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第二章 初学院編
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「じゃあせっかくだし、俺の話を聞いてほしいかな。………アースは、俺が文官であることに疑問を持ったことはあるか?」
え、結構いきなりだな。もっと別の話をいろいろしていくのかと思ったけど、ローウェルの話か………。でも確かに、キルたちは知っていても俺が知らないことはたくさんあるはずだ。
ローウェルが文官であることに疑問があるかないかでいえば、あるだ。ローウェルの父親は魔導士団副団長で、兄も確か優秀な魔導士だと聞いた。そのような魔導士家系で、文官を選んだのだ。あえて文官を選んだことには、何か事情があると思っていた。例えば、単純に文官が性に合っているという場合や逆に魔導士になるための魔力量が足りないことなどが考えられる。だけど、この事を質問するのは流石に憚られた。文官としてローウェルは優秀だと思うし、キルも優秀だと言っていた。俺があえて突っ込んだ質問をする必要はないと考えていた。しかしローウェルからその話を持ち出すということは、何かあるのだろう。俺はローウェルの問いに対して、ゆっくりと頷いた。
「………魔導士見習いを選ばなかった理由については、気になっていたかな。」
俺がそういうと、ローウェルは今まで見せたことのないような穏やかな笑みを浮かべて、そっと息を吐いた。
「俺はもともと魔導士見習いだったんだよ。………そう、アースが貴族院に編入してくる前の一年次までは、な。」
え? 俺は驚きのあまり歩くのをやめてローウェルを凝視してしまった。魔導士見習い、だった………? 騎士や魔導士が文官や側仕えに転向するケースは確かにある。それは主にけがなどが原因で戦うことができなくなった場合だ。だけど、ローウェルは目に見える限りけがを負っている様子もないし、魔法実技の授業もうけているはずだ。それならば、なぜ………? まさか、誰かに無理やり転向させられたということだろうか?
ローウェルは苦笑しながら、俺の背中を押した。ただでさえ遅い俺が、これ以上遅くなることを避けるために歩きながら話そうということだろう。俺は驚きで動けなかったけど、ローウェルが背中を押してくれたことによって何とか歩き出すことができた。
「なぜ、文官に転向したの? 魔法実技では確か、火を出していたよね? 目に見える範囲にもけがはないようだし、まさか、自分の意志ではないということ?」
俺の言葉にローウェルはゆっくりと首を振った。そして、手のひらに小さな火を出した。そうだ、こうして魔法を行使することができるのだ。しかし、再び思いもよらない発言が飛び出した。
「火とはこれのことか? 確かに火を出すことは可能だけど………これが最大火力なんだよ。それから、俺が文官に転向したのは俺の意志であり、その理由は俺の愚かさによるものだ。」
手のひらに収まるほどの火が最大火力………? それならば文官に転向したのも一応は納得がいく。しかし、ローウェルの愚かさとはどういうことだろうか? ということはもともと、先天的に魔力量が少ないというわけではないということで、俺が編入する前に後天的に何かあったということだ。
「………俺が編入する前に、何があったの?」
「アースは、初学院では初級魔法しか使ってはいけないということは知っているよな? 俺はそれを破ってしまったんだよ。その結果は………言わなくてもわかるな?」
魔力回路の破損………。初学院に通う年齢の俺たちの魔力回路と体では、中級魔法以上の負荷に耐えることができない。ローウェルが今の俺たちの年齢よりも幼い時に中級魔法以上の魔法を使ったということは、ローウェルの魔力回路はもう………。
「なぜ、そのような無茶を………。」
「認めてもらいたかったんだよ、父上に………。俺はいつも優秀な兄上と比較されていたからな。それに、父上は魔力量が絶対だと考えている。先天的な魔導士の素質のみを重視しているんだ。その点で、俺は魔力量が少なくギリギリ魔導士になれるかというレベルだ。いくら努力しようとも魔力量の少ない俺は、父上に認めてもらえないのだ。今はそれを受け入れられるが、まだ初学院に入学したばかりのころの俺はそれを受け入れることができなかった。だから、初学院生でありながら上級魔法を発動できれば父上に認めてもらえると思って………。」
ローウェルはそこまで言うと、過去の自分を………今の自分をさげすむように笑った。初学院で上級魔法の詠唱を教えられることはまずないが、魔導士の家系ならその類の本が家にあってもおかしくない。幼いローウェルは父に認めてもらおうと、一所懸命調べたのだろう。誰にも見つからないように………。
確かに禁止されているにもかかわらず、上級魔法を行使したローウェルは考えが足りなかったと言わざるを得ない。魔法基礎でも最初に習うことだし、俺も魔法実技の授業で最初に言われたことだから、ローウェルたちも最初の授業や家庭内で言われているはずだ。
だけど、潜在魔力量で魔導士を判断するローウェルの父親の考えはいかがなものか? 魔力量が格別に多い俺が言うのは、嫌味に聞こえるかもしれない。だけど、戦い方や魔法の使い方など当人の資質、努力も大きくかかわってくる。魔力量が多いだけで属性が乏しかったり、俺のように体が弱かったり、魔法制御が得意でなかったりする場合があるのがその例だ。ただ幼いローウェルにとっては、副団長である父の言うことが絶対だったのだろう。間違いを犯して、少し成長した今だからそう考えられるのかもしれない。幼かったローウェルにそのすべての責任があるとは思えない。
「魔力回路の回復は試みたの? 魔力回路の回復がほとんど不可能なのは知っているけど、少しでも回復すれば………。」
「回復した結果が、この手で収まる火だよ。六歳の体で上級魔法の詠唱を行ったんだ。俺の魔力回路は上級魔法を発動することなく、その負荷に耐えられずほとんど壊れてしまったんだ。」
うっ………。俺はローウェルにかける言葉を失ってしまった。魔力量が絶対と考える副団長は間違っていると俺は思う。だけど、魔力量が格別に多い俺が言うのは嫌味に捉えられるかもしれないし、それにそれを言ったところで………。
ローウェルは俺の言いたいことが分かったのか、ゆっくりと首を振った。
「………夏休み、俺はアースとジール二人の訓練を密かに見ていたんだ。俺は魔導士の訓練やそれに関連することを避けていた。だけど、初心者のアースが前々団長のカーナイト様のもとでどのような訓練をするのかが気になったのと同時に、主の役に立とうと結果を急ぐアースが俺のように間違いを犯すのを事前に止めるために合宿への参加を申し出たんだ。だけど、二人の訓練を見て俺は嫌でも実感したよ。魔力量が恵まれている二人ですら、あんなにボロボロになるまでの訓練が必要なんだ。魔力量が絶対という考えには、一理はあるけれど、それだけではないことを嫌でも実感させられたよ。俺が間違いを犯す前にこのことに気づけていたらよかったのにな………。」
ローウェルはそういい終わると、遠くの方を見つめた。そして、俺から顔を背けてしきりに目元を拭いていた。俺は何も言うことができずに、ただローウェルにハンカチを渡すことしかできなかった。
え、結構いきなりだな。もっと別の話をいろいろしていくのかと思ったけど、ローウェルの話か………。でも確かに、キルたちは知っていても俺が知らないことはたくさんあるはずだ。
ローウェルが文官であることに疑問があるかないかでいえば、あるだ。ローウェルの父親は魔導士団副団長で、兄も確か優秀な魔導士だと聞いた。そのような魔導士家系で、文官を選んだのだ。あえて文官を選んだことには、何か事情があると思っていた。例えば、単純に文官が性に合っているという場合や逆に魔導士になるための魔力量が足りないことなどが考えられる。だけど、この事を質問するのは流石に憚られた。文官としてローウェルは優秀だと思うし、キルも優秀だと言っていた。俺があえて突っ込んだ質問をする必要はないと考えていた。しかしローウェルからその話を持ち出すということは、何かあるのだろう。俺はローウェルの問いに対して、ゆっくりと頷いた。
「………魔導士見習いを選ばなかった理由については、気になっていたかな。」
俺がそういうと、ローウェルは今まで見せたことのないような穏やかな笑みを浮かべて、そっと息を吐いた。
「俺はもともと魔導士見習いだったんだよ。………そう、アースが貴族院に編入してくる前の一年次までは、な。」
え? 俺は驚きのあまり歩くのをやめてローウェルを凝視してしまった。魔導士見習い、だった………? 騎士や魔導士が文官や側仕えに転向するケースは確かにある。それは主にけがなどが原因で戦うことができなくなった場合だ。だけど、ローウェルは目に見える限りけがを負っている様子もないし、魔法実技の授業もうけているはずだ。それならば、なぜ………? まさか、誰かに無理やり転向させられたということだろうか?
ローウェルは苦笑しながら、俺の背中を押した。ただでさえ遅い俺が、これ以上遅くなることを避けるために歩きながら話そうということだろう。俺は驚きで動けなかったけど、ローウェルが背中を押してくれたことによって何とか歩き出すことができた。
「なぜ、文官に転向したの? 魔法実技では確か、火を出していたよね? 目に見える範囲にもけがはないようだし、まさか、自分の意志ではないということ?」
俺の言葉にローウェルはゆっくりと首を振った。そして、手のひらに小さな火を出した。そうだ、こうして魔法を行使することができるのだ。しかし、再び思いもよらない発言が飛び出した。
「火とはこれのことか? 確かに火を出すことは可能だけど………これが最大火力なんだよ。それから、俺が文官に転向したのは俺の意志であり、その理由は俺の愚かさによるものだ。」
手のひらに収まるほどの火が最大火力………? それならば文官に転向したのも一応は納得がいく。しかし、ローウェルの愚かさとはどういうことだろうか? ということはもともと、先天的に魔力量が少ないというわけではないということで、俺が編入する前に後天的に何かあったということだ。
「………俺が編入する前に、何があったの?」
「アースは、初学院では初級魔法しか使ってはいけないということは知っているよな? 俺はそれを破ってしまったんだよ。その結果は………言わなくてもわかるな?」
魔力回路の破損………。初学院に通う年齢の俺たちの魔力回路と体では、中級魔法以上の負荷に耐えることができない。ローウェルが今の俺たちの年齢よりも幼い時に中級魔法以上の魔法を使ったということは、ローウェルの魔力回路はもう………。
「なぜ、そのような無茶を………。」
「認めてもらいたかったんだよ、父上に………。俺はいつも優秀な兄上と比較されていたからな。それに、父上は魔力量が絶対だと考えている。先天的な魔導士の素質のみを重視しているんだ。その点で、俺は魔力量が少なくギリギリ魔導士になれるかというレベルだ。いくら努力しようとも魔力量の少ない俺は、父上に認めてもらえないのだ。今はそれを受け入れられるが、まだ初学院に入学したばかりのころの俺はそれを受け入れることができなかった。だから、初学院生でありながら上級魔法を発動できれば父上に認めてもらえると思って………。」
ローウェルはそこまで言うと、過去の自分を………今の自分をさげすむように笑った。初学院で上級魔法の詠唱を教えられることはまずないが、魔導士の家系ならその類の本が家にあってもおかしくない。幼いローウェルは父に認めてもらおうと、一所懸命調べたのだろう。誰にも見つからないように………。
確かに禁止されているにもかかわらず、上級魔法を行使したローウェルは考えが足りなかったと言わざるを得ない。魔法基礎でも最初に習うことだし、俺も魔法実技の授業で最初に言われたことだから、ローウェルたちも最初の授業や家庭内で言われているはずだ。
だけど、潜在魔力量で魔導士を判断するローウェルの父親の考えはいかがなものか? 魔力量が格別に多い俺が言うのは、嫌味に聞こえるかもしれない。だけど、戦い方や魔法の使い方など当人の資質、努力も大きくかかわってくる。魔力量が多いだけで属性が乏しかったり、俺のように体が弱かったり、魔法制御が得意でなかったりする場合があるのがその例だ。ただ幼いローウェルにとっては、副団長である父の言うことが絶対だったのだろう。間違いを犯して、少し成長した今だからそう考えられるのかもしれない。幼かったローウェルにそのすべての責任があるとは思えない。
「魔力回路の回復は試みたの? 魔力回路の回復がほとんど不可能なのは知っているけど、少しでも回復すれば………。」
「回復した結果が、この手で収まる火だよ。六歳の体で上級魔法の詠唱を行ったんだ。俺の魔力回路は上級魔法を発動することなく、その負荷に耐えられずほとんど壊れてしまったんだ。」
うっ………。俺はローウェルにかける言葉を失ってしまった。魔力量が絶対と考える副団長は間違っていると俺は思う。だけど、魔力量が格別に多い俺が言うのは嫌味に捉えられるかもしれないし、それにそれを言ったところで………。
ローウェルは俺の言いたいことが分かったのか、ゆっくりと首を振った。
「………夏休み、俺はアースとジール二人の訓練を密かに見ていたんだ。俺は魔導士の訓練やそれに関連することを避けていた。だけど、初心者のアースが前々団長のカーナイト様のもとでどのような訓練をするのかが気になったのと同時に、主の役に立とうと結果を急ぐアースが俺のように間違いを犯すのを事前に止めるために合宿への参加を申し出たんだ。だけど、二人の訓練を見て俺は嫌でも実感したよ。魔力量が恵まれている二人ですら、あんなにボロボロになるまでの訓練が必要なんだ。魔力量が絶対という考えには、一理はあるけれど、それだけではないことを嫌でも実感させられたよ。俺が間違いを犯す前にこのことに気づけていたらよかったのにな………。」
ローウェルはそういい終わると、遠くの方を見つめた。そして、俺から顔を背けてしきりに目元を拭いていた。俺は何も言うことができずに、ただローウェルにハンカチを渡すことしかできなかった。
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