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第一章 死ぬまでにしたい10のこと
39話 精神統一
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わたくしが自室に戻ると、エマがニマニマして、通してくれない。
「いったいなにがあったんですか?」
「それが……シリルがわたくしと婚約したいと……」
わたくしは頬が赤くなるのをうつむいて隠す。
「まぁ! まぁまぁまぁ!」
エマはわたくしの手をとって、踊り出す。
「よかったです!! シリル様なら、フェイト様を幸せにしてくださいます」
「そうなのです……だから困りました……」
わたくしはドレッサーに座って、ため息をもらす。鏡には余命わずかのわたくしが写る。
「あらっ。あんまり、乗り気ではないですか。もしかして、まだ……アラン殿下のことを……」
「あっ! それはまったくないです」
「そうですか。まぁ、シリル様の件は急な話ですしね。ゆっくり考えられては」
そういいながらも、エマはごきげんに鼻歌を口ずさみ、スキップして紅茶を入れた。
わたくしはドレッサーに向かって、悪役令嬢の顔を練習した。見下し、侮蔑した顔を作る。それが終わると、てのひらに悪役令嬢の【悪】の字を書いて、それを何度も飲み込んだ。
「うふふ。フェイト様。変顔の練習ですか? それとなにを食べた振りをしているのですか」
「違います! もうすぐ文化祭があるので、悪役令嬢の顔をマスターしなくてはなりません。それと、さらに強大な悪役令嬢となる為、悪の字を食し、力を蓄えています。本によると、一定の効果があるようです」
「ふむふむ。フェイト様は物知りですね。きっと上手くいきます!」
「そうだ。エマ、アレはまだ在庫はありますか?」
「ございます。お持ちしますね」
エマから受け取ったものをカバンにいれた。
「ありがとう。エマ、今日はさがってくださって大丈夫です」
イタムを机の上に乗せて、遊ぶ。ハンドリングして、好きなだけなでた。
あー。癒やされます。イタムとキスをして、わたくしは顔をこすりつけます。
イタムがわたくしにじゃれるなか、【死ぬまでにしたい10のこと】リストを微調整する。
1. 剣を習いにいくこと。貧民街にある「ジョージ護身術」に金貨10枚を持って、護身術を1ヶ月で習得する。※すでに前金支払い済。行かないと、こわーい師範代が取り立てに参ります。
2.余命のことは絶対にだれにも知られないこと。
3.悪役令嬢ヴァイオレットになりきる。人から嫌われることが難しいので、悪役令嬢の振りをして、これ以上関係性が良くならないように努める(変更!)
4.必ず病気の原因を突き止め、治療法を見つけだし、他の人が病気にならないようにする。
5.ノブレス・オブリージュ 公爵令嬢としての責務をいつもどおり果たす。
6.お父さまと弟の問題を解決する。
7.人前で決して泣かない。泣いてもなにも解決しないから。泣くときは1人で。
8.イタムを飼ってくれる優しい人を探す。
9.目に見える範囲の困っている人を助ける(new!)
10.わたくしの身代わりを立て、遠くに嫁いでもらう。人から嫌われることが上手くいかなかった代替案として。その為、わたくしのニセモノがいれば探すし、いなければそっくりさん、もしくは魔法でなんとかできないか、方法を探す。(new!)
10.を微調整する。
10.わたくしの身代わりを立て、マルクール王国で生き続けてもらう。照覧の魔女のわたくしが生きているだけで、マルクールを守ることができるのなら、わたくしがいなくなったあとも生きていると偽装する。その為、わたくしのニセモノがいれば探すし、いなければ魔法でなんとかできないか方法を探す。(new!)
いまでもわたくしはありありと思い出す。マデリンが言ってくれたこと。ジェイコブが城下町で言ってくれたこと。
どんな困難なことがあろうとも、やり遂げて見せる。
「ねー。イタム。頑張りましょうね!」
わたくしが顔を向けると、イタムがすり寄ってきた。
「ああー。この鱗の1枚に、わたくしはなりたい」
頬ずりして、イタムをなでた。
再び、イタムとともにドレッサーに座り、悪役令嬢の見下ろした顔の微調整をする。
「もうすこしあごを立てた方が、ヴァイオレット様の悪役令嬢に近づけるかしら。さらにもっとにらみをきかせてっと」
ずいぶんよくなった気がする。やはり眼光で射貫かなくては。
イタムに悪役令嬢顔を向けると、牙を剥いた。
「どうです? 怖いでしょう。わたくしの悪役令嬢顔は」
そっとなでると、イタムは気持ちよさそうに目を細める。
「もうすこしだけ、悪役令嬢の悪の字を飲んで、文化祭に備えましょう」
わたくしは悪の字を書いて、飲み込む。内から底知れぬ力を感じることができた。
ふふ、ふふふふふ。わたくしは笑いが止まらなかった。
イタムは首をかしげ、つぶらな瞳で見つめた。
「いったいなにがあったんですか?」
「それが……シリルがわたくしと婚約したいと……」
わたくしは頬が赤くなるのをうつむいて隠す。
「まぁ! まぁまぁまぁ!」
エマはわたくしの手をとって、踊り出す。
「よかったです!! シリル様なら、フェイト様を幸せにしてくださいます」
「そうなのです……だから困りました……」
わたくしはドレッサーに座って、ため息をもらす。鏡には余命わずかのわたくしが写る。
「あらっ。あんまり、乗り気ではないですか。もしかして、まだ……アラン殿下のことを……」
「あっ! それはまったくないです」
「そうですか。まぁ、シリル様の件は急な話ですしね。ゆっくり考えられては」
そういいながらも、エマはごきげんに鼻歌を口ずさみ、スキップして紅茶を入れた。
わたくしはドレッサーに向かって、悪役令嬢の顔を練習した。見下し、侮蔑した顔を作る。それが終わると、てのひらに悪役令嬢の【悪】の字を書いて、それを何度も飲み込んだ。
「うふふ。フェイト様。変顔の練習ですか? それとなにを食べた振りをしているのですか」
「違います! もうすぐ文化祭があるので、悪役令嬢の顔をマスターしなくてはなりません。それと、さらに強大な悪役令嬢となる為、悪の字を食し、力を蓄えています。本によると、一定の効果があるようです」
「ふむふむ。フェイト様は物知りですね。きっと上手くいきます!」
「そうだ。エマ、アレはまだ在庫はありますか?」
「ございます。お持ちしますね」
エマから受け取ったものをカバンにいれた。
「ありがとう。エマ、今日はさがってくださって大丈夫です」
イタムを机の上に乗せて、遊ぶ。ハンドリングして、好きなだけなでた。
あー。癒やされます。イタムとキスをして、わたくしは顔をこすりつけます。
イタムがわたくしにじゃれるなか、【死ぬまでにしたい10のこと】リストを微調整する。
1. 剣を習いにいくこと。貧民街にある「ジョージ護身術」に金貨10枚を持って、護身術を1ヶ月で習得する。※すでに前金支払い済。行かないと、こわーい師範代が取り立てに参ります。
2.余命のことは絶対にだれにも知られないこと。
3.悪役令嬢ヴァイオレットになりきる。人から嫌われることが難しいので、悪役令嬢の振りをして、これ以上関係性が良くならないように努める(変更!)
4.必ず病気の原因を突き止め、治療法を見つけだし、他の人が病気にならないようにする。
5.ノブレス・オブリージュ 公爵令嬢としての責務をいつもどおり果たす。
6.お父さまと弟の問題を解決する。
7.人前で決して泣かない。泣いてもなにも解決しないから。泣くときは1人で。
8.イタムを飼ってくれる優しい人を探す。
9.目に見える範囲の困っている人を助ける(new!)
10.わたくしの身代わりを立て、遠くに嫁いでもらう。人から嫌われることが上手くいかなかった代替案として。その為、わたくしのニセモノがいれば探すし、いなければそっくりさん、もしくは魔法でなんとかできないか、方法を探す。(new!)
10.を微調整する。
10.わたくしの身代わりを立て、マルクール王国で生き続けてもらう。照覧の魔女のわたくしが生きているだけで、マルクールを守ることができるのなら、わたくしがいなくなったあとも生きていると偽装する。その為、わたくしのニセモノがいれば探すし、いなければ魔法でなんとかできないか方法を探す。(new!)
いまでもわたくしはありありと思い出す。マデリンが言ってくれたこと。ジェイコブが城下町で言ってくれたこと。
どんな困難なことがあろうとも、やり遂げて見せる。
「ねー。イタム。頑張りましょうね!」
わたくしが顔を向けると、イタムがすり寄ってきた。
「ああー。この鱗の1枚に、わたくしはなりたい」
頬ずりして、イタムをなでた。
再び、イタムとともにドレッサーに座り、悪役令嬢の見下ろした顔の微調整をする。
「もうすこしあごを立てた方が、ヴァイオレット様の悪役令嬢に近づけるかしら。さらにもっとにらみをきかせてっと」
ずいぶんよくなった気がする。やはり眼光で射貫かなくては。
イタムに悪役令嬢顔を向けると、牙を剥いた。
「どうです? 怖いでしょう。わたくしの悪役令嬢顔は」
そっとなでると、イタムは気持ちよさそうに目を細める。
「もうすこしだけ、悪役令嬢の悪の字を飲んで、文化祭に備えましょう」
わたくしは悪の字を書いて、飲み込む。内から底知れぬ力を感じることができた。
ふふ、ふふふふふ。わたくしは笑いが止まらなかった。
イタムは首をかしげ、つぶらな瞳で見つめた。
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