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第三章 ウェルカムキャンプ編

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※ ローウェル視点



「これで公務は終了ッスね、殿下。」


「ああ、そうだな。」



主はここ最近ずっと、ご機嫌斜めだった。アースを迎えに行く気満々だったのにもかかわらず、急にこの、スールミー伯爵領の視察が入ったためアースの迎えに行けなくなったからだ。
まあ、この伯爵領の視察は俺達がやらなければいけないものだったから仕方がないけど………。それにしても、時期が悪いよな。そして、この手紙………。報告しないとまずいけど、気が重いな。




「いよいよ、明後日にはアースと会えるッスね! 背伸びてるッスかね。強くなったッスかね。………元気ッスかね。」


「お前は、アースの母親か? 最近ずっとそんなことを言っているよな。」


「キースは楽しみじゃないんッスか、アースと会えること?」


「………まあ、普通くらいだ。」


「薄情ッスね。殿下は、もちろん楽しみッスよね?」


「………あ、ああ。」




主は、若干複雑そうな顔をしているな。大方、気持ちと行動の乖離に悩んでいるのだろう。全力で迎えたい気持ちはあるけど、久しぶりで恥ずかしくて、うまく行動できない様子だ。
そういう年ごろなのだと、見守るほかないと、カーラ様が言っていた。だけど、こんな時にこの手紙を………。まあ、早く言った方が無難だな。




「あー、えーと主、すみません。こちらの手紙がアースから届いているようですが………。」



俺はそういいながら、主にアースからの手紙を渡した。



「アースから? 手紙の返信は全て受け取っていたと思うが………剣を振ってくる。」



主は手紙に目を通すとすぐに、俺に手紙を押し付けて、剣を握り外へ出て行ってしまった。



「ちょっちょ、なんッスか? 俺も見たいッス。………あー、これは本当に間が悪いッスね。はい、キース。」



「ん。あー、確かにこれは仕方ないと言えるが間が悪いな。アースにはできるだけ早く来てもらって、殿下に一言言ってほしいと思っていたんだがな。」



主は少し前から、時間さえあれば訓練をしている。さらに最近では、睡眠時間を削っているようだ。そう、いわゆるオーバーワークというやつだ。ここ最近は本当にひどい。
俺たちはそれとなく注意をしているが、受け流されてしまう。しかし、アースなら、アースの言うことなら聞く耳を持ってくれるのではないかと思っている。聞かなかったとしても、アースなら容易く解決するだろう。1週間伸びたのは、それだけ主のオーバーワークが1週間延びるということになるが、こればかりはどうにもなりそうにない。俺たちもできるだけ声はかけてみるが………あまり結果には期待できそうにない。

……アース、まだ着いてもないのに早速頼ってしまってすまない。










ーー









やっと、王都に着いたぞ!!
1週間旅路が延びたせいで、いっそう長く感じたな。


「やっと着きましたね、カーナイト様。改めて、王都まで護衛をしてくださってありがとうございました。」


「いえいえ、こちらこそ、楽しい時間をありがとうございました。アース様はこれから、王都の屋敷へ?」


「はい。母上が貴族院へ通う準備をしてくださっているとのことですので、今日中に準備を終わらせて明日から早速貴族院へ通おうと思います。」


「それは僥倖。訓練が必要な時にはいつでもお申し付けください。それにしてもアース様。髪が随分と長くなりましたね。今のままでも十分お似合いと存じますが、昔のように短髪になさるのですか?」


「ええ。本日切ろうと思います。私は短い方が好みですので。」


それに………俺は窓に映った自分の姿を見た。
身長は、日本の13歳男子くらいの平均はあると思う。だけど、顔の造形によって髪が長いと女の子に見えてしまうのだ。俺にも男としてのプライドがある。可愛いと言われるよりも、かっこいいと言われたいのだ。



「ほほほほほ。どちらも大変お似合いだと存じますよ。それでは私はこれにて、お暇させていただきます。………アース様は、十分に力をおつけになられました。自信をもって、貴族院へ入学してください。」


「はい! 3年間ご指導ありがとうございました、師匠!」


俺はカーナイト様が転移魔法で移動した後も、頭を下げ続けた。




王都の屋敷に着くと、母上と父上が待っていてくれた。家族とは、領地で会うことができたため、久しぶりということもない。しかし、事前に手紙で1週間遅れる旨を伝えていたところだが、俺の姿を見た途端、俺のことを抱きしめてくれた。………本当に心配ばかりかけているな。


俺は2人に謝り、なんとか安心してもらうことができた。その後、貴族院への入学に必要なものを確認した。準備は完全に終わっており、後は入学するだけのようだ。
準備物の中で1番の確認事項といえば、そう、制服だ。各国とも貴族院の制服は同じで、黒を基調とした衣服でそこに、好みの金の刺繍を施すスタイルだ。学年が一目で分かるように、数字が刻まれたバッジを襟元につける事になっている。そして、マントをつけるのだが、これは各々の出身地によって色が異なる。アーキウェル王国のマントの色は赤色だ。俺の刺繍は、氷の結晶をイメージしたものとなっている。うん、我ながらなかなか似合っているようだ。

俺は準備が整っていることを確認した後、髪を切るためにふたたび、王都へと繰り出した。
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