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其の五 この世界の住人(ノンプレイヤーキャラクター)
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レベリングも程ほどに俺は街の図書館へ足を運んだ。この世界の事を知るためだ。中世ヨーロッパのような街並みに無理やりスキルやら魔法やらレベルやらのゲーム要素を組み込んだような世界。
その歪さに気が付くなら、別の世界から来た人間の更にゲームをよく知っている人間に限られるだろう。それほどまでにこの歪さはこの世界の住人にとって常識と呼べるシステムになっていた。
宗教や文化にまでスキルシステムは影響している。
固有スキル持ちは使徒と呼ばれ、神聖な存在とされる。
レベル100以上の存在は超越者と呼ばれ、世界でも希少な存在である。
このようなこの世界の住人の殆どが知っているような情報はほぼ図書館にあった。
しかし、スキルの効果や獲得方法に関する書物はかなり限られた数しかなかった。
恐らく秘蔵されているのだと思われる。まあ普通に考えて自分が苦労して手に入れたスキルの情報なんて公開したくないだろうしな。
まあ俺はゲーム世界の知識があるのでスキル情報は必要ない。そして俺がこの図書館に来た真の目的は俺の存在、つまり異世界人の扱いについての資料が見たかったからだ。
しかし、当然の如く秘蔵されていた。やはり、王立の図書館か王城にある書庫レベルの資料を閲覧できないと身になるような情報はないのかもしれない。
ここまでで異世界人について確定している情報は、その全てが固有スキルを有しているということだ。それにパラメータもこの世界の平均を大きく上回っている。俺以外は。
しかし固有スキルは異世界人にのみ宿る能力ではない。この世界の住人も非常に稀にだが固有スキルを獲得できる可能性を持っている。
しかし、条件が不明だ。英雄やら勇者やらは持ってたっぽいけど、何の条件で得たのかわからない。
初見プレイもそれなりに面白いと思うが、しかし命が1つしかない世界でそれは不安の種以外の何物でもない。
神の恩寵、偉業達成、秘宝の使用。どれもありそうでどれも眉唾そうな物ばかりだ。
これといってしっくりくる物がない。
さてと、街の図書館や本屋は巡ったがどれも重要な要素が書かれていない。スキルシステムが常識すぎてそれを詳しく調べようとはならないのかもしれない。
そもそもそこに法則が存在しているという気づきを得た人間が何人いることか。
「この分だとどこへ行っても収穫はなさそうだな」
街外れの本屋の中で呟く。この街にある本屋や図書館、情報がありそうな場所は全て見たがこれと言って重要な文献は存在しなかった。
「スキルについて調べているのかね?」
俺に話しかけてきたのはこの本屋の店主だった。
真っ白い髭を伸ばした仙人みたいな爺さんだ。このビジュアルだとゲームだったら重要キャラなんだけどな。ここは法則が似ているだけで、俺の知っているゲーム世界じゃないっぽいしな。
「ええ、少し興味がありまして」
「珍しい事じゃ」
「そうなんですか?」
少しだけ、この老人の話を聞いてみるのも悪くないかもしれない。少しだけだ、この世界の住人の、それも何の能力も持っていない人間への期待などその程度の物でしかない。
ただ、今までがレベリングばかりで少し飽きてきていたからこんな調べものをしていたのだろうし。それなら老人の話を聞くのも大した差はないだろう。
「スキルなら冒険者ギルドに行けば初級クラスのスキルと一般的な戦闘スキルについて調べられるし、何よりその程度の知識なら冒険者ならだれでも知っている物でしかない。しかしお主は調べておる。冒険者なら知っている事を知らず、しかしスキルについて調べている。しかも専門の書物ではなくスキルについて書かれていそうな本を手あたり次第に。もしかすると、お主は未知なるスキルか、その法則を導き出そうとしているのではないか?」
こいつヤバいな。俺がこの本屋に立ち寄ってまだ30分も経っていない。それなのに、俺の行動から思考を当ててきた。年の功か特殊なスキルか、どちらにしても危険だ。
「そう警戒することはない。儂などただの老人じゃよ。ただお主のような事を考えていた時代もあったというだけのことじゃ」
何かを懐かしむように爺さんはどこか遠くを見つめていた。
この爺さんが言っていることが本当なら、俺の求めている知識を持っているかもしれない。それが完成していなかったとしてもこの爺さんの知識は大いに役に立つ。そんな気がする。
警戒と解く。街中で戦闘行為には及ばないだろうとか、スキルについて詳しいなら俺なんて相手にならない可能性があるとか、警戒を解くための理由はいろいろあるが、すでにこの爺さんをただのNPCだとは思えなくなっているのだろう。
「聞きたいことがあるのではないか? 儂はお主の知りたいことを知っているかもしれないぞ?」
「固有スキルとスキルシステムの法則について。それが俺の知りたいことだ」
「なるほど。その知識は特一級封印指定の知識じゃ。儂はある程度その知識について知っているがその対価にお主は何を出す?」
そうか。この爺さんはそれほどまでに自身があるのか。ならばいいだろう。
「最終職業、賢者への転職方法を開示しよう」
爺さんは目を大きく開き、ぎらつくような笑みを俺に向けた。
その歪さに気が付くなら、別の世界から来た人間の更にゲームをよく知っている人間に限られるだろう。それほどまでにこの歪さはこの世界の住人にとって常識と呼べるシステムになっていた。
宗教や文化にまでスキルシステムは影響している。
固有スキル持ちは使徒と呼ばれ、神聖な存在とされる。
レベル100以上の存在は超越者と呼ばれ、世界でも希少な存在である。
このようなこの世界の住人の殆どが知っているような情報はほぼ図書館にあった。
しかし、スキルの効果や獲得方法に関する書物はかなり限られた数しかなかった。
恐らく秘蔵されているのだと思われる。まあ普通に考えて自分が苦労して手に入れたスキルの情報なんて公開したくないだろうしな。
まあ俺はゲーム世界の知識があるのでスキル情報は必要ない。そして俺がこの図書館に来た真の目的は俺の存在、つまり異世界人の扱いについての資料が見たかったからだ。
しかし、当然の如く秘蔵されていた。やはり、王立の図書館か王城にある書庫レベルの資料を閲覧できないと身になるような情報はないのかもしれない。
ここまでで異世界人について確定している情報は、その全てが固有スキルを有しているということだ。それにパラメータもこの世界の平均を大きく上回っている。俺以外は。
しかし固有スキルは異世界人にのみ宿る能力ではない。この世界の住人も非常に稀にだが固有スキルを獲得できる可能性を持っている。
しかし、条件が不明だ。英雄やら勇者やらは持ってたっぽいけど、何の条件で得たのかわからない。
初見プレイもそれなりに面白いと思うが、しかし命が1つしかない世界でそれは不安の種以外の何物でもない。
神の恩寵、偉業達成、秘宝の使用。どれもありそうでどれも眉唾そうな物ばかりだ。
これといってしっくりくる物がない。
さてと、街の図書館や本屋は巡ったがどれも重要な要素が書かれていない。スキルシステムが常識すぎてそれを詳しく調べようとはならないのかもしれない。
そもそもそこに法則が存在しているという気づきを得た人間が何人いることか。
「この分だとどこへ行っても収穫はなさそうだな」
街外れの本屋の中で呟く。この街にある本屋や図書館、情報がありそうな場所は全て見たがこれと言って重要な文献は存在しなかった。
「スキルについて調べているのかね?」
俺に話しかけてきたのはこの本屋の店主だった。
真っ白い髭を伸ばした仙人みたいな爺さんだ。このビジュアルだとゲームだったら重要キャラなんだけどな。ここは法則が似ているだけで、俺の知っているゲーム世界じゃないっぽいしな。
「ええ、少し興味がありまして」
「珍しい事じゃ」
「そうなんですか?」
少しだけ、この老人の話を聞いてみるのも悪くないかもしれない。少しだけだ、この世界の住人の、それも何の能力も持っていない人間への期待などその程度の物でしかない。
ただ、今までがレベリングばかりで少し飽きてきていたからこんな調べものをしていたのだろうし。それなら老人の話を聞くのも大した差はないだろう。
「スキルなら冒険者ギルドに行けば初級クラスのスキルと一般的な戦闘スキルについて調べられるし、何よりその程度の知識なら冒険者ならだれでも知っている物でしかない。しかしお主は調べておる。冒険者なら知っている事を知らず、しかしスキルについて調べている。しかも専門の書物ではなくスキルについて書かれていそうな本を手あたり次第に。もしかすると、お主は未知なるスキルか、その法則を導き出そうとしているのではないか?」
こいつヤバいな。俺がこの本屋に立ち寄ってまだ30分も経っていない。それなのに、俺の行動から思考を当ててきた。年の功か特殊なスキルか、どちらにしても危険だ。
「そう警戒することはない。儂などただの老人じゃよ。ただお主のような事を考えていた時代もあったというだけのことじゃ」
何かを懐かしむように爺さんはどこか遠くを見つめていた。
この爺さんが言っていることが本当なら、俺の求めている知識を持っているかもしれない。それが完成していなかったとしてもこの爺さんの知識は大いに役に立つ。そんな気がする。
警戒と解く。街中で戦闘行為には及ばないだろうとか、スキルについて詳しいなら俺なんて相手にならない可能性があるとか、警戒を解くための理由はいろいろあるが、すでにこの爺さんをただのNPCだとは思えなくなっているのだろう。
「聞きたいことがあるのではないか? 儂はお主の知りたいことを知っているかもしれないぞ?」
「固有スキルとスキルシステムの法則について。それが俺の知りたいことだ」
「なるほど。その知識は特一級封印指定の知識じゃ。儂はある程度その知識について知っているがその対価にお主は何を出す?」
そうか。この爺さんはそれほどまでに自身があるのか。ならばいいだろう。
「最終職業、賢者への転職方法を開示しよう」
爺さんは目を大きく開き、ぎらつくような笑みを俺に向けた。
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小説家になろうの方にもこの作品を投稿しています。進みはこちらの方がはやめです。
少しでも良いと思ってくださった方、エールよろしくお願いします。_(._.)_
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