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あくまの手のうち

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すきじゃないけど。



「…、きらいでは、ありません…」



だから、困るのだ。

ふるえそうな口もとを押さえる。



「……そうだったらどんなにいいかと、」



無理矢理あんなこと、いやだった。
強引なところだって、苦手だった。


なのに身の竦むような嫌悪感は、なくて。
まじめに考えすぎなのかもしれないけど、

それってきらいじゃないって、ことなんだと思う。





「よかった。」

「…よかった…?」

「だって嫌いじゃないんでしょ?俺のこと。ならよかった」

「すきでもないのに…?」

「嫌いじゃないなら好きになってくれるかもしんないし、好きじゃなくても好きになってくれるかもしんないし」

「…」


え、ちょっと、…いみがわからない…。
なんでそんな笑顔なんですか?
そしてすごく前向きな考えだし希望を見出しすぎでは?「ーークリス、」


「え、…っ」


置き去りになっていることを思い出させるように絡めて、親指がくちびるにふれる。


「…俺に触れられるのは嫌?」


みるみるうちにまた、アクアマリンが危険な色を孕んでいる。


「こ、ういうのが、いやなんです…っ」

「質問に答えてよ。…俺に、ふれられるのは、…嫌?」


言葉をなぞるように、指が動く。


「…いや、ですっ」

「嘘。」


やさしく、わたしを追い詰める。


「…っ」

「ほんとに嫌だったら突き飛ばして」

「っなら手を、っ、離して…っ」

「振り払ってよ」


そんなのやってる。離してくれないのは、


「…いじわるはやめて…」


そっちなのに。


「そんなカオで言われてもそれやめないでって、言ってるようにしか聞こえないよ、?」


ぜんぶわたしのせいにして、ずるい。


そうやっていつも、獲物わたしが罠にかかるのを待ってる。
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