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第二章 初学院編
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「アース………? アース!」
俺が倒れるとキルがすぐに、俺を抱きかかえた。その手はとても震えているように思える。背中が熱いな。傷の影響や血が流れ出ているためだろう。
「すぐに止血を。主、アースの背中を俺の方に向けてください。………主? 主、しっかりしてください!」
ローウェルがそういうも、キルは手を震わすだけで茫然としていた。一刻を争うとわかっていたローウェルは、キルから俺を奪い取るようにして俺の背中を自分の服で圧迫し始めた。
「ヒャッヒャッヒャヒャッヒャッヒャヒャッヒャッヒャ。白髪ガ展開シテイタ魔力ハ、周囲ヲ探知スルモノダロ? ソコニイルヤツハ、透明化ト気配遮断ガ使エル隠密ニ長ケタ魔物ダ。オマエテイドノ探知ニハヒッカカラナイノダ。ヒャッヒャッ。」
そんな能力を持っている奴がいるとは、俺の想像力が足りなかったな。魔力の反応からして、この気色の悪い爬虫類もA級だ。ナレハテといいゴリラといい、特殊な能力を持ったA級が勢ぞろいしているようだ。
「無意味ナ抵抗ゴクロウ。一番強イ白髪ガ戦闘不能トナリ、全体ノ士気モサガッテイルヨウダ。ソレダケデハナク、白髪ガ精神的支柱モ担ッテイタノカ? マアドチラニシロ、我々ガ勝ツノハ最初カラキマッテイタコトダ。ダマッテ食ワレ、辱メラレ絶望シロ、人間。ヒャッヒャッヒャヒャッヒャッ」
ナレハテを筆頭に、周りにいるすべての魔物が俺たちを嘲るように笑い出した。キルは、そして側近のみんなは完全に戦意喪失したようで、その場で茫然としていた。
………ここは、俺の最後の役目のようだな。
「………キル、俺の最後の役目のために力を貸してくれる? 俺の肩を支えてほしい。」
「………いや、それよりもこの血を………」
「お願い。」
俺がそういうと、キルは泣きながら俺の肩を支えてくれた。ごめんね、俺が必ず守るから。支えてくれて、ありがとう。
「人が絶望している姿で笑えるなんて、獣どころか畜生以下だな。」
すると、魔物たちは笑うのをやめて、シ―ンとあたりが静まり返った。そして、ナレハテが首をかしげて、嘲るような表情を浮かべた。
「畜生以下ダト………? ソレハオマエタチノホウダロ。コレカラ我々ノ餌ニナルンダ。アー、ソッチノ赤髪ハコレカラ種馬トナリ玩具ニナルノダ。ヨッポド家畜ラシイナ。ヒャッヒャッ」
「黙れ。その薄汚い口で、俺の大切な仲間のことを口にするな。………それから、みんなは絶対に俺が守る。」
「………ホウ? 死ニカケノオマエニ、イッタイナニガデキルノダ? ソコノ泣クダケノオ荷物タチヲドウヤッテ守ノダ。マッタク、人間トハ口ダケガ達者ナ生キ物ダナ。ヒャッヒャッ」
ナレハテがそういうと、魔物たちは再び嘲るように笑い始めた。キルたちの方を見ると、全員が涙を流していた。
「………確かに、俺達は今回は負けた。それは認めるよ。だけど、お前たちは人間をナメすぎだ。人は、負けから成長する生き物だ。今回負けたキルたちは、次はお前たちに勝つと俺は信じている。それから、人の想いの力というものをお前たちはまだ知らないんだ。凌辱するばかりのお前たちに、理解しろとは言わないけどな。」
「想イノ力ダト? 馬鹿馬鹿シイ。俺ニ言葉ヲ教エサセラレタアノ男ハ、女ノコトヲ思い続ケテイタヨウダガ、結局ハ死ンダゾ? ソレニ、次ハ勝ツト信ジテイルダト? ………オマエハ相当頭ガ悪イヨウダナ。次ナンテ、オマエラニハナイ。オマエタチハ、ココデオワリダ。」
「その次を、俺がつくると言っているんだ。俺の想いをナメるなよ、魔物ども。」
俺がそういうと、キルが俺の手を握って泣きながら訴えてきた。俺の手を握る手は、かなりふるえている。
「………アース、もうしゃべらないでくれ。血が、血が止まらないんだ………。」
俺の意識もほとんどなくなってきたな………。だけど、最後まで俺は役目を全うするんだ。俺はほとんどなくなってきた握力で、キルの手をしっかりと握り返して微笑んだ。
「ごめんね、キル。………ありがとう。」
この状況で、上級魔法を悠長にローウェルに教えてもらっている時間はない。この最悪な状況を一気に打開するためには、もうあれしかない。………そう、俺の残された最後の属性の召喚魔法だ。
前に俺の血で試したときには成功しなかった。だけど、その時に少し反応があったのだ。ということは、方向性は間違っていないはずだ。その時に成功しなかったのは、何かしらの条件が足りなかったと考えられる。その条件について正解はわからないけど、今試せるものがある。それは、血の量だ。あのときは血が少なすぎて成功しなかったのかもしれないけど、今ならいやでも大量の血が流れている。そして今回は血だけではなく、俺の尽きかけの命も代償に加えてやる。今なら、魔物どもも完全に勝利を確信して油断している。
………絶対に成功させてやる。俺は大きく息を吸い込んだ。
「俺のすべてを代償にくれてやる。だから、この状況を打開できるのならだれでもいい! 俺の呼びかけに応えてくれ!」
その瞬間、何かがずれた感覚があった。だけど、ずれただけであと少し何か足りないようだ。あと一歩、足りないそんな感覚に襲われた。
なんだ、何が足りないんだ。俺に出せるすべてを代償に出すと言ったんだ、これ以上何を………。
その瞬間、キルの胸元が赤く光り出した。そして、指輪がふわりと自然に宙に浮かんだ。これは………指輪から魔力が流れ込んでくるのを感じる。指輪から流れ込んでくるということは、ヴィーナ様の魔力のようだ。そうか、足りなかったのは俺の魔力の残量だったのか………。数日連続使用した魔力展開による感知や、今回の戦闘によって俺の魔力は相当量が削れてしまっていたようだ。
ヴィーナ様。あの時の約束を果たしてくださり、ありがとうございます。必ず、皆を守ります。俺は受け取った魔力を展開した。
「オイ、オマエナニヲヤッテイルンダ? ………スグニ白髪ヲ殺セ!」
ナレハテの怒号で、魔物たちが一斉に襲い掛かってきた。すると、何かが開いたような感覚に襲われた。そして、ナニカが現れた。
「退屈しのぎにちょうどいいと思い、久しぶりにこちらに来たはいいけど、死にかけじゃねーかよぉ? ちょっと様子見のつもりだったが、すぐにこちらを去ることになりそうだなぁ。」
もうほとんどよく見えないけど、よくしゃべる何かなのはわかった。とにかく、この状況を打開できる奴だと信じて最後の命令を出して俺の仕事は終了だ。
「………主として最初で最後の命令だ。この場にいる魔物をすべて殲滅し、ここにいる俺たちを必ず生きて王都まで連れて行ってくれ。………よろしく頼むな。」
「は? なんで俺がお前なんかの………」
何やらごちゃごちゃと言っているようだけど、俺にはもう時間がないようだ。召喚魔法の主従関係がどうなっているかはわからないけど、命令の拘束力とナニカの責任感を信じるしかなさそうだ。
俺が倒れるとキルがすぐに、俺を抱きかかえた。その手はとても震えているように思える。背中が熱いな。傷の影響や血が流れ出ているためだろう。
「すぐに止血を。主、アースの背中を俺の方に向けてください。………主? 主、しっかりしてください!」
ローウェルがそういうも、キルは手を震わすだけで茫然としていた。一刻を争うとわかっていたローウェルは、キルから俺を奪い取るようにして俺の背中を自分の服で圧迫し始めた。
「ヒャッヒャッヒャヒャッヒャッヒャヒャッヒャッヒャ。白髪ガ展開シテイタ魔力ハ、周囲ヲ探知スルモノダロ? ソコニイルヤツハ、透明化ト気配遮断ガ使エル隠密ニ長ケタ魔物ダ。オマエテイドノ探知ニハヒッカカラナイノダ。ヒャッヒャッ。」
そんな能力を持っている奴がいるとは、俺の想像力が足りなかったな。魔力の反応からして、この気色の悪い爬虫類もA級だ。ナレハテといいゴリラといい、特殊な能力を持ったA級が勢ぞろいしているようだ。
「無意味ナ抵抗ゴクロウ。一番強イ白髪ガ戦闘不能トナリ、全体ノ士気モサガッテイルヨウダ。ソレダケデハナク、白髪ガ精神的支柱モ担ッテイタノカ? マアドチラニシロ、我々ガ勝ツノハ最初カラキマッテイタコトダ。ダマッテ食ワレ、辱メラレ絶望シロ、人間。ヒャッヒャッヒャヒャッヒャッ」
ナレハテを筆頭に、周りにいるすべての魔物が俺たちを嘲るように笑い出した。キルは、そして側近のみんなは完全に戦意喪失したようで、その場で茫然としていた。
………ここは、俺の最後の役目のようだな。
「………キル、俺の最後の役目のために力を貸してくれる? 俺の肩を支えてほしい。」
「………いや、それよりもこの血を………」
「お願い。」
俺がそういうと、キルは泣きながら俺の肩を支えてくれた。ごめんね、俺が必ず守るから。支えてくれて、ありがとう。
「人が絶望している姿で笑えるなんて、獣どころか畜生以下だな。」
すると、魔物たちは笑うのをやめて、シ―ンとあたりが静まり返った。そして、ナレハテが首をかしげて、嘲るような表情を浮かべた。
「畜生以下ダト………? ソレハオマエタチノホウダロ。コレカラ我々ノ餌ニナルンダ。アー、ソッチノ赤髪ハコレカラ種馬トナリ玩具ニナルノダ。ヨッポド家畜ラシイナ。ヒャッヒャッ」
「黙れ。その薄汚い口で、俺の大切な仲間のことを口にするな。………それから、みんなは絶対に俺が守る。」
「………ホウ? 死ニカケノオマエニ、イッタイナニガデキルノダ? ソコノ泣クダケノオ荷物タチヲドウヤッテ守ノダ。マッタク、人間トハ口ダケガ達者ナ生キ物ダナ。ヒャッヒャッ」
ナレハテがそういうと、魔物たちは再び嘲るように笑い始めた。キルたちの方を見ると、全員が涙を流していた。
「………確かに、俺達は今回は負けた。それは認めるよ。だけど、お前たちは人間をナメすぎだ。人は、負けから成長する生き物だ。今回負けたキルたちは、次はお前たちに勝つと俺は信じている。それから、人の想いの力というものをお前たちはまだ知らないんだ。凌辱するばかりのお前たちに、理解しろとは言わないけどな。」
「想イノ力ダト? 馬鹿馬鹿シイ。俺ニ言葉ヲ教エサセラレタアノ男ハ、女ノコトヲ思い続ケテイタヨウダガ、結局ハ死ンダゾ? ソレニ、次ハ勝ツト信ジテイルダト? ………オマエハ相当頭ガ悪イヨウダナ。次ナンテ、オマエラニハナイ。オマエタチハ、ココデオワリダ。」
「その次を、俺がつくると言っているんだ。俺の想いをナメるなよ、魔物ども。」
俺がそういうと、キルが俺の手を握って泣きながら訴えてきた。俺の手を握る手は、かなりふるえている。
「………アース、もうしゃべらないでくれ。血が、血が止まらないんだ………。」
俺の意識もほとんどなくなってきたな………。だけど、最後まで俺は役目を全うするんだ。俺はほとんどなくなってきた握力で、キルの手をしっかりと握り返して微笑んだ。
「ごめんね、キル。………ありがとう。」
この状況で、上級魔法を悠長にローウェルに教えてもらっている時間はない。この最悪な状況を一気に打開するためには、もうあれしかない。………そう、俺の残された最後の属性の召喚魔法だ。
前に俺の血で試したときには成功しなかった。だけど、その時に少し反応があったのだ。ということは、方向性は間違っていないはずだ。その時に成功しなかったのは、何かしらの条件が足りなかったと考えられる。その条件について正解はわからないけど、今試せるものがある。それは、血の量だ。あのときは血が少なすぎて成功しなかったのかもしれないけど、今ならいやでも大量の血が流れている。そして今回は血だけではなく、俺の尽きかけの命も代償に加えてやる。今なら、魔物どもも完全に勝利を確信して油断している。
………絶対に成功させてやる。俺は大きく息を吸い込んだ。
「俺のすべてを代償にくれてやる。だから、この状況を打開できるのならだれでもいい! 俺の呼びかけに応えてくれ!」
その瞬間、何かがずれた感覚があった。だけど、ずれただけであと少し何か足りないようだ。あと一歩、足りないそんな感覚に襲われた。
なんだ、何が足りないんだ。俺に出せるすべてを代償に出すと言ったんだ、これ以上何を………。
その瞬間、キルの胸元が赤く光り出した。そして、指輪がふわりと自然に宙に浮かんだ。これは………指輪から魔力が流れ込んでくるのを感じる。指輪から流れ込んでくるということは、ヴィーナ様の魔力のようだ。そうか、足りなかったのは俺の魔力の残量だったのか………。数日連続使用した魔力展開による感知や、今回の戦闘によって俺の魔力は相当量が削れてしまっていたようだ。
ヴィーナ様。あの時の約束を果たしてくださり、ありがとうございます。必ず、皆を守ります。俺は受け取った魔力を展開した。
「オイ、オマエナニヲヤッテイルンダ? ………スグニ白髪ヲ殺セ!」
ナレハテの怒号で、魔物たちが一斉に襲い掛かってきた。すると、何かが開いたような感覚に襲われた。そして、ナニカが現れた。
「退屈しのぎにちょうどいいと思い、久しぶりにこちらに来たはいいけど、死にかけじゃねーかよぉ? ちょっと様子見のつもりだったが、すぐにこちらを去ることになりそうだなぁ。」
もうほとんどよく見えないけど、よくしゃべる何かなのはわかった。とにかく、この状況を打開できる奴だと信じて最後の命令を出して俺の仕事は終了だ。
「………主として最初で最後の命令だ。この場にいる魔物をすべて殲滅し、ここにいる俺たちを必ず生きて王都まで連れて行ってくれ。………よろしく頼むな。」
「は? なんで俺がお前なんかの………」
何やらごちゃごちゃと言っているようだけど、俺にはもう時間がないようだ。召喚魔法の主従関係がどうなっているかはわからないけど、命令の拘束力とナニカの責任感を信じるしかなさそうだ。
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