見知らぬ隣人さん

岩石の扉

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容疑者の家族2

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ふと、廊下の右側に目をやると若い夫婦を視界の端に捉えた。

二十代後半から三十代前半位の夫婦。
遠くて顔ははっきり見えないが、凛とした立ち姿で自信に満ちたような横顔の雰囲気に既視感を覚えた。。
あんなに若い夫婦なんて知り合いにはいない。
近所付き合いもほとんどない。
徐々に近付いてきた若い夫婦の顔がはっきりと見えた時に確信に変わった。

そして罪悪感が込み上げ冷や汗が止まらず目眩までする。


·····珠子。

心の中で呟いた声は珠子には当然届かない。
随分と大きくなった。
だが珠子は父親の名前すら知らない。



まだ自分が大学生を卒業する年の夏頃だった。
今の妻と結婚するどころかまだ知り合う前で、就職も決まり色んな人と交流することに時間を費やしていた。
あれは正しく青春と呼ぶに相応しい時間だった。
毎晩誰かと酒を酌み交わし、まだ見ぬ社会への批判を語り合い、時に行きずりの女を抱いた。
喧嘩になり、怪我もしたが今となっては輝いていた気がする。
ただただ調子に乗っていたのだ。

酒に酔った勢いで名前も知らない女と一夜を共にしたこともあった。

ポケベルの番号は交換していたが、その日のうちにものに出来た相手のことなど特に覚えてはいなかった。
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