見知らぬ隣人さん

岩石の扉

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喪失4

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身体がゆうことを聞かない。
真っ直ぐ歩こうとしているのに足を動かすとコケてしまう。
住宅街なこともあり、周りに人はほとんどいない。フラフラと2、3歩歩いてはコケる人間に関わりたくないのだろう、誰も声をかけてこない。
声をかけられてもまともに話せないのだから、放って置いてくれた方が助かる。
とりあえず家に帰ろう。
多分10分も掛からないだろう。

普段なら。

まるで何かにまとわりつかれているような、首より下が水に浸かっているような歩きにくさなのに、そこには水なんてなくてコケてしまう。

こんな醜態晒したことなど人生で一度もない。

もしかしたらこのまま死んでしまうかもしれない。
家に辿り着くことができず、野たれ死ぬなんて今まで考えたことも無かった。
車が無くなったことも酒を飲みすぎたことも普段とは違う。
普段と違うことをしたせいで人生の歯車が狂い、予定より早く終わることになったのだろうか。

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