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第2章『エルフの姫様を助ける事にした』

瞬殺と平手打ち

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私達は今牢獄の中にいる

しかし…アルカ殿は先程からずっと泣きっぱなしである

「ユートォ…なんでですかぁ……何で死んじゃったんですかぁ………」

ドーラ殿はずっと上の空だ
言葉も発さない

そういう私も…ギリギリのところで正気を保ってる感じだ
リーザスが死んだと思ったあの日とは違う……

なんだろう……この心にポッカリと空いた穴は………

「時間だ」
鉄格子が開く
どうやら私達の処刑の時間らしい




『皆の者!よく見ておけ!これが我に逆らった者の末路だ!』
街の噴水広場に臨時の斬首場が用意されその上に私達は登る

「最後に言い残したい事はあるか?」
トリスタンが私に対して遺言を聞く

私はトリスタンの顔に痰を吐く
「ばーか」

トリスタンは耳まで赤く染める
「ええぃ!この娘は街の炭鉱夫共の相手をさせろ!」

トリスタンがそう言うと斬首場に屈強な男共が登ってくる
「どうだ?ハーフエルフの娘よ、これからお主が大事に守り続けた純白が失われるのだぞ?この観衆の目の前でだ…グフフフ」

「初めろぉ!」
あぁ……すみませんリーザス様……私はここで………
そして…ユート殿……また一目でも見たかった……



「貴様!何者だ!」
トリスタンの声が聞こえる

「もう少し情報収集したかったが……これ以上は流石に見過ごせないのでな」
この声は……とても安心する声だ……安らぎすら覚える

「ユート!」 「ユート様!」
アルカ殿とドーラ殿の声が聞こえる
そうか…やはり……

「約束、守れなくてすまなかったな…お前らに悲しい思いをさせた」

私の目からとめどなく涙が溢れてくる
私の心に空いた穴が塞がった様な気がする

「バカな…貴様はユート!なぜだ!確かにブルータスの駒の一つ『ラットとブラッド』によって殺されたはずだ!」

「へー、あの二人はラットとブラッドっていうのか…」 
ユートがトリスタンを嘲笑する

「そんなに知りたきゃ教えてやるよ」
時間は三日前のユートの首斬りの直前まで遡る




まずいな……このままだと死ぬな……
だけど、これはチャンスだ
1回死ぬか

だけど…そしたらイリーナとの約束を破っちまうな

「ご…めんな……イリー…ナ……約束…守れなかった……」
声も出ねぇか

ならばちょうど良いな
俺の詠唱も聞こえない

『ー土人形を身代わりへゴーレムトランスー』
土属性魔法と空間属性魔法の合成魔法
土属性魔法で事前に造っておいたゴーレムを俺の外見に似せる
その後、空間属性魔法で俺とゴーレムの場所を入れ替える

実は宿屋に以前造ったゴーレムを置いてきていたのだ

その後また王城に戻ったら牢獄にアルカ達が捕まってるのを見つけたがあえて放置した




「……という訳だ」

トリスタンがまた耳まで赤く…いや目が充血してる
人が怒ってる様は滑稽だな

「ラット!ブラッド!この男を殺せ!」
ブルータスがそう叫ぶと観衆の中から二人の男が飛び出してきた

「ナ…何度蘇っても……マ…また殺せば…イ…良いだけ」
「コ…今度はバラバラに…匕…引き裂いてやります…ハイ」

そう言うとまずはブラッドが俺に向けて拳を振り下ろす

「お前に鋼鉄化ヘビメタは意味無いんだろ?」
「だったら…お前の攻撃に当たらなければ問題ない」
『ー俊敏スピードの劣化を50%解除ー』

「キ…消えた……」
「ブ…ブラッド……上にいます…ハイ」
俺はまた天高く飛び上がっている

「ム…無駄です……ボ…僕がブラッドを守れば……ア…あなたの攻撃は効かないです…ハイ」
ラッドが素早くブラッドの体をよじ登る

「それ…物理攻撃は……だろ?」
『上位魔法ー超高圧電磁砲レールガンー』

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
ラッドの体が蒸発していく

「チャージ量は少ないから一瞬で蒸発させてやれなくて悪かったな」
そしてラッドは完全に消えてなくなった

「オ…オデの相棒のラッドを……ブ…ぶち殺してやる!」
ブラッドが右手に肉体強化グロウアップの魔法をかける

「お前には俺の武器を試させてもらうぜ」
無限収納アイテムボックスから『鏡花水月』を取り出す

「ナ…なんだ……ソ…その棒切れ……」
棒切れとは失礼な奴だな
ドーラの最高傑作だぞ

「まぁ、この切れ味は自分の身体で確かめな」
俺が鏡花水月で斬り付ける



「グゥ……ン?…ナ…何ともない……ショ…所詮棒切れ……オデの身体には効かない!!」
オデはそう言った後、あいつを殴り飛ばす

肋骨を折られ、肺に刺さっただろう
あいつは血を吐き出した

「ラ…ラッドのかたきだ……」
オデはその後あいつの身体を殴り続ける
気がつくとそいつは跡形もなく消えていた

「オ…オデは強い…オ…オデは最強!」
オデは笑う、勝利を勝ち誇り笑う
いつまでも…いつまでも…笑い続ける……
いつまでも……いつまでも……



「幸せそうな顔してんな」
まぁ鏡花水月によって魅せられながら死ぬのが一番楽な死に方なのかもな

今さっきまでのは鏡花水月によって見せていた幻影だ
ブラッドは既に息絶えている

「どうした?トリスタンにブルータス、顔色が悪いぜ?」
まぁ…そうなるのが当たり前か

トリスタンもブルータスも自らの最強の駒を投入して瞬殺されたのだ
顔色が悪くなるのは必然か

「悪い、時間食っちまった」
俺はそう言いながら三人の拘束を解く

「ユートォォォォ!いぎででよがっだぁぁ生きててよかった
アルカがいつも通りの顔で俺に抱きつき泣きわめく

「ユート様ァァァ!死んじゃったと思ったっすよぉぉぉ!」
ドーラもアルカと同じ様に俺に飛び付き泣きわめく

「悪かったなイリーナ、心配をかけ…」

パシン
その音が鳴り響いた後、俺の左の頬がヒリヒリと赤くなる

「バカっ!私達を泣かさないと言ってくれたじゃないか!なのに…なのに……この…バカっ…バカ……」
そう言いながらイリーナは、ぽかぽかと俺の体を何度も叩く

ん~…イリーナさんがツンデレっぽく変わってしまってるな
性格が変わる程心配してくれたのか

「ええぃ!貴様ら!タダで済むと思うな!こちらにはリーザス嬢がいるのだぞ!」
ブルータスが虚勢を張る

やべっ、この二人の事すっかり忘れてた
「あ~…リーザスね、リーザスなら既にこちらが保護したから」
するとさらにブルータスの顔が青くなる

「じゃあなブルータス殿、トリスタン王」
俺はそう言い残しユースティア王国で使っていた宿屋まで転移ワープした

「ど…どうなさいますかトリスタン王……」
ブルータスがトリスタンに問いかける

「ヴィクトリア王国…いやユースティア王あの者らを指名手配しろ!」
「見事見つけ、さらに連れてきた者には金貨五十枚を与えよう」



「……あのクソ野郎は…何をやってるのですか」
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