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第1章

休暇

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「休暇...ですか?」

クラウス家で住まわせてもらって早3週間
クラウスの接し方がちょっと柔らかくなったくらいで
特に変化のない日々を過ごしていたが
クラウスのご両親がたまに休みをと提案してきた

「そう!いつも手伝ってもらってすごく助かってるからたまには羽を伸ばしてもいいんじゃないかと思って」

と、ニコニコ微笑むのはクラウスの母イルマさんだ
そもそも手伝いと言っても水遣りや雑草抜きくらいで疲れることもないし
クラウスのツテとはいえ
身辺状況もわからない人間を住まわせてくれて感謝しかない
ほんといい人たち過ぎる

「でも、カナデさんなら遠慮するだろうなと思ってクラウスに街を案内してもらったらどうかなって」

そういって人のいい笑顔で提案するのはクラウスの父クラウドさん
見た目からして温和そうな人だ

クラウスの家から街までは遠いといっても大体3時間程度
街はやっぱり興味があるし
行ってみたいなぁとは思ってたけど

「道中は心配いらない。比較的安全なルートでいくし、何より元騎士とはいえ俺が付いているから安心していい!」

こいつがなぁ
なにかと僕を弱いものみたいに見て
守ろうとしてくんのがうざったいんだよなぁ
自分の身ぐらい守れるんだけどな
なんでこうなったんだろう
日に日に熱視線は増すし
居心地が悪過ぎる


「イルマさんクラウドさんありがとうございます。お言葉に甘えてお休みいただきます!」


俺には!?って顔してる奴には無視
そもそも頼んでないし。


ーーー・・・


「いってらっしゃーい!」


ご両親に見送られて
僕とクラウスは
街に出かけた


「カナデ!そ、空がいい天気だな!」

空がいい天気って
しっくり来ないけど

「無理に会話しなくていいよ」


「無理はしてない!!」

ぅおっ!鬼気迫った顔で言うなよ...
ていうか

「顔近いから」


「っ!悪い!!」


今度はすごく遠い
はぁ、何コントみたいなことやってるんだろう
というか思い返してみても
ここまでクラウスに想われることしてないんだけど
顔だけカッコイイ的な事は言ったけど
あれ以降普通に接してただけなのに
なんて考えてたらクラウスがしゃがんで誰かと話していた


「って何してんの?」


どうやら
辛そうな顔をしている人を見かけたらしい


「この御婦人が先の村へ向かう途中足を捻ったらしい。俺がおぶるから途中にある村まで一緒でもいいか?」

街に着くまで小さい村がいくつかあるが
御婦人はその中でも北方の村に住んでいるらしい
西の村に住む娘夫婦の家に遊びに行った帰りに石につまづいて捻ったらしい
ちなみにクラウスは南の村に住んでいる。
申し訳なさそうにこちらを伺っているから言い方を変えるか...

「僕は構いませんよ。むしろ僕ここら辺の村のこと知らなくて、良ければ目的地までお話ししてくれませんか?」

そういうと
表情がパァっと明るくなり
北の村に着くまで特産品など色々な話をしてくれた
聞くと北の村は気温が低いのもあり採れるものも少ないため他の村から評判があまり良くないと村のことを聞いてくれる人がいないらしい

寒い地域では寒い地域なりの楽しみ方や美味しいものもあるだろうに
そういうものは浸透しないのだろうか


「綺麗な湖はあるんだけど、そこはチュアクラが住んでるから怖がって近づかないのよ。そこで採れる魚は美味しいんだけどね」

チュアクラってなに?って聞いたら
簡単に言うと水の中にいる蜘蛛(チュラ)のことらしい

「どんな見た目なんですか?」


「見た目は黒っぽい色かしら。脚が8本あって体は固くて表面がトゲトゲしてるの!なんて言ったって蜘蛛には存在しない二本の武器を持ってて、それに指を切られた人もいるのよ!恐ろしくて近付けないわ!」


あくまで想定だけど
蟹じゃない?
特徴が蟹っぽい
細い脚のチュアクラと
太い脚のチュアクラと様々らしい
何故湖に住んでるかは謎だけど
これ食べれるって分かれば北の村の名物になるんじゃない?


「それ見せてもらってもーー・・・」


「カナデ!興味を惹かれるのは分かるが、今日は街に行くんだろ!」


当初の目的を忘れていた。
んでもってクラウスのことも。


今は時期じゃないとあまり見かけないらしくもうちょっと寒くなったら出てくるからって
2ヶ月くらいしたら北の村に遊びに来てと誘われた

クラウスが危ないだのなんだの騒いでいたが
嫌なら来るな。と言ったら黙った。
付いてきたらついてきたでめんどくさそうだから置いていきたいなと
思ってたら
一人で行こうとするなよと怒られた
なんでこう考えがバレるんだ。


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