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第二章 初学院編

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早いもので冬休みに突入していた。俺とジールとローウェルは再び、バルザンス公爵邸で合宿を行っていた。俺は夏からの課題である、展開した魔力の有効活用法を模索していた。俺の考えている利用方法は主に二つだ。まず展開した魔力内での感知、そして二つ目は、俺だけに見える銃を打つ時にでるようなレイザーの創出だ。これで魔法を当てる制度がぐんと上がるし、当てるイメージもしやすくなる。



「アース様は引き続き、魔力展開の活用の訓練をいたしましょう。アース様の利用方法はどちらかというと補助寄りの利用方法なので、魔法自体の訓練もかかさずに行っていきましょう。」

「承知しました、カーナイト様。引き続き、ご指導のほどよろしくお願いいたします。」


「もちろんですとも。そういえば、来週は陛下より召喚命令が出ているのですよね?」



うん? 召喚命令………? 確かにキルを通じてアルベルト殿下から、「悪魔の呪い」の件で何かあるとは聞いていたけど、国王からの召喚命令だとは聞いていない。そういうのは紙面かなにかで正式に召喚命令がなされるものだと思うから、きっとカーナイト様の勘違いだろう。俺は崩れそうな顔を何とか貴族スマイルに変えて、言葉を発した。



「………えーと、アルベルト殿下からお話は伺っていましたが、陛下による召喚命令だとは聞かされていません。」

俺がそういうと、カーナイト様も不思議そうな表情を浮かべて首をかしげていた。いったい誰だろうか、報連相ができていない人は? どこかで情報が混在してしまっているに違いない、俺は国王様から召喚されるようなたいそうなことはしていないはずだ。

すると、休憩に行っていたジールが屋敷の方から何やら急いでこちらに向かってきた。よく見ると、手紙のようなものを持っているようだ。………嫌な予感がする。



「アース、大変ッス! 国王様からのお手紙で、召喚命令が出されているッスよ! 何をやらかしたんッスか!」



………うがーーーー!! カーナイト様の言っていた通りではないか! 国の重鎮であるカーナイト様は事前に知っていたのだろう。アルベルト殿下め………知っていたのなら事前に言っておいてほしかった。今度会ったら文句の一つや二つ言わなければ気が済まない。



「こら、ジール! アース様がやらかすわけがないだろ! 召喚命令が、直接本人を咎めるだけのものではないだろうに………。アース様、そう身構えなくとも大丈夫です。「悪魔の呪い」の一件はこのアーキウェル王国だけではなく、他の国にも大きな衝撃を与えるものでした。各国で調査が行われ、アース様の仮説が正しいという結論に至りました。そういう経緯で、今回の召喚命令はアース様の功績をたたえるためのものです。」




待て、大事になっているじゃないかよ………。国王様だけでも大事なのに、他の国にも影響を与えているなんて………。

だけど、それによって魔力過多で苦しむ多くの子供たちが救われたのならよかった。あれはとてつもなく苦しいからな………。



「ご説明ありがとうございます、カーナイト様。しかし私はあくまで仮定の話をしただけで、実際にお調べいただいたのはアルベルト殿下を中心とした他の皆さんだと思います。………私の功績としてたたえられてもよろしいのでしょうか?」



俺がそういうと、カーナイト様はふっと優しい笑みを浮かべた。ジールにも少しはこういう表情を浮かべて接してほしいと思う。カーナイト様は、結構身内には厳しいようだけど………。



「アース様、一を百にすることよりもゼロから一を作り出す方が難しいことです。魔力展開やその有効活用方法を模索したアース様でしたら、お分かりいただけるでしょう。」



ゼロから一を作り出す方が難しいか………。俺が発見したことが何よりもまず重要なことだったということか。それを発見できたのは、この体に俺が転生したことやキルがこの腕時計を贈ってくれたことなど、様々な幸運が重なってことによるものだ。まあこのようなことを国王の御前でべらべらとしゃべっても不興を買うばかりだと思うから、おとなしくしていよう。











――









さて今日はいよいよ、国王様の召喚命令の日である。王城に着くと前のようにキルが待っていてくれた。王城と言うだけで身構えてしまうけど、やっぱりキルがいると安心するな。




「おはよう、アース。緊張しているか?」


「おはよう、キル。緊張しかしてないよ………まさか国王様にお会いすることになるなんて………。アルベルト殿下もなかなか緊張するけど、国王様はそれ以上だと思うと胃が痛いよ。」


「アースは兄上に対して緊張していたのか? まったくそのようには見えなかったが………。まあそれについてはおいておくとして、父上もとい国王に相対するというのはやはり緊張して当然だと思う。だけど俺がついているから、安心してくれ。」


「うん、ありがとう。今日はもちろんだけど、いつも頼りにしているよ。」



俺が笑顔でそう言うと、キルは何か言いたそうな顔をした後に、すぐに後ろを向いて「………早くいくぞ」といい、歩き出してしまった。………キルも緊張しているのかな? とにかく、遅れないようにすぐにキルを追いかけよう。






さてと、俺はキルと一緒に王の間の扉の前まで来た。扉はすごく豪華で感心するし、王の間の扉として当然だと思うけど、今の俺にとっては入りにくさを高めている厄介な代物である。今から国王様に会うわけだけど、緊張すると同時にキルの父親だから見てみたいという怖いもの見たさな気持ちもある。緊張を解すために、キルと少し小話をしよう。



「キル、国王様はキルたち3兄弟の仲だったら誰に一番似ていらっしゃるの?」


「い、いきなりだな………。まあ今からお会いするわけだし、事前情報があってもいいか。」



キルはそういうと、国王様の容姿をしっかりと思い出すかのようにうつむいた。家族でも食事をすることがあると前に言っていたから、関係が良くなっていることは確かだ。国王様は少々親ばかだというくだりが前にあったから、穏やかそうな顔をしているのだろうか?

俺が国王様について色々な予想をしていると、キルから声がかかった。



「父上はだな、髪色は俺と兄上と同じく赤色をしている。瞳の色は、紫がかった赤色だ。俺たちの中で誰が一番似ているかということだが………正直、俺たちはまだ貴族院にすら入っていない子供だからあまり比較にならないんだ。だけど、強いて言えば兄上が似ていると思う。」



おー、なるほど。確かに俺たちの年齢ではまだ顔が幼すぎるから、三児の父である国王様のような大人とはあまり比較にならないな。強いて言えばアルベルト殿下に似ているということは、男前でかなりのイケメンだろう。少し楽しみになってきたおかげで、緊張が和らいだ気がする。



「教えてくれてありがとう、キル。おかげで緊張が少し和らいだよ。」


「そうか、それはよかった。じゃあそろそろ時間だ、準備はいいな?」


「うん、いつでも大丈夫だよ。」
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