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第5章『悪魔の王様を探す事にした』
再会の三人と気が向かぬ女?領主
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『おい知ってるか?ヴィクトリアの話』
『聞いた聞いた。なんでも一夜にして国が滅んだらしいじゃねぇか』
『隣国だろ? ユースティアも危ないんじゃねぇか?』
『いやだがヴィクトリアのトリスタン王は乱心してたみたいだしなぁ……』
街ゆく人々は噂を語る。下手な新聞などよりも街の噂の方が信憑性が高いこともあるからだ。
「ヴィクトリアねぇ…あまりいい思い出はないからすっかり忘れてたがそんな国もあったなぁ」
「とりあえずウチも警備レベルを最大限まで引き上げて検問を強化するかな」
女体化したユートは露店で買った串焼きをかじりながらユートに変身したダンタリオンと歩く。
ユートは現在尻込みしていた。
確かに街の名前という資格はできた。だがしかし、資格が出来た分、他国に行くには理由が必要となってしまう。
その理由も馬鹿正直に王様を探しに来ました等と言えるはずもない。だからこそ二三日の間家族間や王国から派遣された文官の一部と相談するも中々良い理由が思い付かず、気分転換にとダンタリオンと共にプラプラとしていたのだった。
いつの間にかフヴェズルングの玄関口でもある検問の近くまで来てしまい、帰ろうかとしたその時だった。
記憶の奥底にある聞き覚えがある声が検問の向こうから聞こえてくる。
恐る恐る振り返ってみると、長蛇の列の最前列に二人組の女性を発見する。
「だ~か~ら~!ユートを呼べば身分は証明出来るって言ってるじゃないですか!」
「いぇですから、身分もわからない方とユート様を合わせる訳にはいかないのですよ」
「いや、だからその身分を証明するために―――」
延々と繰り返されるかと思えるような門番とミルシィを目撃してしまったユートは様々な疑問が頭の中に浮かんでくるが、真っ先に言葉に出たのは驚く程に間抜けなものであった。
「いや、気のせいかな」
面倒くさくなったユートは踵を返しさっさとこの場から立ち去ろうとするも、一区切りついたのか定かではないがミスティがたまたま視線をユート達の方へ移し奇しくも発見されてしまう。
「あ、いるじゃないですか!お~ぃ!」
〔どうするの?〕
現在ユートの姿は女性のものであり、ミルシィらが知っているユートの姿はダンタリオンがなっている。
つまりは声をかけられたのはダンタリオンであるがダンタリオンは声を発することはできない。いや、厳密に言えば話すことはできるが十中八九ミルシィや門番が倒れてしまうだろう。
「仕方ねぇなぁ…ダンタリオン。特訓した成果見せるぞ」
〔わかった〕
そのままユートとダンタリオンは呼ばれたがままにミスティ達の元に近寄り門番がユートに…いや、門番はユートの女体化の事など知る由もないためダンタリオンに、ミルシィらが怪しいということを伝える。
「あーあー、ん…ンン…問題は無いぞ。二人を通してよろしい」
「で…ですがユート様」
「聞こえなかったのか?通せと言っているのだ」
「は、はい!かしこまりました!」
ユートとダンタリオンが行ったのは簡潔に言えば腹話術である。
《憑依》のスキルでユートの精神がダンタリオンの中に移り、ダンタリオンの声帯や仕草は《副音声》によって作り出すことでダンタリオンは一時的にだがユートとほぼ同じ様な声で話すことが可能。
威圧されたように門番はミルシィらに入街許可書を発行し手渡すと、ミルシィは突然タッタッタッと走り出しダンタリオンの顔面めがけて飛び膝蹴りを喰らわせる。
ユートならば容易く避けるか受け止めるかと予想していたミルシィは鼻血を出して地に伏したユートを見て困惑し始める。
隣の女性が何故かやれやれといった手振りをしているのを見れば尚更だ。
「おいミルシィ。久しぶりの再会だっていうのにあんまりじゃないか」
「は?一体何を……ってまさか…えぇ!?」
「お久しぶりですねぇユートさん。しばらく見ないうちに整形でもされましたかぁ?」
「悪い冗談はよせよフェーリ。お前こそ見ないうちに随分と雰囲気が変わったな」
最早古い記憶であるヴィクトリアでの出来事を全て覚えている訳でも、ましてや一人一人の人物の服装や顔つきなどを覚えている訳でもないが記憶の中にあるフェーリの顔と今現在見ているフェーリの顔とは何かが明らかに違っていた。
まるで深淵の奥底で獲物が来るのを大きな口を開けて待つ蛇のよう、というのが最も適した表現だろう。
その変わりようは別人のよう、実は双子の姉がいて入れ替わっているのだと言われれば納得が行くがそんな事はない。
「どうかしましたかぁ?私の顔に何か付いてますかぁ?」
「いや、気にするな。それよりも何しに来たんだ?今し方聞いた話だとヴィクトリアは滅んだらしいじゃねぇの」
「えぇ、その事でお伺いしたのですよぉ。人目が着くのもあれなので一先ずはユートさん…いぇ、ユーコさん?の家に行きましょうか~。ミルシィもそれで良いですよねぇ?」
「フェーリ様がそう言うのであれば…私はついて行きますけど……ッつ!イカ臭い部屋は勘弁ですよ!」
「仮にそんな匂いがする部屋があったとしても客人はいれねぇよ!」
先が思いやられる再会にユートは内心苦笑を浮かべていた。
それに反するようにダンタリオンははむはむと買った串焼きを食べるのであった。
『聞いた聞いた。なんでも一夜にして国が滅んだらしいじゃねぇか』
『隣国だろ? ユースティアも危ないんじゃねぇか?』
『いやだがヴィクトリアのトリスタン王は乱心してたみたいだしなぁ……』
街ゆく人々は噂を語る。下手な新聞などよりも街の噂の方が信憑性が高いこともあるからだ。
「ヴィクトリアねぇ…あまりいい思い出はないからすっかり忘れてたがそんな国もあったなぁ」
「とりあえずウチも警備レベルを最大限まで引き上げて検問を強化するかな」
女体化したユートは露店で買った串焼きをかじりながらユートに変身したダンタリオンと歩く。
ユートは現在尻込みしていた。
確かに街の名前という資格はできた。だがしかし、資格が出来た分、他国に行くには理由が必要となってしまう。
その理由も馬鹿正直に王様を探しに来ました等と言えるはずもない。だからこそ二三日の間家族間や王国から派遣された文官の一部と相談するも中々良い理由が思い付かず、気分転換にとダンタリオンと共にプラプラとしていたのだった。
いつの間にかフヴェズルングの玄関口でもある検問の近くまで来てしまい、帰ろうかとしたその時だった。
記憶の奥底にある聞き覚えがある声が検問の向こうから聞こえてくる。
恐る恐る振り返ってみると、長蛇の列の最前列に二人組の女性を発見する。
「だ~か~ら~!ユートを呼べば身分は証明出来るって言ってるじゃないですか!」
「いぇですから、身分もわからない方とユート様を合わせる訳にはいかないのですよ」
「いや、だからその身分を証明するために―――」
延々と繰り返されるかと思えるような門番とミルシィを目撃してしまったユートは様々な疑問が頭の中に浮かんでくるが、真っ先に言葉に出たのは驚く程に間抜けなものであった。
「いや、気のせいかな」
面倒くさくなったユートは踵を返しさっさとこの場から立ち去ろうとするも、一区切りついたのか定かではないがミスティがたまたま視線をユート達の方へ移し奇しくも発見されてしまう。
「あ、いるじゃないですか!お~ぃ!」
〔どうするの?〕
現在ユートの姿は女性のものであり、ミルシィらが知っているユートの姿はダンタリオンがなっている。
つまりは声をかけられたのはダンタリオンであるがダンタリオンは声を発することはできない。いや、厳密に言えば話すことはできるが十中八九ミルシィや門番が倒れてしまうだろう。
「仕方ねぇなぁ…ダンタリオン。特訓した成果見せるぞ」
〔わかった〕
そのままユートとダンタリオンは呼ばれたがままにミスティ達の元に近寄り門番がユートに…いや、門番はユートの女体化の事など知る由もないためダンタリオンに、ミルシィらが怪しいということを伝える。
「あーあー、ん…ンン…問題は無いぞ。二人を通してよろしい」
「で…ですがユート様」
「聞こえなかったのか?通せと言っているのだ」
「は、はい!かしこまりました!」
ユートとダンタリオンが行ったのは簡潔に言えば腹話術である。
《憑依》のスキルでユートの精神がダンタリオンの中に移り、ダンタリオンの声帯や仕草は《副音声》によって作り出すことでダンタリオンは一時的にだがユートとほぼ同じ様な声で話すことが可能。
威圧されたように門番はミルシィらに入街許可書を発行し手渡すと、ミルシィは突然タッタッタッと走り出しダンタリオンの顔面めがけて飛び膝蹴りを喰らわせる。
ユートならば容易く避けるか受け止めるかと予想していたミルシィは鼻血を出して地に伏したユートを見て困惑し始める。
隣の女性が何故かやれやれといった手振りをしているのを見れば尚更だ。
「おいミルシィ。久しぶりの再会だっていうのにあんまりじゃないか」
「は?一体何を……ってまさか…えぇ!?」
「お久しぶりですねぇユートさん。しばらく見ないうちに整形でもされましたかぁ?」
「悪い冗談はよせよフェーリ。お前こそ見ないうちに随分と雰囲気が変わったな」
最早古い記憶であるヴィクトリアでの出来事を全て覚えている訳でも、ましてや一人一人の人物の服装や顔つきなどを覚えている訳でもないが記憶の中にあるフェーリの顔と今現在見ているフェーリの顔とは何かが明らかに違っていた。
まるで深淵の奥底で獲物が来るのを大きな口を開けて待つ蛇のよう、というのが最も適した表現だろう。
その変わりようは別人のよう、実は双子の姉がいて入れ替わっているのだと言われれば納得が行くがそんな事はない。
「どうかしましたかぁ?私の顔に何か付いてますかぁ?」
「いや、気にするな。それよりも何しに来たんだ?今し方聞いた話だとヴィクトリアは滅んだらしいじゃねぇの」
「えぇ、その事でお伺いしたのですよぉ。人目が着くのもあれなので一先ずはユートさん…いぇ、ユーコさん?の家に行きましょうか~。ミルシィもそれで良いですよねぇ?」
「フェーリ様がそう言うのであれば…私はついて行きますけど……ッつ!イカ臭い部屋は勘弁ですよ!」
「仮にそんな匂いがする部屋があったとしても客人はいれねぇよ!」
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