上 下
6 / 40

探索者

しおりを挟む

 いつの間にやら早熟のレベルが6になっていた。早熟は自身のスキルレベル+1までのスキルの必要熟練度半減という強力なスキルだが、それ以上のスキルレベルでの必要熟練度が倍になるという効果を持つ事でレベルが上がれば上がるほどキツさが増すというスキルのはずなのだが早熟の効果が早熟自体に乗っている事で現在僕が持つスキル群の中で最もスキルレベルの高い物となっている。

 レベル70までの経験値とスキルレベル7までの熟練度の半減というのは破格も破格だ。
 6階層まで上がって来れば追っ手が来ることはまずないだろう。仮に僕の情報の全てがばれていたとしても僕を追う事よりもダンジョンというシステムの解明の方が優先されるだろう。
 だから逃げる必要はない。転移権限というユニークスキルがあれば正面から出ることも叶うだろう。

 それに外の情報は僕のスマホが受信してくれる。ダンジョン内は基本的にネットに繋がらないが窓付近では電波が立つ。今のところ外の状態はこんな感じだ。

 2019年6月22日、東京のダンジョン出現。

 23日、ダンジョン探索隊が組織され探索開始。

 24日、ダンジョン内では異形の怪物が存在している事とその怪物を殺す事で不可思議なアイテムが手に入る事。そしてこれは日本政府の発表ではなく外国の情報だが、レベルやスキルという概念が存在している事が確認された。

 25日、外国の情報が一気に流れてくる。虚偽の情報ももちろん存在したが、冒険者制度を作った国や魔法使いと呼ばれるダンジョン探索者の話が大きく取り上げられていた。

 26日、現在地球上で確認されたダンジョンの数は約300個だと予想される。基本的にダンジョン間の距離が一定になっている事と基本的に国家一つに対して一つの割合で設けられているという事が判明した。

 27日、日本の探索者チームが天の塔一階層を完全網羅したと発表。日本政府から正式にダンジョン内ではレベルやスキル、魔法といった技術が存在していたとのこと。

 28日、アメリカで大規模なダンジョン探索が行われた。銃火器を筆頭に様々な現代兵器を装備した合計30人の部隊だったが攻略は9階層までしか行えなかった。参加した部隊の一人、唯一生き残った一人は後にこう語った。10階層は死神の領域だ、と。

 29日、アメリカを筆頭に幾つかの大国が冒険者制度を正式に採用した。日本はまだだが国民の声とアメリカの声双方を加味して採用されるのは時間の問題だろう。大国が冒険者制度を正式採用した理由は書かれてはいないがネット掲示板などではダンジョンで手に入る物の価値が人間の命よりも重いと考えたのではないかという意見まであった。おおむね僕もその意見に賛成である。

 そして今日、三十日。流石にこれ以上潜っている訳にもいかなくなりそうだ。
 転移で2階層まで戻り、そこから1階層の入り口付近まで慎重に近づく。外から慌ただしい声が聞こえた。朝のニュースでいつも以上にダンジョン前へ車が多く来ていると言っていたので気になったのだが案の定と言うべきか、銃で武装した筋肉質の男たちが並んでいる。恐らくは9階層までの探索を行うのだろう。

 確かに銃があれば犬や兎、猪と熊は余裕だろう。ゴブリンも油断さえなければ負ける相手じゃない。
 恐らくは冒険者制度による被害を最小に抑えるために下層のマップや敵の情報を埋めておきたいのだろう。流石に10階層まで行かないと思うが、一応僕もついて行ってみるか。

 実は今日までの間に僕は9階層の最後まではたどり着いていた。9階層には大きな扉が鎮座しており、そこから一瞬中を覗いて一瞬で閉めた。僕じゃなく『俺』が感じ取ったからだ、今までの相手とは別格の奴だと。そいつを倒すためにの準備をここ二日ほどしていたのだがまだ倒すビジョンは見えないらしい。

 樋口 徹
 レベル23
 ユニークスキル
 早熟7
 幸運2
 天の塔転移権限

 Pスキル
 剣術7
 体術7
 武術7
 回避7
 生命感知7
 聴覚強化7
 風魔法6
 命中4
 剣速上昇7
 神聖魔法6
 魔力感知5
 魔力循環6
 魔力操作7
 錬金術5
 隠形5
 隠密4
 心眼3

 Aスキル 
 Ⅲアクセルスラッシュ
 Ⅳトルネードダッシュ
 Ⅲトリプルジャンプ
 Ⅳクリティカルカウンター
 Ⅳシャドウステップ
 Ⅳダブルドライブ
 Ⅲ風の加護
 Ⅲ風の魔弾
 Ⅱリモートアームズ
 Ⅱマナキャッチャー
 Ⅲマジックディストラクション
 Ⅲハイヒール
 Ⅲハイキュア
 Ⅲ聖なる加護
 Ⅲエンチャント・ウィンド


 この二日は動きっぱなしだった。『俺』くんが。
 スキルの熟練度上げを最優先に行動したため新しいスキルはあまり増えていない。
 しかし、大きくスキルレベルを向上させることに成功した。今のステータスなら人外の動きも可能だし、何なら生物の域さえ超えているとも思わなくもない。
 ただしこれでもなお、『俺』は10階層への階段を守る者には勝てないと言った。
 『俺』のこういう感は当てになる。野生の感とでもいうのか、あいつはそういうことに優れている。
 だから基本的に僕はあいつの勝てる勝てないは当たると考えている。というか僕には分からないのだから任せるのが適任という奴だ。

 隠形で姿を消し、隠密で音を消しながらついていく。生命感知の範囲ギリギリをついていく事で見つかる可能性は殆どないと思う。サーモセンサー付きのゴーグルとか持ってたらヤバいから一応距離は30m位離れている。

 気になる所があるとするなら一つ。30人前後の迷彩服の中に一人、和装の女がいることだ。黒髪に着物姿は似合っているの限りだが着物って絶対動きにくいだろ。
 まさか陰陽師とか結界師とか退魔師とかそういう系のやつ? いやいやこのご時世にそれはないだろ。てかダンジョン生物にそんなの効くわけない……よな?

「理からはみ出たる異形の者よ、在るべき処、在るべき姿、理を読み解き成るべき形へ戻りたまえ」

 は? 詠唱? 巫女じゃなくて魔法使いってか?
 しかも効果覿面とはどういうことだ。一角兎が何のダメージも追っていないのに光の粒になって消えてしまった。
 その後も平気で何体ものモンスターを光の粒へと変えていく。聴覚強化を全開で使って盗み聞ぎしてみることにした。

「初めて聞いたときは驚いたがこうやって見せてもらうとすごいもんだな」

「やはりこのダンジョンの生物は怪異に近い存在のようです。私の家計に伝わる怪異退治の技があればこの程度の位しか持たない怪異であれば問題なく消滅させることができるでしょう」

「この分なら任務の遂行も簡単かもしれないな」

「はい、任せてください!」

 高校生くらいなんだよな、どう見ても。
 普通の女の子だったとしたら銃弾飛び交う戦場で平然としていられるのだろうか?
 それにその能力は無制限に使い続けられる物なのか?

 4階層まではこれといった危険もなく順調に歩みを進めていった。あの不可思議な能力についてもかなりわかってきたことがある。
 まず効果対象は視界範囲内で無制限。同時に数十体でも消せていた。距離についても制限はなく射程は視界範囲内。詠唱は絶対に必要なわけではなく規模が下がっていいなら一小節程度の詠唱でも効果を発揮する。

 盗み聞ぎの結果、あの娘はダンジョンに入るのは初めての様だ。レベルはここまで来て2まで上がっているようだが討伐数0の状態であの魔法のような何かを使えたという事になる。魔力感知全開で調べてみたところあの子から魔力の反応は無かった。

 つまりあの能力は魔法ではない。

 恐らくはユニークスキル。先天的に獲得している能力なのだろう。
 ならば能力次第で僕や俺が到達できていない階層まで行けるかもしれない。
 ただあの能力を疑うのならば一つ、あの能力は相手の強さや格に左右されないのだろうか。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

俺だけ成長限界を突破して強くなる~『成長率鈍化』は外れスキルだと馬鹿にされてきたけど、実は成長限界を突破できるチートスキルでした~

つくも
ファンタジー
Fランク冒険者エルクは外れスキルと言われる固有スキル『成長率鈍化』を持っていた。 このスキルはレベルもスキルレベルも成長効率が鈍化してしまう、ただの外れスキルだと馬鹿にされてきた。 しかし、このスキルには可能性があったのだ。成長効率が悪い代わりに、上限とされてきたレベル『99』スキルレベル『50』の上限を超える事ができた。 地道に剣技のスキルを鍛え続けてきたエルクが、上限である『50』を突破した時。 今まで馬鹿にされてきたエルクの快進撃が始まるのであった。

1514億4000万円を失った自衛隊、派遣支援す

ス々月帶爲
ファンタジー
元号が令和となり一箇月。自衛隊に数々の災難が、襲い掛かっていた。 対戦闘機訓練の為、東北沖を飛行していた航空自衛隊のF-35A戦闘機が何の前触れもなく消失。そのF-35Aを捜索していた海上自衛隊護衛艦のありあけも、同じく捜索活動を行っていた、いずも型護衛艦2番艦かがの目の前で消えた。約一週間後、厄災は東北沖だけにとどまらなかった事を知らされた。陸上自衛隊の車両を積載しアメリカ合衆国に向かっていたC-2が津軽海峡上空で消失したのだ。 これまでの損失を計ると、1514億4000万円。過去に類をみない、恐ろしい損害を負った防衛省・自衛隊。 防衛省は、対策本部を設置し陸上自衛隊の東部方面隊、陸上総隊より選抜された部隊で混成団を編成。 損失を取り返すため、何より一緒に消えてしまった自衛官を見つけ出す為、混成団を災害派遣する決定を下したのだった。 これは、「1514億4000万円を失った自衛隊、海外に災害派遣す(https://ncode.syosetu.com/n3570fj/)」の言わば海上自衛隊版です。アルファポリスにおいても公開させていただいております。 ※作中で、F-35A ライトニングⅡが墜落したことを示唆する表現がございます。ですが、実際に墜落した時より前に書かれた表現ということをご理解いただければ幸いです。捜索が打ち切りとなったことにつきまして、本心から残念に思います。搭乗員の方、戦闘機にご冥福をお祈りいたします。

神様に転生させてもらった元社畜はチート能力で異世界に革命をおこす。賢者の石の無限魔力と召喚術の組み合わせって最強では!?

不死じゃない不死鳥(ただのニワトリ)
ファンタジー
●あらすじ ブラック企業に勤め過労死してしまった、斉藤タクマ。36歳。彼は神様によってチート能力をもらい異世界に転生をさせてもらう。 賢者の石による魔力無限と、万能な召喚獣を呼べる召喚術。この二つのチートを使いつつ、危機に瀕した猫人族達の村を発展させていく物語。だんだんと村は発展していき他の町とも交易をはじめゆくゆくは大きな大国に!? フェンリルにスライム、猫耳少女、エルフにグータラ娘などいろいろ登場人物に振り回されながらも異世界を楽しんでいきたいと思います。 タイトル変えました。 旧題、賢者の石による無限魔力+最強召喚術による、異世界のんびりスローライフ。~猫人族の村はいずれ大国へと成り上がる~ ※R15は保険です。異世界転生、内政モノです。 あまりシリアスにするつもりもありません。 またタンタンと進みますのでよろしくお願いします。 感想、お気に入りをいただけると執筆の励みになります。 よろしくお願いします。 想像以上に多くの方に読んでいただけており、戸惑っております。本当にありがとうございます。 ※カクヨムさんでも連載はじめました。

クラス転移したひきこもり、僕だけシステムがゲームと同じなんですが・・・ログアウトしたら地球に帰れるみたいです

こたろう文庫
ファンタジー
学校をズル休みしてオンラインゲームをプレイするクオンこと斉藤悠人は、登校していなかったのにも関わらずクラス転移させられた。 異世界に来たはずなのに、ステータス画面はさっきやっていたゲームそのもので…。

Sランクパーティから追放された俺、勇者の力に目覚めて最強になる。

石八
ファンタジー
 主人公のレンは、冒険者ギルドの中で最高ランクであるSランクパーティのメンバーであった。しかしある日突然、パーティリーダーであるギリュウという男に「いきなりで悪いが、レンにはこのパーティから抜けてもらう」と告げられ、パーティを脱退させられてしまう。怒りを覚えたレンはそのギルドを脱退し、別のギルドでまた1から冒険者稼業を始める。そしてそこで最強の《勇者》というスキルが開花し、ギリュウ達を見返すため、己を鍛えるため、レンの冒険譚が始まるのであった。

ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!

桜井正宗
ファンタジー
 辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。  そんな努力もついに報われる日が。  ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。  日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。  仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。 ※HOTランキング1位ありがとうございます! ※ファンタジー7位ありがとうございます!

処理中です...