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トラウマ
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恐怖に怯え泣きそうになりながら羽衣音は途切れ途切れ話し始めた。
焼きそばの列に並んで居た時に、前の人の足を蹴ってしまったらしく、その事に腹を立てたのか睨み付けてきたおばさんが怖くて、一言謝って一度列から離脱して並び直したこと。
並び直した後、無事焼きそばを買ったが、その後おばさんがさらに文句を付けてきて親を呼べと行ってきたこと。
親がいないというと嘘をつくなと怒鳴られ突き飛ばされたこと。
焼きそばを持ったまま尻もちをついてしまいこぼれた焼きそばで服を汚してしまったこと。
そのままおばさんが逃げるようにかどこかに言ってしまったこと。
話の途中から二人の箸は止まりただ呆然と聞いていた。
珠子は物心着く前から施設暮らしなので大人から暴力など振るわれたことがない。
雛乃は、施設に来るまでに躾程度に両親から手足を叩かれたことはあるが暴力と呼べるようなものでは無い。
羽衣音は、悔しいと言った。
「施設に預けられる前は、まだ小さかったから我慢するしか無かったけど、今はおっきくなってきたのになんにもできひんかった。変われてへん自分が悔しい。」
皆それぞれ事情があるのが分かっているので施設に来た理由などはあまり話さなかった。
羽衣音が来た理由は大人からの暴力なのだろう。珍しくはない。でもそんなことをされるのが普通だとは思えない。
珠子は羽衣音を抱きしめた。覆いかぶさるように雛乃も羽衣音を抱きしめた。
「羽衣音、その人探そ」
「嫌や、怖い」
「でも」
「珠ちゃん。ムカつくけど今日は帰ろ。多分はーちゃんその人に会いたくないやろ、服汚れたままいややしな」
焼きそばの列に並んで居た時に、前の人の足を蹴ってしまったらしく、その事に腹を立てたのか睨み付けてきたおばさんが怖くて、一言謝って一度列から離脱して並び直したこと。
並び直した後、無事焼きそばを買ったが、その後おばさんがさらに文句を付けてきて親を呼べと行ってきたこと。
親がいないというと嘘をつくなと怒鳴られ突き飛ばされたこと。
焼きそばを持ったまま尻もちをついてしまいこぼれた焼きそばで服を汚してしまったこと。
そのままおばさんが逃げるようにかどこかに言ってしまったこと。
話の途中から二人の箸は止まりただ呆然と聞いていた。
珠子は物心着く前から施設暮らしなので大人から暴力など振るわれたことがない。
雛乃は、施設に来るまでに躾程度に両親から手足を叩かれたことはあるが暴力と呼べるようなものでは無い。
羽衣音は、悔しいと言った。
「施設に預けられる前は、まだ小さかったから我慢するしか無かったけど、今はおっきくなってきたのになんにもできひんかった。変われてへん自分が悔しい。」
皆それぞれ事情があるのが分かっているので施設に来た理由などはあまり話さなかった。
羽衣音が来た理由は大人からの暴力なのだろう。珍しくはない。でもそんなことをされるのが普通だとは思えない。
珠子は羽衣音を抱きしめた。覆いかぶさるように雛乃も羽衣音を抱きしめた。
「羽衣音、その人探そ」
「嫌や、怖い」
「でも」
「珠ちゃん。ムカつくけど今日は帰ろ。多分はーちゃんその人に会いたくないやろ、服汚れたままいややしな」
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