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さっそく逃げる!(途中に昔話)②
しおりを挟む『…なにをみてるの?』
『、は、』
『…は?』
『…はっぱ…』
『葉っぱ…?ふふ、…かわいいね。
でも、向こうにも葉っぱと花がたくさんあるよ。
…一緒にみにいこう、?』
『……うん』
やわらかい手の感触を覚えてる。
肩までのふわふわしたピンクの髪とおんなじドレス。
優しい笑顔で連れて行ってくれた庭園の先。
『きみのひとみの色とおんなじだね、クリスタ』
ぱきっと折ってわたしの髪にさしてくれた。
薄紫のちいさな花。
ぱきっと折って怒られないかと不安なわたしに大丈夫だよと笑ったんだ。
エルファリ様の邸だったんだよね…だからっていいのって思ったけど…うん、色々思い出してきた。
とにかく優しいかわいい女の子で、わたしはそれからエルファリ様と仲良くなったんだ。
会うたび一緒にいてくれるからすっかり懐いていたし。
たまにお姉様と、のちのお義兄様となるジーンベルト様も交えて過ごしてた。
そうして五年ほど経って、わたしが王都に戻る前にエルファリ様は騎士学校に行くことになった。
いつものドレス姿ではない、髪も短くすっきりしているエルファリ様。瞳はキラキラしていて、騎士学校の白い制服がよく似合っていた。
その頃にはもうかわいいというより、美人て感じだったエルファリ様が男の子だったと、わたしは初めて知ったんだ。
『…エル様…男の子だったの…?』
『うん。やっぱり最後まで気づかなかったね。
かわいいけどやっぱり心配だよ』
『…騎士様に、なるの…?』
『違うよ。クリスを守れるように強くなりたいからだよ』
『…』
『…俺のこと待っててくれる?』
『え?…うん』
『よかった。打診はとっくにしてるし、休暇は会いにくるつもりだけどまだわからないから。
でも三年終わったら学園に入るし、クリスの入学式には会えるからね』
『…うん…』
『しばらく会えなくなると思うけど浮気しちゃだめだよ…?見張ってるからね?』
『…うん…』
『…かわいいなぁ…。いい子で待っててね、俺のクリス』
今思えば。
おかしな会話だったし、おでこに触れたのはエルファリ様のくちびるだったとわかるんだけど。
そのときのわたしはエルファリ様が男の子だったことや、もう会えなくなること。
それがさみしくてショックであまりよくわかっていなかった。
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