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第三章 ウェルカムキャンプ編

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「ごめん、ちょっと俺行ってくるね。」



俺は全速力で1階へと向かった。
1階は人だかりができていて、ひそひそと話す声が幾重にも重なり合い騒然となっていた。
俺は人混みをかき分けて、騒ぎの中心へと急いだ。
あいつじゃありませんように、あいつじゃありませんように!

しかし、俺の願いは届かなかった。騒ぎの中心の物体が見えてくるなり、俺は半目になってしまった。
そいつは、チャーミングな体で堂々と四つ足で立っていた。


阿修羅丸………なんでこう、目立つような行動をとるんだよ。帰ってくるときはひっそりと帰ってくるか、向こう側に行けといったのに………。



「そこの魔物!! この俺、バーグル侯爵家嫡男であるカインが討伐してくれよう、覚悟しろ!」



うーわ、また面倒くさそうなやつが………バーグル侯爵家のカイン様だ。今、1番出てきてほしくなかった人物だ。
だけど、まあ行くしかないよな。阿修羅丸に暴れられるのも困るし………。



「お待ちください! こいつは俺のしょ………従魔です!」



俺は、阿修羅丸のチャーミングな体を持ち上げてそういった。この姿だと以外に軽いから、持ち上げても全然負担にならないのだ。



「おい、アース? 俺を従魔風情と一緒に………」


「うるさい、今は話を合わせてくれよ。」



俺は阿修羅丸の口を片手でふさいで、声を出せないようにした。これ以上しゃべられると、いろいろ事態が悪化しそうだからだ。

すると、バーグル侯爵家のカイン様は阿修羅丸を見下した目で見た後、俺をあざ笑うような視線を向けてきた。




「貴様、朝のやつだな。従魔法が使えることには少々驚いたが………その程度の魔物を従魔にしてもな。一目見ただけで、貴様のお門が知れる。」



お門を知られてしまった。このチャーミングな阿修羅丸の良さが、わからないのだろうか? だけど俺は大人だ、ここでチャーミングな阿修羅丸の良さについて語る気はない。

さて、どう返そうかな。阿修羅丸を下げたくはないし、言い返すとそれもそれで角が立ちそうだ。

すると、救世主が現れた。


「バーグル殿、私の側近がどうかいたしましたか?」


「こ、これは、キルヴェスター殿下。ご機嫌麗しゅう。いえ………問題と言いますか、そちらの側近の方が従魔を放置していたようで注意をしていたところです。」


キルたちは一瞬、阿修羅丸をガン見した後にすぐに、バーグル侯爵家のカイン様に視線を戻した。
当のキルは、とても爽やかな笑みを浮かべていた。うん、これはきっと怒っているな。説明をしなかったからかな………。




「それは失礼いたしました。アースは今日が初登校で、まだ貴族院に不慣れなのです。ここは、私の顔を立ててこの場はおさめていただけないでしょうか?」



身分をとても大切にしているバーグル侯爵家のカイン様は、上位者の言うことには逆らわないようで、愛想のよさそうな笑みを浮かべて貴族の礼をした。



「承知しました。この場は殿下の顔を立てて、引くことにいたします。」


「感謝します。………だけど、その前に一言よろしいでしょうか?」



バーグル侯爵家のカイン様が愛想のいい顔でうなずくと、キルはさわやかな笑みを消してカイン様を見つめた。


「この程度のことで、俺の側近を知った気になられては困る。………まさかとは思うが、貴殿は俺の側近を知った気になり、見下しているわけではないだろうな?」



キルの表情で、声を聴いて背筋がゾクッとした。
離れている間に、キルの王族オーラの格がますます上がったようだ。剣術だけではなく、これもアルベルト殿下の指導の賜物だろうか?

バーグル侯爵家のカイン様は、顔を引きつらせて冷や汗をかいているようだった。



「め、滅相もございません。こ、これにて、失礼いたします。」



そういうと、カインは取り巻きを引き連れてレストランから逃げるように去っていった。
と、とりあえず一件落着かな? ほぼすべてをキルに任せてしまったな。


「キル、ありがとう。助かったよ。」


「ああ。………じゃあ、2階で食事の続きをしよう。聞きたいこともあるしな?」



キルは、有無を言わせないような貴族スマイルを浮かべて、俺の腕をつかんだ。



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