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第三章 ウェルカムキャンプ編
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諸事情で、投稿が遅くなりました。
申し訳ございません。
—————————————————
「イタダキマス。」
気色の悪い声、そして魔力を感じるのと同時に、俺は反射で巨大な氷を出してしまった。
「危ナイ危ナイ。順調二成長シタヨウデナニヨリダ、白髪アタマ。」
2年前とは大きさや色味といった外見が異なっているものの、忘れもしないあいつだ。「ナレハテ」だ。
そしてもう一体。前にもいたパワー系のゴリラもいる。こいつのことはあの時から調べ済みで、「グランデヒヒ」という。
外見通り、とてつもないパワーとタフネスを持ち合わせている。シンプルな力だけど、とても強力だ。
それから、こいつらは何もないところから突然現れた。加えて、俺の感知を潜り抜けて来た。ということは間違いなく、あの時の透明化の能力を持った爬虫類型の魔物、「ケシキレオン」もいるはずだ。自身だけでなく、仲間の透明化できるようになったのなら、もはやA級に収まらない。目の前のこいつらも、前よりも文字通り格が上がっていると考えた方が良い。
「こんなところまで会いに来るとは、ずいぶんとお暇なようだね。だけど、会えてうれしいよ。あの時の借りを返せるからね。」
「アイカワラズ、クチダケハタッシャノヨウダナ。コレマデハ、目障リナ空間魔法使イガイタカラナ。オマエカラハナレルノヲ首ヲナガクシテマッテイタゾ。」
カーナイト様のことを知っているということは、2年前から俺に気づかれない距離で、ひっそりと俺のことを定期的に監視していたのかもしれない。
学園に通うようになって、カーナイト様も離れたから、近づいてきたということか。学園で感じた気味の悪い視線の正体も、こいつらだったようだ。
「ア、アース様……。」
俺が思考にふけっていると、蚊の鳴くようなか細い声で俺の名を呼ぶ声が聞こえた。
見ると、真っ青な顔をしながら、震えているオルト様たちが目に入った。
無理もない、少なくともAA級はある魔物が近くにいるんだ。今までこのクラスの魔物と出会ったことなんてないだろうからな。
「皆さんは、急いで森の外まで逃げて配備されている騎士・魔導士団の人たちに助けを求めてください。」
「ア、アース様を1人でこの場に残して逃げるなんてできません! 俺たちも戦う訓練をしていますから……」
「こんなところで、命を懸ける必要はないですよ。生きて情報を伝えることも大切な役目です。さあ、急いで。」
震える手で、鞘に手をかけていたオルト様たちは、恐怖と悔しさが入り乱れた表情をしながらも、首を縦に振って駆け出した。
よし、これで大丈夫なはずだ。
オルト様たちが、こいつらの相手なんかする必要はないんだ。
「取込ミ中ノ所悪イガ、行カセルトオモウカ? トイッテモ、助ケナンカコナイケドナ。下級ドモガ森ヲトリカコンデイル。今頃、マワリノ人間ドモハ対処ニオワレテイルダロウナ。」
急いで広範囲感知に切り替えると、ナレハテのいうとおり、多くのB級の魔物たちが森を取り囲んでいるのがわかる。
応援を越させないための時間稼ぎの捨て駒のようだ。計画的に俺を食おうとしているのがわかる。流石、人間のナレハテと言われるだけはある。
「皆さん、止まってください! 森を抜けた先にも、多くの魔物たちがいます! 」
俺はすぐに、少し距離の離れたオルト様たちに声をかけた。
ギリギリで声は届いたようで、オルト様たちはその場で急停止した。
「皆さんは、その場で待っていてください! すぐに終わらせますので!」
俺はそれだけ大声でいうと、すぐに俺とナレハテたちを囲むように氷壁を展開した。
絶対に逃がさないし、誰も傷つかせない。
「ナンノマネダ? 1人デ、オレタチヲ倒セルトデモオモッテイルノカ?」
「まさか、1人で倒せるなんて思っていないさ。前回のように、尻尾を巻いて逃げられても困るから檻を用意しただけだ。それに、必ず援軍は来るよ。」
「援軍ダト? マサカトハオモウガ、アノトキノ役立タズドモノコトカ? マア、マッテヤル道理モナイガナ。」
その瞬間、ほんのわずかに俺の背後の感知に何かが引っ掛かった。
それと同時に、俺は氷壁を展開したが、すぐにその氷壁はわられてしまった。
本当にギリギリだった。
後ろを振り返ると、鋭利な爪に舌なめずりしているケシキレオンの姿があった。
この場だけに感知を集中することによってギリギリ捕らえられるレベルの隠密スキルだ。とんでもなく厄介な能力の魔物だ。
さらに、鼓膜が破れそうな雄叫びと共に、グランデヒヒが俺に向かって突進してきた。
脳筋この上ないが、こういうシンプルな力というのはしかっりと対処しなければ取り返しのつかないことになる。
パワー系の相手には、小細工をするよりも相手と同じくパワーでねじ伏せに行った方が良い。
『氷槍』
俺は槍上にした氷を、グランデヒヒに向かって放った。
槍と言っても、実物大の槍ではなく、何十倍もの大きさの氷の槍だ。
グランデヒヒは俺の放った氷槍を真っ向からねじ伏せることを選んだようで、渾身の右ストレートパンチを氷槍に叩き込んだ。
氷槍と右ストレートは、数秒の拮抗を見せたものの、すぐにグランデヒヒの身体が後方に大きく弾き飛ばされ、氷壁に激突した。
申し訳ございません。
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「イタダキマス。」
気色の悪い声、そして魔力を感じるのと同時に、俺は反射で巨大な氷を出してしまった。
「危ナイ危ナイ。順調二成長シタヨウデナニヨリダ、白髪アタマ。」
2年前とは大きさや色味といった外見が異なっているものの、忘れもしないあいつだ。「ナレハテ」だ。
そしてもう一体。前にもいたパワー系のゴリラもいる。こいつのことはあの時から調べ済みで、「グランデヒヒ」という。
外見通り、とてつもないパワーとタフネスを持ち合わせている。シンプルな力だけど、とても強力だ。
それから、こいつらは何もないところから突然現れた。加えて、俺の感知を潜り抜けて来た。ということは間違いなく、あの時の透明化の能力を持った爬虫類型の魔物、「ケシキレオン」もいるはずだ。自身だけでなく、仲間の透明化できるようになったのなら、もはやA級に収まらない。目の前のこいつらも、前よりも文字通り格が上がっていると考えた方が良い。
「こんなところまで会いに来るとは、ずいぶんとお暇なようだね。だけど、会えてうれしいよ。あの時の借りを返せるからね。」
「アイカワラズ、クチダケハタッシャノヨウダナ。コレマデハ、目障リナ空間魔法使イガイタカラナ。オマエカラハナレルノヲ首ヲナガクシテマッテイタゾ。」
カーナイト様のことを知っているということは、2年前から俺に気づかれない距離で、ひっそりと俺のことを定期的に監視していたのかもしれない。
学園に通うようになって、カーナイト様も離れたから、近づいてきたということか。学園で感じた気味の悪い視線の正体も、こいつらだったようだ。
「ア、アース様……。」
俺が思考にふけっていると、蚊の鳴くようなか細い声で俺の名を呼ぶ声が聞こえた。
見ると、真っ青な顔をしながら、震えているオルト様たちが目に入った。
無理もない、少なくともAA級はある魔物が近くにいるんだ。今までこのクラスの魔物と出会ったことなんてないだろうからな。
「皆さんは、急いで森の外まで逃げて配備されている騎士・魔導士団の人たちに助けを求めてください。」
「ア、アース様を1人でこの場に残して逃げるなんてできません! 俺たちも戦う訓練をしていますから……」
「こんなところで、命を懸ける必要はないですよ。生きて情報を伝えることも大切な役目です。さあ、急いで。」
震える手で、鞘に手をかけていたオルト様たちは、恐怖と悔しさが入り乱れた表情をしながらも、首を縦に振って駆け出した。
よし、これで大丈夫なはずだ。
オルト様たちが、こいつらの相手なんかする必要はないんだ。
「取込ミ中ノ所悪イガ、行カセルトオモウカ? トイッテモ、助ケナンカコナイケドナ。下級ドモガ森ヲトリカコンデイル。今頃、マワリノ人間ドモハ対処ニオワレテイルダロウナ。」
急いで広範囲感知に切り替えると、ナレハテのいうとおり、多くのB級の魔物たちが森を取り囲んでいるのがわかる。
応援を越させないための時間稼ぎの捨て駒のようだ。計画的に俺を食おうとしているのがわかる。流石、人間のナレハテと言われるだけはある。
「皆さん、止まってください! 森を抜けた先にも、多くの魔物たちがいます! 」
俺はすぐに、少し距離の離れたオルト様たちに声をかけた。
ギリギリで声は届いたようで、オルト様たちはその場で急停止した。
「皆さんは、その場で待っていてください! すぐに終わらせますので!」
俺はそれだけ大声でいうと、すぐに俺とナレハテたちを囲むように氷壁を展開した。
絶対に逃がさないし、誰も傷つかせない。
「ナンノマネダ? 1人デ、オレタチヲ倒セルトデモオモッテイルノカ?」
「まさか、1人で倒せるなんて思っていないさ。前回のように、尻尾を巻いて逃げられても困るから檻を用意しただけだ。それに、必ず援軍は来るよ。」
「援軍ダト? マサカトハオモウガ、アノトキノ役立タズドモノコトカ? マア、マッテヤル道理モナイガナ。」
その瞬間、ほんのわずかに俺の背後の感知に何かが引っ掛かった。
それと同時に、俺は氷壁を展開したが、すぐにその氷壁はわられてしまった。
本当にギリギリだった。
後ろを振り返ると、鋭利な爪に舌なめずりしているケシキレオンの姿があった。
この場だけに感知を集中することによってギリギリ捕らえられるレベルの隠密スキルだ。とんでもなく厄介な能力の魔物だ。
さらに、鼓膜が破れそうな雄叫びと共に、グランデヒヒが俺に向かって突進してきた。
脳筋この上ないが、こういうシンプルな力というのはしかっりと対処しなければ取り返しのつかないことになる。
パワー系の相手には、小細工をするよりも相手と同じくパワーでねじ伏せに行った方が良い。
『氷槍』
俺は槍上にした氷を、グランデヒヒに向かって放った。
槍と言っても、実物大の槍ではなく、何十倍もの大きさの氷の槍だ。
グランデヒヒは俺の放った氷槍を真っ向からねじ伏せることを選んだようで、渾身の右ストレートパンチを氷槍に叩き込んだ。
氷槍と右ストレートは、数秒の拮抗を見せたものの、すぐにグランデヒヒの身体が後方に大きく弾き飛ばされ、氷壁に激突した。
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