッドの上で仰向けになる。スマホを手に取ってもう一度【Love&Peace】のサイトを覗いてアプリのリンク先へと飛んだ。緊張しながらアプリがダウンロードされるのを待つ。入試の前みたいな独特な緊張感が俺を襲う。
 吸って吐いて、吸って吐いて。何度も深呼吸を繰り返してもソワソワしてしまう。気分転換にテレビを付けても内容が全く頭に入ってこない。
 そうこうしていると、ダウンロードが終わったみたいだ。緊張しながらホーム画面にある【Love&Peace】を押す。アプリが起動して【ログイン】と【新規登録】の画面へと切り替わった。

「ふぅー、始めよう」

 【新規登録】をタッチすると高校生までの18歳以下は使用禁止です、みたいな注意書きと利用規約がずらっと表示されてまあほどほどに確認する。【了解】のボタンを何度かタッチしていると変な画面が出てきた。

【これから、あなたが童貞であるかどうかのテストを始めます。正直に答えてください】
「っぷ、なんだこりゃ」

 思わず笑ってしまう。童貞かどうか何て自己診断だろ、他人に分かるわけ無いと思うんだが。まあ良いか。えーっとなになに?

【女性が男性器を迎え入れる準備が出来たとき、ある変化が下半身に現われます。それはどんな状態でしょうか?】
「…………"濡れる"で良いんだよな? クリトリスが勃起とか? いや、ホントにクリトリスって勃起すんのか?」

 ……あ、不味い。最初からわかんねえ。調べちゃ駄目なんて書いてないし、ちょっと調べてみるか。
 スマホの他にノートパソコンも立ち上げて検索サイトを引っ張り出す。【女 SEX 濡れる】と検索してみてその結果を見てみる。多分、設問への回答にはなってるはずだ。【濡れる】と打ち込んで次へと進む。次の設問が出てきた。

【あなたが女性の性器にクンニをしたとき、どんな味がしましたか?】
「…………? 味なんてあんの?」

 どういうことだ? 精液みたいに苦いとかしょっぱいとか?
 分からないからPCで調べる。【女性器 感じてるとき 味】で調べると検索結果が返ってきた。

「んー? 普段は酸っぱく感じて、感じてるときは苦く感じる? へー、そうなんだ。じゃあ……【酸っぱくて苦かった】とかって打ち込むとするか。…………いや待て! 童貞なら答えちゃいけない問題だ、これ」

 そういうことか。これ引っかけだ。調べた結果をただ入力すると経験が無いのに【正直に答えてください】に反するし、前にクンニをしたときの味を入力すると童貞じゃない可能性が高くなる。だからここは【経験が無いため分かりません】が答えだな。
 そして、この設問の意味が分かった気がする。SEXに興味があるとこういった性知識を吸収することになって童貞を卒業したいかの確認が取れるって寸法だ。卒業したければ自分から積極的に調べるし、別にそうじゃない奴ならここまで調べることは無く、本番の時に女の子を傷つける恐れがあるってことだと思う。
 なーるほど、やるな、このアプリの制作者。童貞かそうじゃないかって言う問題もあるけど、一番は【女の子を大切に出来るか】っていうのを確認したいんだな。

「ふふふ、ははははは!! 分かる、わかるぞぉ!! 俺にも貴様らの意図が分かる!!」
『うっせえぞ! 今何時だと思ってる!!』
「ぎゃおん」

 大きく高笑いをしたら、となりからドンっ!! と壁を叩かれた。時間を確認すると優に23時を超えていた。
 す、すみましぇ~ん。ペコペコ頭を下げつつ隣に住んでいる人に謝る。聞こえてるかは分からないけど。
 コホン、さあ気を取り直して。

「ふう、続けよう。次は?」
【女性を愛撫するとき、触るか触らないかくらいの手つきが良いとされています。その名前は?】
「これは知ってる! 【フェザータッチ】だろ!」

 自分でも試したことがある。産毛に触れるか触れないか、そんな感じで遊んでみたら気持ちよくなった。乳首周辺で試してみたら乳首とチンコが立ってしまって結局鎮めることになったことがある。【フェザータッチ】と入力して次へと進んだ。


 12問ほど回答するとやっと終わった。【合格】と書かれたページへと遷移する。
 安心して長い息を吐く。深夜テンションにもなってるかもしれない。

「あー終わった終わった。明日2限からで良かったわ。遅くても10時くらいに起きれば間に合うし」

 明日というか今日起きるのはいつもより遅くて大丈夫だ。無料会員になれたことだしこのままプロフィールを作っちゃおう。身長、体重、学歴、チンコの大きさ、逢うならどこがいいか、どんな女性がタイプか……。そんな項目を埋めていく。画像は新歓コンパの時のものを使った。後は学生証。
 しっかりと項目を埋めると、【最高のSEXライフを!】と送られて色々な女の人が載ってるページへと飛んだ。写真で盛ってるかもしれないけどめちゃくちゃ美人さんばっかだ。写真用のSNSみたいにおかずに出来そうなくらいで期待で胸がいっぱいだ。

「うっひょー!! 俺もこんな人達とヤレるんだな!! さいっこう!!」
『だからうっせえぞ!』、『新入り! うるさいぞ!』

 今度は別のお隣さんにも怒られた…………。
 ふて腐れた俺は瞼を閉じる。射精後の疲れもあって、すんなり意識が無くなった。
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