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第三章 ウェルカムキャンプ編
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「信じられないのなら、信じられるようなストーリーと権力を使うまでだ。まず、エリクサーは少量使ったことにする。命の危機に瀕していたわけではないのだ。ただ、身体の機能を一部回復させただけだ。少量のエリクサーと、血液回復魔法、水回復魔法を掛け合わせたことによって治療が成功したことにする。それから、侯爵家次男のローウェルを対象にした理由は次のとおりだ。まず、魔導士の底上げを行うためだ。近年、我がアーキウェル王国の魔導士の質が低下していることには、多くの者が危機感を抱いているところだ。そのような中で、今年の1年生には、魔導士の名門バルザンス公爵家の次男、騎士家系でありながら、希少属性と魔力量によって第二王子の側近に取り立てられた辺境伯家の次男、そして、同じく魔導士の名門であり、現魔導副団長の次男が同じ代に揃っている。国は、この1年生の代から我国の魔導士復権を目指している。しかし、肝心の1名は魔力回路が破壊されているときた。そこで、エリクサーを少量使ってでも、魔力回路を回復させようとした、というストーリーだ。騎士や魔導士の質を表すのは、やはり貴族院の交流戦だ。1年生の時は1名ずつの勝負だが、2年生以降は団体戦となる。勝てる魔導士は最低でも3人必要だから、ローウェルが必要ないと主張するものは少数だろう。これが、対外的な理由だ。次に内部向け……味方向けといったほうがいいだろうか、の説明だ。今までは、ザールの血液魔法は他の回復魔法の追随を許さぬほどとびぬけた回復力をもっていた。そこに、アースという水回復魔法の使い手が加わったことで、エリクサーにも勝るとも劣らない回復力があることが分かった。実際、魔力回路の治療に成功しているわけだからな。回復力があるとわかれば、エリクサーを使用したことにするのに大きな反対は出ないだろう。それから、「使った分」のエリクサーは自力でとりにいくということにもする。なに、数年後もすれば俺たちを超えていく弟たちだ。エリクサーの1つや2つ、とってくるのは造作もないことだろう。」
アルベルト殿下は、一見ととても爽やかに見える笑顔で、俺達を1人ずつ見つめた。
途中までは、さすが第一王子殿下だなと思って聞いていたのに、最後の一言で一気に血の気が引いた。この人、とんでもないことをさらっと言ってのけたな。
一方のアルベルト殿下は、俺達が引きつった笑みを浮かべているのをまったく気にしていないかのように言葉を続けた。
「とりあえず其方らは、次世代の魔導士をけん引していくことを内外に示さなければならない。まあ簡単に言うと、毎年優勝しろということだ。なに、其方らが道に迷わぬようにささやかではあるが、俺たちが毎年優勝の道を示しているのだ。……ああ、もちろん、魔導士だけ強いなどと言われるようであれば、「魔導士が不作」から「騎士が不作」に取って代わるだけで何の意味もない。したがって、騎士見習も毎年優勝するように。」
俺達は視線を交わし合って、いい笑顔で返事をした。
ここまでくると、優勝するしか道はないのだ。グダグダ言って機嫌を損ねるよりも、従順に返事をしておいた方が今後何かと都合がいいだろう。
「よし、いい返事だ。……その返事が、この場をしのぐためのものだけではないことを願っている。まあとりあえず、アース、今日は大儀であった。これからも、よく励むように。」
「はい、ありがとうございます。情報操作の件もお任せしてしまい恐縮ですが、よろしくお願いします。」
そうして、本日は解散となった。皆さんがいなくなった後、ローウェルには何度も感謝され抱き着かれた。
改めて言うが、ローウェルもかなりのイケメンだ。イケメンのローウェルに強く抱きしめられた俺は、てんやわんやとなってしまったが、キルが静かにローウェルをはがしてくれた。
その後、魔力回路が回復したローウェルは目立ちに目立ちまくっていた。しかし、アルベルト殿下の情報操作のおかげで、表立って非難する声は上がらなかった。かくいう俺も、水回復魔法の使い手であることが広まって、ひそひそと噂されることになった。まあ、ローウェルが楽しそうに魔法の練習に取り組んでいるからいいけどね。
ローウェルは魔導士として、かなり遅れたスタートを切ることになった。今から、何年分もの時間を取り返さないといけない。少しで早く皆に追いつけるようにと、カーナイト様が名乗りを上げてくださりスパルタ訓練が開始された。とてもきついが、充実しているとローウェルは言っている。ローウェルといえば、今まで文官見習として過ごしてきた。これから文官見習はやめて魔導士見習にジョブチェンジするのか聞いてみたら、「俺の影属性は、諜報活動と相性がいいから文官見習は続けるぜ。それに、俺がやめると殿下に文官見習が一人もいなくなるからな。」と、さわやかな笑顔で言った。文官見習も授業や王城でのお勤めがあるあら、それに加えて魔導士見習の訓練も行うとなると、かなりのハードスケジュールになる。俺も、サポートできることはしていきたい。
さて、そうこうしているうちに、月末が近づいてきた。月末と言えば、楽しみにしていたウェルカムキャンプが行われる。キルたちとは離れてしまうけど、オルト様たちと色々な話ができそうで楽しみだ。
アルベルト殿下は、一見ととても爽やかに見える笑顔で、俺達を1人ずつ見つめた。
途中までは、さすが第一王子殿下だなと思って聞いていたのに、最後の一言で一気に血の気が引いた。この人、とんでもないことをさらっと言ってのけたな。
一方のアルベルト殿下は、俺達が引きつった笑みを浮かべているのをまったく気にしていないかのように言葉を続けた。
「とりあえず其方らは、次世代の魔導士をけん引していくことを内外に示さなければならない。まあ簡単に言うと、毎年優勝しろということだ。なに、其方らが道に迷わぬようにささやかではあるが、俺たちが毎年優勝の道を示しているのだ。……ああ、もちろん、魔導士だけ強いなどと言われるようであれば、「魔導士が不作」から「騎士が不作」に取って代わるだけで何の意味もない。したがって、騎士見習も毎年優勝するように。」
俺達は視線を交わし合って、いい笑顔で返事をした。
ここまでくると、優勝するしか道はないのだ。グダグダ言って機嫌を損ねるよりも、従順に返事をしておいた方が今後何かと都合がいいだろう。
「よし、いい返事だ。……その返事が、この場をしのぐためのものだけではないことを願っている。まあとりあえず、アース、今日は大儀であった。これからも、よく励むように。」
「はい、ありがとうございます。情報操作の件もお任せしてしまい恐縮ですが、よろしくお願いします。」
そうして、本日は解散となった。皆さんがいなくなった後、ローウェルには何度も感謝され抱き着かれた。
改めて言うが、ローウェルもかなりのイケメンだ。イケメンのローウェルに強く抱きしめられた俺は、てんやわんやとなってしまったが、キルが静かにローウェルをはがしてくれた。
その後、魔力回路が回復したローウェルは目立ちに目立ちまくっていた。しかし、アルベルト殿下の情報操作のおかげで、表立って非難する声は上がらなかった。かくいう俺も、水回復魔法の使い手であることが広まって、ひそひそと噂されることになった。まあ、ローウェルが楽しそうに魔法の練習に取り組んでいるからいいけどね。
ローウェルは魔導士として、かなり遅れたスタートを切ることになった。今から、何年分もの時間を取り返さないといけない。少しで早く皆に追いつけるようにと、カーナイト様が名乗りを上げてくださりスパルタ訓練が開始された。とてもきついが、充実しているとローウェルは言っている。ローウェルといえば、今まで文官見習として過ごしてきた。これから文官見習はやめて魔導士見習にジョブチェンジするのか聞いてみたら、「俺の影属性は、諜報活動と相性がいいから文官見習は続けるぜ。それに、俺がやめると殿下に文官見習が一人もいなくなるからな。」と、さわやかな笑顔で言った。文官見習も授業や王城でのお勤めがあるあら、それに加えて魔導士見習の訓練も行うとなると、かなりのハードスケジュールになる。俺も、サポートできることはしていきたい。
さて、そうこうしているうちに、月末が近づいてきた。月末と言えば、楽しみにしていたウェルカムキャンプが行われる。キルたちとは離れてしまうけど、オルト様たちと色々な話ができそうで楽しみだ。
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