22 / 92
若葉葵
しおりを挟む
彼女が俺に向かって大きな声で呼びかけて来た様な気がする。
いや、多分俺にじゃないよな。他にも生徒はいっぱいいるもんな。
「無視しないでください。絶対わざとですよね」
下を向いているとすぐ目の前から彼女の声が聞こえて来た。
これはやっぱり俺……だな。
俺は覚悟を決めて顔をあげてみるとそこには少し怒った様な表情を浮かべた若葉さんが立っていた。
「あ~、別に無視したわけじゃ……ないよ。他の人に声をかけたのかと思っただけ」
「そうなんですね。じゃあそれは信じます。それよりも一昨日は酷くないですか?」
「えっ? なにが?」
「私の事を放置して1人で帰っちゃいましたよね」
「い、いや、ちゃんと大丈夫か確認してから帰ったでしょ」
「そうかもしれませんが、私の事はご存知だったんですよね」
「まあ、いちおう……ね」
「それなのに名乗りもせずに去ってしまわれるなんて……後できちんとお礼も言えないし酷いです」
「そう? 別にお礼とかはいらないから」
「そう言う訳にはまいりません。まずはお名前を聞いてもいいでしょうか?」
「あ~、山沖です」
「下のお名前もお願いします」
「えっと、凛だけど」
「凛くんですね。素敵なお名前ですね」
「そう?」
素敵なお名前なんて今まで一度も言われたことがないので恥ずかしくなって来てしまい、顔が赤くなってしまう。
「あ~っ若葉さん、うちのクラスに何か用かな? もしかして僕に会いに来てくれたのかな?」
突然そう言って新城がへらへらしながら寄って来た。
「えっと失礼ですがあなたは……?」
おいおい新城、僕に会いに来てくれたのかなって、若葉さんお前の名前も知らないみたいだぞ。
「いやだな~若葉さん。新城だよ。前に一度話した事があるでしょ」
「ごめんなさい。憶えていません。それに今日はあなたではなくて凛くんに会いに来ただけなので気にしないでくださいね」
「は? 凛くんって誰のこと?」
「それは勿論こちらの山沖凛くんです」
「うそでしょ、このボッチ君に会いに来たの? 人違いじゃないの? こいつ無能者だよ?」
「嘘などついていません。それに凛くんが無能者などと……もういいです。お話の邪魔になるのでもう構わないでください」
「俺が邪魔……」
「そうです。それでは失礼します」
新城に向かってそう言ってから、若葉さんが俺の手を引いて教室の外に連れて行こうとする。
「ちょ、ちょっと待って。どこに連れて行くつもり?」
「屋上です」
屋上? 屋上なんか一回しか行った事ないぞ?
一体屋上で何をするつもりなんだ?
なぜか俺は若葉さんに腕を引かれて屋上まで来ることになった。向かっている途中その姿を多数の生徒に見られてしまったが若葉さんが俺の手を引いて歩いている特異な状況に、嫉妬や羨望を含んだ刺す様な眼差しでは無く、意味が分からないといった感じのなんとも言えない感じの視線を数多く浴びてしまった。
俺が一人で歩いていたとしても誰の視線も一切感じた事は無いので、この視線は全て若葉さんの影響力による物だ。
改めて感じたが若葉葵さんは文字通り学園でのアイドルらしく、俺が思っていた以上に生徒からの注目度は計り知れないようだ。
普段視線を感じる事の無い俺にとっては、この視線の嵐は苦痛でしか無いが、いろんな人に見られてしまったのでこの後が怖い。
いや、多分俺にじゃないよな。他にも生徒はいっぱいいるもんな。
「無視しないでください。絶対わざとですよね」
下を向いているとすぐ目の前から彼女の声が聞こえて来た。
これはやっぱり俺……だな。
俺は覚悟を決めて顔をあげてみるとそこには少し怒った様な表情を浮かべた若葉さんが立っていた。
「あ~、別に無視したわけじゃ……ないよ。他の人に声をかけたのかと思っただけ」
「そうなんですね。じゃあそれは信じます。それよりも一昨日は酷くないですか?」
「えっ? なにが?」
「私の事を放置して1人で帰っちゃいましたよね」
「い、いや、ちゃんと大丈夫か確認してから帰ったでしょ」
「そうかもしれませんが、私の事はご存知だったんですよね」
「まあ、いちおう……ね」
「それなのに名乗りもせずに去ってしまわれるなんて……後できちんとお礼も言えないし酷いです」
「そう? 別にお礼とかはいらないから」
「そう言う訳にはまいりません。まずはお名前を聞いてもいいでしょうか?」
「あ~、山沖です」
「下のお名前もお願いします」
「えっと、凛だけど」
「凛くんですね。素敵なお名前ですね」
「そう?」
素敵なお名前なんて今まで一度も言われたことがないので恥ずかしくなって来てしまい、顔が赤くなってしまう。
「あ~っ若葉さん、うちのクラスに何か用かな? もしかして僕に会いに来てくれたのかな?」
突然そう言って新城がへらへらしながら寄って来た。
「えっと失礼ですがあなたは……?」
おいおい新城、僕に会いに来てくれたのかなって、若葉さんお前の名前も知らないみたいだぞ。
「いやだな~若葉さん。新城だよ。前に一度話した事があるでしょ」
「ごめんなさい。憶えていません。それに今日はあなたではなくて凛くんに会いに来ただけなので気にしないでくださいね」
「は? 凛くんって誰のこと?」
「それは勿論こちらの山沖凛くんです」
「うそでしょ、このボッチ君に会いに来たの? 人違いじゃないの? こいつ無能者だよ?」
「嘘などついていません。それに凛くんが無能者などと……もういいです。お話の邪魔になるのでもう構わないでください」
「俺が邪魔……」
「そうです。それでは失礼します」
新城に向かってそう言ってから、若葉さんが俺の手を引いて教室の外に連れて行こうとする。
「ちょ、ちょっと待って。どこに連れて行くつもり?」
「屋上です」
屋上? 屋上なんか一回しか行った事ないぞ?
一体屋上で何をするつもりなんだ?
なぜか俺は若葉さんに腕を引かれて屋上まで来ることになった。向かっている途中その姿を多数の生徒に見られてしまったが若葉さんが俺の手を引いて歩いている特異な状況に、嫉妬や羨望を含んだ刺す様な眼差しでは無く、意味が分からないといった感じのなんとも言えない感じの視線を数多く浴びてしまった。
俺が一人で歩いていたとしても誰の視線も一切感じた事は無いので、この視線は全て若葉さんの影響力による物だ。
改めて感じたが若葉葵さんは文字通り学園でのアイドルらしく、俺が思っていた以上に生徒からの注目度は計り知れないようだ。
普段視線を感じる事の無い俺にとっては、この視線の嵐は苦痛でしか無いが、いろんな人に見られてしまったのでこの後が怖い。
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった
お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。
全力でお母さんと幸せを手に入れます
ーーー
カムイイムカです
今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします
少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^
最後まで行かないシリーズですのでご了承ください
23話でおしまいになります
全校転移!異能で異世界を巡る!?
小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。
目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。
周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。
取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。
「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」
取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。
そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
転生したらやられ役の悪役貴族だったので、死なないように頑張っていたらなぜかモテました
平山和人
ファンタジー
事故で死んだはずの俺は、生前やりこんでいたゲーム『エリシオンサーガ』の世界に転生していた。
しかし、転生先は不細工、クズ、無能、と負の三拍子が揃った悪役貴族、ゲルドフ・インペラートルであり、このままでは破滅は避けられない。
だが、前世の記憶とゲームの知識を活かせば、俺は『エリシオンサーガ』の世界で成り上がることができる! そう考えた俺は早速行動を開始する。
まずは強くなるために魔物を倒しまくってレベルを上げまくる。そうしていたら痩せたイケメンになり、なぜか美少女からモテまくることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる