見知らぬ隣人さん

岩石の扉

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三橋羽衣音3

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その頃から新しいおとうさんは羽衣音にきつく当たるようになりある日、とうとう初めての暴力を振るわれた。

平手で右頬を打たれた。いつもそれなりに心も身体も距離をとっていたのに、大人の一方的な力の前では子供は無力だった。
謝られたかどうかは思い出せない。恐怖に支配された幼い羽衣音の心がその恐怖を記憶させようとしなかった。

次の日から張り詰めていた糸が切れたように毎日小言を言われた。時には殴られもした。

少しして今度は母親に暴力を振るっている事を知った。
誰も守ってくれない。怯えた日々を過ごしていると突然訪ねてきた警察に連れていかれた。

母親は少し前から徐々に元気を無くして行き心の病を患った。

そして、元々親の反対を押し切る形で結婚したのに離婚したことで母親は自分の両親とさらに疎遠になっていたのに今度は逮捕されたことで勘当され羽衣音のことを忘れてひとりぼっちの殻に閉じこもるようになってしまった。

唯一の救いは、新しいおとうさんは、まだおとうさんではなかったことだ。
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