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第二章 初学院編

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※久しぶりとなります。アース視点に戻ります。



「なぜだ! なぜ、ーーーが死ぬ必要があるんだ!」


「これが一番よい選択なのです。どの道、この国はもう終わりです。わたくしの命一つでこの争いが終わるのならば、最後の王族として喜んでこの命を差し出しましょう。」


「ふざけるな! 俺が、俺が必ず守るから。だから……。」


「もう十分守ってくれましたよ。そのような姿になってまでね。ありがとう、そしてごめんなさい。」


「待て、俺はまだ…」





これは、夢なのか? この2人の人物の事は知らないし、誰かの記憶の一部だろうか? それに、この男性の方の格好は和装だ。そして、額からツノが生えている。彼を表現するのに一番ふさわしい呼び名は、そう、鬼人だ。




うん? 今度は違う声が聞こえてきたな。



「主、しっかり食事をとってください。それが難しいならばせめて、食事をとってください。もう二週間になります。このままでは、主人の身体が保ちません。お願いですから、どうか……。」


「……眠れないんだ。目を瞑ると、あの時の血の感触や光景を鮮明に思い返してしまうんだ。それに、食事も喉を通らないんだ。こうして、アースのそばにいることが一番気が休まるんだ。」


「それは……。」




これは、聞き慣れた声だ。俺はどうやら、この世界でまだ生きていていいようだ。

嬉しいな……。だけど、聞き捨てならない言葉が聞こえたな。二週間、食事も睡眠もほとんどとっていないだと? 俺がこんな状態になっているせいで、みんなには随分と心配をかけてしまっているようだ。俺が起きなければ、俺の主が生命の危機に瀕してしまう。今すぐにでも、なんとしても起きなければならないようだ。

 





ーー






「殿下、軽食だけでもどうッスか。俺たちも一緒に食べるッスから。」


「ありがとう。だけど、胃に食事を入れたくないんだ。気分が悪くなりやすくなるし、それに空腹時の方が気が紛れるんだ。だから、アースが目覚めるまでは食事は」


「……キ、キル。食事はしっかり取らないとダメだよ。それから、睡眠もね。」



俺はそういった後、ゆっくりと目を開けた。大きな声は出せないし、目を開くとしばらく浴びていなかった光で目が眩む。少し目が光に慣れてくるとそこには、驚いた顔でかつ涙を流すみんなの姿が見えた。



「えーと、おはようでいいかな? 心配をかけてしまって、本当にごめんね。」


「「「「アース!」」」」


「すぐに人を呼んでくるッス!」


「いや待て、ジール。今は夜中だし、アースも起きたばっかりだから人があまりくれば疲れるだろう。ザール様に知らせるだけにしといて、明日みんなに伝えようぜ。」


「確かにそのとおりッスね。了解ッス。父上に報告してくるッス!」



ジールはそういうと、軽快な足取りで部屋を飛び出していった。





ジールは本当にすぐに戻ってきた。そう、ジールが二人で戻ってきたのだ。


「アース、こちらは俺の父上ッス。血液回復魔法で、アースを回復させたッス。」


「お初にお目にかかります、アース様。その節は妹と殿下の名誉を回復してくださり、本当にありがとうございました。ご気分はいかがでしょうか?」


ジールの父上だと……? ジールと兄弟と言われても何ら不思議ではないくらいの童顔だ。これで二児の父で現公爵で外務大臣だというのだから、一種の詐欺だな。



「お初にお目にかかります。アースと申します。気分は大丈夫ですし、痛みも特にありません。本当にありがとうございます。」


「いえいえ、僕も安心いたしました。栄養を補給した方がよろしいかと思いますが、何か食べられそうですか?」


「ありがとうございます。では、お腹に優しそうなものを少しだけいただきたいですね。」


「かしこまりました。すぐに用意させますね。」


あ、そうだ。1人で食べるのもなんだし、キルもほとんど食べてないらしいから、せっかくだから一緒に食べようか。側近のみんなは食べたのだろうか?



「あの、少し待っていただいてもよろしいでしょうか? キルもほとんど食事を取ってないんだよね? 食べられそうなら、一緒にどうかな?」


俺がそういうと、キルは一瞬のためらいを見せた後、首を横に振った。うーん、遠慮しているのかな? キルとまだ話せていないから、食べながらゆっくりと話したいんだけどな。それに、ちょっと強引にでも食べて眠ってもらわないと、顔色からして早々に倒れてしまうと思う。


「キル、一緒に食べよう。キルも食べないとダメだよ。」


「……わ、わかった。」


「うん、ありがとう。他のみんなは……キルと同じであまり食べてもないし、眠ってもいないみたいだね。今日はここで、みんなでたべてそして寝ようか。うん、そうしよう。」



「では、その様に致しましょう。それでは、僕はこれで失礼しますね。殿下と側近の皆さんで、積もる話もあるでしょうから。」


ザール様は自身の側近に素早く指示を出した後に、そういって退出して行った。気を遣ってくださって、ありがとうございます。少しすると、メイドが十数人やってきて俺たち五人分の食事の用意やら、寝台の準備を始めた。











ーー








さてと、ものの数分で準備が完了してしまった。俺はまだ起き上がるのが難しいということで、ベットの上で食事をとることになった。俺を気遣ってか、みんなも俺の周りで食事をとってくれるようだ。



「俺が強引に、食事や寝台を準備してしまったけど大丈夫だったかな? 大丈夫そうなら、早速食べようか。」



俺がそういいながら、みんなの方を向くと、みんなは呆気にとられたような顔をしていた。なぜ、みんなはポカーンとしているのだろうか? 確かに、メイドの皆さんの迅速なセッティングには驚いたけど……。



「えーと、みんなどうしたのかな? 俺、何か変なことをしたかな?」

「い、いや、さすがだなと思っただけなんだ。」
「そうッスね! そんな感じッス。」
「……ある意味本当にすごいな。」


え? なに、なんだよ! 俺、そんな変なことをしたかな? 側近組は遠い目をしながら、微笑んでいた。一方キルはというと、俯いて泣きそうな顔をしていた。
 



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