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しおりを挟む教会が嫌いだ。
「…」
細い腕。
このまま抱きしめたら、どんな顔をするだろう。
抱き寄せて、好きだと言ったら。
「…?」
夜明けの色を混ぜたような薄いブルー。
それに俺だけを、映してくれればいいのに。
「……気をつけろよ」
「転ぶとこだった…ありがと」
「じゃあな」
離そうとしたとき「待って」と聞こえそのままになる。
「帰るの?今からちょうど休憩しようって、…あーまたデート?」
「……それはお前だろ。今日も来てんの?"いとしのリード様"。」
「っ、…い、たっ」
「ーーっ、悪い、」
赤くなる顔色に無意識に、握る力を強くしたことに気付く。
慌てて離し謝れば困ったように目尻を下げて笑う。
「もー…何かあった?最近ちょっと不機嫌多くない?」
「……ごめん……」
「いいってば!ね、ケーキ焼いたの食べて行かない?…そのあと修繕手伝ってくれたら助かるなーとか…」
「…それが狙いだろ」
「わかる?」
うしろを振り返る姿を目が追う。
今日は髪を結っているから、どうしても目が行く。
俺の狙いになんて、まったく気付かないで無防備にさらすんだ。
「……ケイト、」
「なに?」
振り向いて応えるその笑顔は、俺だけに向けられるものじゃない。
特別を、与えられるのは俺じゃない。
「……今日は無理だから、また今度な」
「えー…そうなの?残念…。次は顔出して行ってね。神父様のありがたいお説教も待ってるし」
「やなんだけど」
「ふふっ」
「じゃあな」
「わたしも話くらい聞けるからね。」
わかってる。
「何かあったら、友だちなんだから」
「……早く戻れよ」
「もー!じゃあまた学校でね、ーー」
ルカ。
名前を呼んで、背を向ける。
それを待っている視線があって、間抜けに見送る俺がいる。
ぜんぶわかってる。
それでもただ俺が、好きなだけだ。
教会は嫌いだ。
母の命を奪い、父の片腕を奪って。
ケイトを俺から奪った。
祈ったって、取り戻せない。
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