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聖女
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俺もこの数ヶ月でかなりモンスター狩りに慣れたつもりだったが、まだまだ甘かった。
ステータスの値が百程度の群れにここまで追い込まれてしまった。
俺一人なら恐らくやられていただろう。
これが仮にシルバーウルフの群れなら完全に呑まれていた。
俺は、まだまだ弱い……
勇者の初期ステータスに並んだ事で少し浮かれていたのかもしれない。
明日からまた強くなる為にモンスターを狩らなければならない。
しばらく待っていると朱音が回復魔法を俺の左腕にかけてくれる。
これを奇跡と呼ぶのだろう。
左腕が淡い光に包まれると見る見るうちに火傷が回復して痛みも無くなってしまった。
以前見たのでなんとなくは分かっていたが実際に受けてみると、驚きしか無い。
「朱音、勇者より聖女を目指した方いいんじゃないか?」
あまりの奇跡に思わず心の声が口をついて出てしまった。
「えっ……」
「リュートさん知らないんですか? 朱音ちゃんは街の人達にはいつも聖女って呼ばれますよ」
「そ、蒼花ちゃん」
「ああ、そうだな。これは聖女の奇跡かもな」
「リュートさん……」
破壊と害悪しかもたらさない勇者にあって朱音は完全に異端。
いくら俺でもそのぐらい分かる。
人の為に働き街の人に好かれ、人を治し癒すスキルを使える聖女……
俺の仇である勇者でありながら、完全に俺が殺した奴らと対極に位置する存在。
街の人達も勇者にいい感情は抱いていないはずだ。それが勇者である朱音を聖女と呼び受け入れている。
なら俺はどうする?
左腕を奇跡で癒してくれた朱音を殺すのか?
勇者だから殺すのか?
朱音は勇者だが、俺の知っている勇者とは違う。
朱音を殺す事は、俺も勇者と同類に成り下がる事を意味している。
「どうしました? まだ痛みますか?」
「いや、もう大丈夫だ。助かった」
「はい! よかったです」
朱音が嬉しそうに俺の方を見て笑っている。
俺は悪たる勇者を殺したいのであってこれ自身が悪に染まってしまいたいわけでは無い。
悪に染まる覚悟はとっくに出来ているが、善良な女の子を殺す事は俺には出来ない。
例え勇者であっても朱音は聖女だ。
善良な朱音を殺す事は俺の存在意義まで殺す事に他ならない。
認めよう。朱音は悪では無い。俺の殺すべき対象では無い。
勇者だが俺の知っているあいつらとは根本的に違う。
自分の中で朱音の事を理解すると、それまでずっともやもやしていた感情が晴れた気がした。
だが蒼花の事はまだよく分からない。
本人はいい勇者だと言っていたが、スキルは攻撃系だけのようなので聖女では無いのは確定だろう。
もう少し観察してみなければ蒼花が殺すべき対象なのか判断がつかないのでとりあえず保留にしよう。
「リュートさ~ん。もうダメかと思ったのです。リュートさんのおかげで助かったのです。ですのでこの身はリュートさんに……」
「蒼花ちゃん! 何を言ってるんですか? ふざけてはダメですよ。リュートさんが困ってるじゃ無いですか」
「困ってなんか無いですよね。蒼花はあなたのものです。リュートさん」
「…………」
こいつ本当に勇者なのか?
これは、もう殺してしまった方がいいのか?
いやダメだ。
このふざけた感じでも一応お礼を言おうとしているのは分かる。
お礼を言って来た相手を容赦無く殺すのは鬼畜の所業。俺には無理だ。
ステータスの値が百程度の群れにここまで追い込まれてしまった。
俺一人なら恐らくやられていただろう。
これが仮にシルバーウルフの群れなら完全に呑まれていた。
俺は、まだまだ弱い……
勇者の初期ステータスに並んだ事で少し浮かれていたのかもしれない。
明日からまた強くなる為にモンスターを狩らなければならない。
しばらく待っていると朱音が回復魔法を俺の左腕にかけてくれる。
これを奇跡と呼ぶのだろう。
左腕が淡い光に包まれると見る見るうちに火傷が回復して痛みも無くなってしまった。
以前見たのでなんとなくは分かっていたが実際に受けてみると、驚きしか無い。
「朱音、勇者より聖女を目指した方いいんじゃないか?」
あまりの奇跡に思わず心の声が口をついて出てしまった。
「えっ……」
「リュートさん知らないんですか? 朱音ちゃんは街の人達にはいつも聖女って呼ばれますよ」
「そ、蒼花ちゃん」
「ああ、そうだな。これは聖女の奇跡かもな」
「リュートさん……」
破壊と害悪しかもたらさない勇者にあって朱音は完全に異端。
いくら俺でもそのぐらい分かる。
人の為に働き街の人に好かれ、人を治し癒すスキルを使える聖女……
俺の仇である勇者でありながら、完全に俺が殺した奴らと対極に位置する存在。
街の人達も勇者にいい感情は抱いていないはずだ。それが勇者である朱音を聖女と呼び受け入れている。
なら俺はどうする?
左腕を奇跡で癒してくれた朱音を殺すのか?
勇者だから殺すのか?
朱音は勇者だが、俺の知っている勇者とは違う。
朱音を殺す事は、俺も勇者と同類に成り下がる事を意味している。
「どうしました? まだ痛みますか?」
「いや、もう大丈夫だ。助かった」
「はい! よかったです」
朱音が嬉しそうに俺の方を見て笑っている。
俺は悪たる勇者を殺したいのであってこれ自身が悪に染まってしまいたいわけでは無い。
悪に染まる覚悟はとっくに出来ているが、善良な女の子を殺す事は俺には出来ない。
例え勇者であっても朱音は聖女だ。
善良な朱音を殺す事は俺の存在意義まで殺す事に他ならない。
認めよう。朱音は悪では無い。俺の殺すべき対象では無い。
勇者だが俺の知っているあいつらとは根本的に違う。
自分の中で朱音の事を理解すると、それまでずっともやもやしていた感情が晴れた気がした。
だが蒼花の事はまだよく分からない。
本人はいい勇者だと言っていたが、スキルは攻撃系だけのようなので聖女では無いのは確定だろう。
もう少し観察してみなければ蒼花が殺すべき対象なのか判断がつかないのでとりあえず保留にしよう。
「リュートさ~ん。もうダメかと思ったのです。リュートさんのおかげで助かったのです。ですのでこの身はリュートさんに……」
「蒼花ちゃん! 何を言ってるんですか? ふざけてはダメですよ。リュートさんが困ってるじゃ無いですか」
「困ってなんか無いですよね。蒼花はあなたのものです。リュートさん」
「…………」
こいつ本当に勇者なのか?
これは、もう殺してしまった方がいいのか?
いやダメだ。
このふざけた感じでも一応お礼を言おうとしているのは分かる。
お礼を言って来た相手を容赦無く殺すのは鬼畜の所業。俺には無理だ。
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