上 下
1 / 92

フェイク1 サバイバー

しおりを挟む
俺は唯一使えるスキルを発動する。
「フォッグ」
スキルの効果により敵ゴブリンの周りに薄い霧を発生させた。
「今です! お願いします」
「まかせろ!」
ゴブリンを討伐すべく残りのメンバーが攻撃をかける。
「ファイアボール」
俺の霧の効果で視界を遮られたゴブリンは、拳大の炎の玉をモロにくらって怯み,その隙を突いて後方からもう一人が一気に近づいて斬りつける。
「ウェイブブレイド」
ゴブリンの背後から斬りつけた一太刀は見事に急所を捉えたようで、ゴブリンはそのまま消失してしまった。
「道高さんやりましたね」
「ああ、凛もなかなか良かったぞ」
「ありがとうございます」

俺は山沖凛一六歳。サバイバーとしては最底辺であるLV1だ。
この世界は日本時間の2033年5月3日1時24分に変わってしまった。
この日の深夜、突然世界中にモンスターと呼ばれる異形の敵が出現した。
後に分かった事だがモンスターはゲートと呼ばれる空間から現れ、人々を襲う。
突然現れた得体の知れない化け物の襲撃に日本中が大混乱を巻き起こしたものの、警察や自衛隊の奮闘もあり第一陣は相当数の被害を出しながらも鎮静化されたが、その後もモンスターの襲来は断続的に続き日本の人口は八千万人まで減ってしまった。
そして、モンスターの襲来と時を同じくして人類にも変化を起こす者が現れた。
ゲームの世界さながらにステータスとモンスターに対抗しうる異能のスキルを持つ者たちが現れたのだ。
幾度に及ぶモンスターの襲来で、低下した戦力を補完すべく、国家が異例の速さで整備したのがサバイバーと呼ばれる異能を持つ者たちで構成された組織だ。
俺の今のステータスだ。

山沖凛

サバイバーLV1

スキル  『フェイカー』《フォッグ3》

どういう理屈かいまだに解明されていないがステータスにはしっかりレベル制が組み込まれており、レベルの上昇と共にスキルや各種能力が強化される仕組みになっている。
俺がさっきの戦闘で使用したスキルは『フォッグ』だが俺の本当の能力は『フェイカー』
間近で見た事のある他人のスキルを1つだけ模倣出来る能力だ。
新しいスキルを模倣するとそれまで覚えていたスキルは消失して、再び間近で見ない限り再度模倣する事は出来ない。
『フェイカー』が発現した時は色々なスキルが使えるスペシャルスキルだと喜んだが、それは大きな間違いだった。
『フェイカー』で模倣したスキルは、オリジナルスキルの半分以下の効果しか発揮しなかった。
コモンスキルの『ファイアボール』等の攻撃魔法も模倣したりしてみたが、残念ながらモンスターを倒す程の威力はなく、逆にモンスターの怒りを買いターゲットにされて殺されかけたので、今は他のサバイバーの補助に徹して、戦闘では目眩しの一種である『フォッグ』を使っているが、それもレベル1の俺に使えるのは一日に三回だけだ。
モンスターは魔核と稀にドロップアイテムを残す事があるので、それがサバイバーの収入源となっている。
ちなみにゴブリンの魔核は一個で一万円程度だが三人で倒したので換金後それぞれに分配されるが、サポート役である俺の取り分は二千円だ。
「それじゃあ、次もよろしくお願いします」
「ああ、またな」
今日も換金後現金で受け取って家に帰っている。
残念ながら直接的な攻撃手段を持たない俺は、扱いが悪く身入りも悪い。
ここのところずっと臨時パーティで、他のメンバーがレベルアップするまでの間の仮メンバーとして入れてもらっている。
しおりを挟む

処理中です...