とある最強盗賊の苦悩

水色の山葵

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第一章 記憶

5話 調子に乗る冒険者

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「ようこそメイフォン。ここが冒険者の集う街エティスラよ」

「シアってそう言う様式美みたいな物の拘り強いの?」

「やっぱり変?」

「いや、俺と同類だなと思って」

「へえ。じゃあ今からの予定も決まってたりするの?」

「取り敢えず俺も冒険者になりたいかな。お金を稼ぐ手段の確保は必要だろ?」

「まあ確かに。ていうか今までどうしてたのよ?」

「まあ拾った物を売る生活、みたいな?」

「何で自分で疑問形なのよ」

「まあいいから、早く冒険者組合みたいなとこ行こうぜ。あるんだろ?」

「ええ、まあ付いて来なさい」

「お供致しますよ、お嬢様」

「置いてくわよ?」

「冗談だよ。感謝してる」

「解ればいいのよ」






 ついた場所は町の中でもかなり大きい建物だった。
 どうやら冒険者ってのはそこそこ大きな組織らしい。
 中に入ると武装した奴が大量にいる。
 俺には皆殺人鬼みたいなもんに見えるが、魔獣とかいう化け物と戦うに当たって装備は必須なのだろう。
 掲示板に張り付けられた依頼の紙を見る限り、魔獣退治以外にも仕事は色々あるようだ。

「ほら登録はこっちよ」

 呼ばれた場所に行くと役所の窓口を思い出すような配置の一角に案内される。

「リズちゃん、ただいま」

「シアさんおかえりなさいです!」

「悪いんだけど、コイツの登録してやってくれない?」

「えっと、この方は?」

「森で出会った変人よ。基本的に無害な奴だから安心していいわ」

「ちょ、酷いな。 改めまして、私はメイフォンと申します。リズさん、よろしくお願いしますね」

「はい。お願いします」

「今回は冒険者登録の為にお伺いいたしました。登録は私でも可能でしょうか?」

「ええ、条件は満たしていると思えますので可能だと思いますよ」

「では、よろしくお願い致します」

「ねえ、随分私の時と態度が違うじゃない」

「相手の対応が違うからだ」

「へえ、面白い事言うじゃない」

「あの、大丈夫ですか?」

「ええ、どうしましたか?」

「はい。この書類に必要事項をご記入下さい」

「解りました」

 名前、年齢、クラスか。
 メイフォン、18、戦士っと多分大丈夫だろう。

「書けました」

 てか、文字も日本語でいいんだな。
 危ない危ない。

「はい。オッケーですね。ではこちらが冒険者カードになります」

 なんだ? 会員証みたいなもんか?
 まあ取り敢えず貰って置く方針で。

「ありがとうございました」

「いえ、解らない事があれば何でも聞いて下さいね!」

「ええ、そうさせていただきます」


 よし、この調子で生活基盤を整えて行こう。

「で、次はどうするのよ?」

「ああ、シアに言いたい事があったんだ」

「何よ」

「俺と、一緒にやらないか?」

「は、ひゃ?」

 なんだよ「ひゃ」って。
 てかクネクネすんなし。

「森に1人でいたって事は誰かと一緒に仕事をしてる訳じゃ無いんだろ? なら俺が仕事を手伝ってやるよ5:5でいいぜ?」

「あ、あ。いやそうか。そうよね。ていうか、だからなんで偉そうなのよ。私の方が先輩なのよ? 敬いなさいよ」

「敬ってくれる後輩が居なかったからって突っかかんなよ。」

「な、私だっているわよそれ位」

「ほう? だれが?」

「リズとか……」

「職員じゃねーか」

「うるさいわね。小さい事を気にするんじゃないの!」

「それで、答えを聞かせてくれよ。嫌なら俺は二度と言わない」

「しょうがないわね!!」

「友達がやっと出来たからってそんなに喜ぶなよ」

 やはりボッチだったか。
 自分がそうだとよく解る。
 いや、確かに俺は向こうの世界でボッチ決め込んでたけど、こんなに行動力のあるやつだったか?
 まあ身体がゲームキャラになった影響かな。

「喜んでないわよ」

「はいはい」

 シアの顔がどんどん赤くなって行く。
 あれ、やりすぎちゃった?

「七、三」

「え?」

「私が7であんたが3!!」

「え、いや、ちょ」

「なんか文句ある?」

「生言ってすんませんした」

「絶対許さない!!」
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