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第二章 プレイヤー
18話 魔神の苦悩1
しおりを挟む一瞬にして、多数召喚型ユニット二枚分が吹き飛んだ。
その事実は三人に三者三様の思いを抱かせる。
だが、共通して脳裏に浮かんだ言葉があった。
__やばい!
恐怖を、希望を、興奮を、その一撃は彼らに様々な思いを抱かせる。
もしも、シグマが異常な魔力反応を感知していなければ、
もしも、シグマがこの世界の魔法を習得していなければ、
もしも、シグマが『魔力増幅』の魔法を覚えていなかったら彼らは消滅していた。
しかしその事実は、バトルマニアとサイコパスに恐怖を抱かせる事象ではない。
その興奮を更に高める結果となる。
彼らとて、この世界で神と呼ばれるに至った存在だ。
やられっぱなしは性に合わない。
「面白くなってきやがった!!」
そう言ってダルムは飛び出した。
王国軍クラスはユニット一体一体の性能が高い事で知られるクラスではあるが、その真価はプレイヤーを強化できる事にある。数々の装備型魔法は当然プレイヤーに対しても有効だ。
この世界では1つ1つが神話級の代物であり、その装備に全身を包んだ今のダルムは本気モードと言う事だ。
尽きる事のない莫大なリソースもあり、その神話級装備1つ1つのレベルも最大まで強化されている。
「ちょっ! 待ちなさい!」
あの魔法を見た上で怖気ない自信は認めるが、それは勝利とは関係のない思考だ。
最悪撤退も視野に入れていたシグマの考えは、その言葉を無視して飛び出したダルムの行動によって却下せざるを得なかった。
「私の物を壊してくれたお礼はしないといけないよね!」
今度はミコンが飛び出していく。
彼女のアバターの直接戦闘能力はたいして高くない筈なのだが、勝算が無いのに攻めるような間抜けではない事をシグマは知っていた。
そうなると、プレイヤー2人で攻めさせるわけにもいかない。
「付与魔法『魔力障壁』『質量十倍』『筋力上昇』『耐久向上』」
掛けられる限り、彼らに魔法をかける。
ステータスの合計量を消費するが、直接戦闘しない彼女には速度以外のステータスは意味の薄い物だ。
これで少なくとも時間稼ぎは出来るはず。
シグマは自分の役割を再確認する。
メイフォンの切り札は間違いなく『奪神・プランター』だろう。
この世界で自分よりも多くの魔法を扱える唯一の存在と言える文字通りの神。
それを抑え込むことがシグマには要求されており、それが勝利条件の一つとして大きく勝率を変化させる要因だ。
「あーもう! クソが!」
普段ではありえない暴言を吐き散らし、彼女も2人を追う。
がしかし、この状態でもしもメイフォンと戦闘になれば、彼女が2人に出来るのは補助魔法でのアシスト程度だろう。
正確な位置情報さえあれば補助魔法に射程は無い。
ならば下手に近づくと彼らの邪魔になるか。
現状、彼女は3人の合計金貨の60%を保有している。
それは彼女の『魔力増幅』がリソースの最大使用量が一番高いからだ。
実際一撃目の光線から三人を守れている時点でその判断は正しいと言えた。
ただ、それだけの金貨があれば前衛のユニットを幾つか召喚して彼らにつけた方がいい。
そう判断した彼女は『呪法師・カルマ』と『錬剣士・ソリュート』を召喚、即座にレベルを100まで上昇させる。コスト70と80のユニットなので、戦闘能力はプレイヤーよりも高いのだが、レベル100を超えているメイフォンとコスト200ユニットのプランターにどこまで通用するかは不明だ。
「行け! ダルムとミコンを援護しろ!」
戦闘能力がプレイヤーよりも上と言っても、それはステータス面だけであり、スキルやカードを使用されればユニットは簡単に敗北するだろう。
だから、二体のユニットはプレイヤーの援護という形で放った。
「「畏まりました!」」
そう言って二人の影はどんどん薄くなっていく。
爪を噛む仕草をしながら策をめぐらせる。
メイフォンは今の面子だけでも討伐可能だろう。
問題はプランターと新たに召喚されるユニットだ。
新たにユニットを召喚する分には、ダルムとミコンも召喚して対応すればいい。
プランターをデッキに3枚入れていると言うのは考えにくいので、更に増える事も無い。
問題は『魔力増幅』だ。プランターの『魔法略奪』の効果はプレイヤーにも適応される。
だから、さっきの大火力をぶちまけられると少しきつい。
「つまり、私は魔法を相殺する係か」
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