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第2章・この世界の片隅で

   第130夜・『社員昇格試験 ①』

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 私は、二ヶ月前に新しい会社で働きだして研修生の立場であった(2009/01/27)。

 で、先日、社員昇格のための面接があった。

 各部署から、社員候補の三人が本社に集まり、午前は一般常識テスト・小論文、午後は面接というスケジュールをこなした。

 面接の最後には、研修生のうちに「覚えておけ」と言われていた、<リーダー十一ヶ条>の宣言をさせられる。

 ここで記すことはないが、<リーダー十一ヶ条>はかなりの文章量である。

 私は、入社当時から、ちょっとづつ覚えていた。

 いつも、通勤中の車の中で覚えていたので、前の車に衝突しそうになること数回! ^^;

 意味が通っても、語尾や表現が少しでも違ったら、ダメなのである。

 「丸暗記するだけじゃ意味ないじゃん」と思われるかもしれないが、私はそうは思わない。

 かように長い文章を「丸暗記する」、ただそれだけで、凄まじい努力が必要である。

 会社は、そこを見るのである。

   ◇

 社員候補の三人のうち一人は、もちろん私だが、もう一人のA君は、私と同じ職場の男である。

 残った一人のB君は、隣りの部署である。

 ・・・ここでは、A君について語る。

 こいつは気持ち悪い男であった。

 変に気張って入社してきて、最初は、私が挨拶しても挨拶を返しもしない。

 私は、とにかく、最初は現場に無知なのであるから、社員/バイト構わず、年上/年下構わずに「先輩」として敬意を表す対応で、いわゆる「下流」の仕事を率先してやり続けた。

 すると、このA君は、「やるなとは言わないが、俺たちは社員になるのだから、相応の態度をしたほうがいい」などと言う。

 いや、言葉単体では、その文法に間違いはない。

 そういった言葉が合うTPOもあるだろう。

 しかし、ここでは違う。

 そんな言葉は、相応の体験を経てから言えることだ。

 いや、相応の経験があったとて、個々の具体的な状況を体得する「時間」が必要なのである。

 A君が、これまでの人生をどう送っていたかは、私は知らない。

 だが、余程、状況への選択肢が狭い経験しか送ってこなかったのだろうことは理解した。

 私には、A君の、進むべき運命が如実に分かった。

              ・・・(2009/01/27)
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