見知らぬ隣人さん

岩石の扉

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交通事故

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家の前を掃除して、鉢植えに水をやり、脱水の終わった洗濯物を二層式の洗濯機から取り出した。

それを激安スーパーから持って帰ってきた黄色いカゴに入れて、家の中に入り玄関から階段を上がって狭いベランダに干していく。

洗濯物を干し終えると、一階から叫び声が聴こえる。

「どうしたんですか、おかあさん」

「ご飯まだー?ねーご飯!」

「おかあさん、ご飯はさっき食べましたよ。」

朝早くから自分の家のことをやり、自転車を15分ほど漕いで、デイサービスの迎えが来るまで認知症の義母の家の世話をする。

三年ほど前から徐々におかしな発言をしたり、物忘れが酷くなり、今では人格が時々変わる。

まだ完全にぼけているわけではないのでデイサービスでリハビリを行い進行を少しでも遅らせようと言い出したのは、義母の息子である亭主であった。

言い出したものの手伝ってくれる訳でも様子を見に来ることもなく、夜家に帰ってからこちらから話しかけても面倒くさそうに相槌を打たれ、ちゃんときいてるん?と問うと、疲れてるんだと言い出す。

疲れてるのはこちらの方だ。
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