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第三章 魔法使い

別行動。吸血姫は頑張る。

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「魔法と言っても沢山種類があるのね…」

カレンから魔法講座を受けたミルキィは頭がこんがらがりそうになっていた。

「うん。沢山あってワクワクするよね!でも全部は時間がないから教えられないわ。ミルキィちゃんに教えるのは『魔法』ね。これを覚えたら応用で『魔石魔法』もすぐに使えるようになるよ」

他にも『魔導具』を使った魔法もあるが道具と知識が複雑な為、今回は見送ることにした。

「魔石魔法は魔石の魔力と自身の魔力を使うものよね?魔法は自身の魔力のみ。……なんだか自身が無くなってきたわ」

一度に大量の情報を聞いたミルキィは自信を無くした。
カレンの悪い所はまさにそれであった。ようは魔法オタクなのである。

誰でもいきなり新しい情報を自身の処理能力以上にいくつも与えられるとパニックになってしまう。
ミルキィは現在その状況であるが魔法オタクのカレンにはわからない。

「はじめに教えるのは『誰でも魔法は使えるけど出力が違う』という事と『習熟度で自由度が変わってくる』という事ね」

「つまり…?」

「よく物語に出てくる火の玉のような魔法は大魔導士とか賢者と言われている一部の人達だけが使える魔法という事よ」

レビンの愛読書である冒険録に出てくる巨大な魔物に火の玉を放つ描写が描かれていたがそれは限られた人達の魔法のようだ。

「じゃあさっきのは?」

レイラが見せてくれた岩を抉った先程の魔法についての事だ。

「あれこそが誰でも使える魔法よ。あれは私の魔力を使って作った魔力の塊を私の魔力で撃ち出したの。
話は戻るけど、私達でも火の玉を使う方法はあるわ。それが魔導具魔法といわれるものよ。
でもこれは訓練も才能もお金も必要な事だからここでは教えられないの。
興味があれば魔導書を読んでみる事ね」

「そうなのね。わかったわ!私にレイラさんがさっき使っていた魔法を教えてください!」

「ええ!もちろんよ!」

ミルキィは火の玉を使いたいわけではない。レビンの役に立ちたいのだ。
その為、先程の岩を抉る威力が出せる魔法を自分が使えるなら今はそれで十分役に立てると思えた。

レイラはレイラで自身の持つ知識を披露する場所が出来た為、テンションは高い。



「今日はこれくらいにしましょう」

何やら集中しているミルキィにレイラが声を掛けた。

「まだやれるわ!」

「ええ。でもそうじゃないの。ほら。向こうを見て」

レイラが指し示した方を見ると…

「レビンッ!!」

「ただいま。ミルキィ。どうだった?やっていけそう?」

そこにいたのはレビン達であった。
レビンもミルキィが振り向いたタイミングで声をかけた。

「勿論よ!すぐには無理かもしれないけど必ず出来る様になってみせるわ!」

(何だか凄く張り切っているなぁ…ここは応援だけしとこうっと)

「うん!出来なくてもミルキィの糧になればそれで良いんだよ。もちろん出来ることはこれっぽっちも疑ってないけどね!」

そしてそこに割って入る不届き者は…

「ミルキィちゃん!?俺が帰ってきたよ!?」

「なんで疑問系なのよ…」

ミルキィに全く見向きもされていないアランだった。サリーはツッコミ役のようだ。

「サリーさんもおかえりなさい。レビンはどうだったかしら?」

「えっ!?この距離で無視!?」

「どうだったもなにも…この馬鹿とトレードして欲しいくらいだよ」

アランはさらに無視されてサリーにも捨てられた。頑張れアラン。負けるなアラン。
そして話に入ってこないダリーとカレンはいちゃついていた。

「とにかくここから出よう。話は宿に帰ってからね」

「はーい!」

サリーの提案にレビンは元気よく応えて、各々は頷いた。

「ミルキィちゃん…?俺の事見えてない可能性がある?」

約一名は上の空であった。




宿に戻った一行は食堂で夕食を一緒にとっていた。
テーブルはカーラが移動してもいいと言ったので手分けして椅子とテーブルを運んだ。

「カーラちゃんもここで食べたらいいぞ!なぁに。夕飯くらいご馳走させてくれ!」

アランは紳士を発揮していたが遂にはカーラにも無視された。

「………」

「さっ。アホな人は放っておいて今日の報告をはじめようね」

馬鹿からアホにグレードアップ?したアランを置いて、サリーが話を纏めていった。

「へぇ。ミルキィちゃんも凄いんだぁ…何なのかな…?この二人は…」

「そうなのよ。教え甲斐があるなんてものじゃないわ!私でも一時間もしたらグロッキーになる訓練を二時間も続けてケロッとしてるのよ。
このまま行くと一月足らずでモノになりそうね…」

教え子が優秀だと師としては嬉しいはずだが、レイラは魔法談義がしたいのであって先生には向いてないようだ。

「レイラにもレビンの活躍を見せたかったな。弓も索敵も身体能力も凄かったぞ」

そうレイラに告げたのはダリーだった。

「そうなのね。じゃあレビンくんだけでサリーとダリーの二人分ね。良かったわ。これで気兼ねなくミルキィちゃんに時間が割けるわ」

「それについてはカレンの言った通りだよ。軽装だから見ててこわいけど、あの動きならその辺の魔物の攻撃は当たらないもん。
そっちの目処がつくまでにこっちは魔石と資金集めが出来そうだよ」

ミルキィとレビンというあまり関わりがなかった年下がいた為、サリーは言葉遣いに気を付けていたが、二人の規格外さに見栄を張るのはやめたようだ。

「訓練ってどんな事をしたの?」

レビンが気になってミルキィに聞いたが、それに答えたのはカレンだった。

「魔力操作よ。魔力はみんなにあるモノなんだけど、それを操作できるかどうかで魔法が使える人と使えない人に別れるのよ。
そしてその魔力操作は訓練すれば出来る様になるわ。剣や弓と同じでその訓練に終わりはないわね。とりあえずは魔法と言われている昼前に私が使ったモノを使えるようになるまではつきっきりで教える予定よ」

ミルキィに行った座学はもう少し詳しいものだった。
掻い摘んで説明すると
・魔力の多さは持って生まれたモノとレベルに左右される。訓練で増えることはない。
・魔力操作により魔力の扱いを覚える。
・魔力操作の習熟度に応じて同じ威力の魔法でも燃費が違い、同じ魔力量であっても威力が違う。
・魔力操作がある一定のレベル(ここでは習熟度)を超えると周りの魔力を把握する事が出来る。その距離を伸ばして行くと魔力探索のような事も出来る。

などだ。

「そ、そうなんですね…」

食い気味に話し出したレイラに終始押されていたレビンだった。

「カーラちゃんまで無視かよ…」

頑張れアラン。挫けるなアラン。見た目はいいのに…アラン。

そして翌日から本格的に別行動が始まった。

レベル
レビン:7(67)
ミルキィ:60
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