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五章 本当の問題

第81話(色々な意味で本当に目を離せない)鈴矢視点

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 オレ達が葵ちゃんの眠っている部屋に駆けつけるとそこには葵ちゃんが居るギリギリの所に倒れているタンスがあった。
葵ちゃんには当たってないが本当にギリギリの所で倒れているタンスを見て少し血の気の引いた顔で葵ちゃんにこの部屋にすぐに駆けつけたオレと紅と白銀が近づくと葵ちゃんの様子がおかしい事に気づいた。

「葵!無事か!?、、、葵?」
「何故タンスが倒れたんだ?葵、、、葵?わたし達が分かるか?」
「あ、、?」

葵ちゃんは顔色を真っ青にしながら何が起きているのか分かっていないみたいで紅と白銀の言葉を聞いて少し顔を上げる。
そうしている間に他の奴らもこの部屋に着いたみたいだが葵ちゃんの様子がおかしい事に気づいて静かに見守っている。
(顔色が真っ青だ。何かよくない夢でも見たのか?)

「葵ちゃん?」
「あ、っ!り、鈴の兄さん!」
“ギュッ”
「へぁ?あ、葵、ちゃん?」

オレが声をかけると葵ちゃんは勢いよくオレに近づき縋る様に抱きついてきたのでオレはそんな葵ちゃんの可愛らしい行動に変な声を出して驚いてしまった。
(葵ちゃん!可愛、、、震えてる?)

「葵ちゃん、怖い夢でも見た?」
「っ、、、」
「、、、、葵、わたしが誰か分かるか?」
「、、、白兄」
「俺は?」
「、、紅、兄さん」
「っ!葵、、、もう一度確認するぞ?俺が誰だか分かるか?」
「、、、紅兄さん」
「、、、おい、白、鈴」
「ああ、分かっている」
「ああ、昔の呼び方だよな?、、、葵ちゃん、大丈夫だ落ち着いて?」

葵ちゃんは紅の事は今は“兄さん”と呼んでいるが昔は“紅兄さん”と呼んでいた。
(葵ちゃん本当に顔色が悪い。黒先生に診てもらったほうが良いな)

「俺、ちょっと黒呼んでくるから離れ、」
「いやだ!」
「葵?」
「紅兄さん、何処にも行かないでくれ!」
「分かった、何処にも行かねぇから」
「わたしが呼んで来よう」 
「だめ!白兄も何処にも行かないで!鈴の兄さんも紅兄さんも白兄も何処か行ったらやだぁ~!っ~、う~、ひっく」
「「「葵(ちゃん)!」」」

葵ちゃんは紅が黒先生を呼ぼうとして少し離れようとしたらオレに抱きついたままオレの後ろに居る紅の服を引っ張って紅を止め、白銀が代わりに行こうとしたら紅の服を掴んでいる反対の手で白銀の服を掴んで幼い口調で縋るように言うとそのまま泣いてしまった。
今の葵ちゃんが人目を憚らず我が儘を言ったりましてや泣く事などあまりの事(オレが目の前で撃たれたとか)が無い限りあり得ない。

「あ!もしかして葵ちゃん、まだ酒が残ってる?」
「あ~!なるほど、確かにこんな風になるって事はまだ酒が残ってるのかもな」
「だが、それだけではないだろう。紅の呼び方が昔のそれと言うことは、、、幼い頃の夢でも見たのか?」
「多分そうだろうな。だがそれより、黒!」
「なんだ?」
「悪いがこっち来て葵の事診てくれねぇか?俺の事掴んでる葵の手の包帯から血が出てるんだ」
「なっ!すぐに行く!」

黒先生はすぐこっちに来て葵ちゃんを診ようとしたが葵ちゃんが紅と白銀を離さないのでオレ達は葵ちゃんに絶対に離れないから手を見せてくれと慰めながら言った。
ちなみにそう言ったら放してくれたのだが紅を掴んでいた手の方だけではなく白銀の方を掴んでいた手からも血が出てた。
黒先生が葵ちゃんの手を診てくれている時にオレ達は葵ちゃんが不安にならない様にオレ達は葵ちゃんの頭を撫でたりした。
(葵ちゃんがこんな風になるのは初めてだな。どんな夢を見たんだ?)

「葵くん、少し痛いかもしれないが我慢してくれ」
「、、、大丈夫、、だ」
「葵、他に怪我はねぇか?タンスで怪我はしてねぇのか?」
「タンス?、、、あ、タンスはオレが倒した」
「は?、、、葵が倒したのか?このタンスを、、、」
「紅?どうしたんだ?葵が倒したタンスに何かあったのか?」
「、、、血が」
「血が?」
「タンスに、、血が付いてる。多分、いや、絶対に葵の、、血が付いてる」
「は?」
「本当だ、、、葵ちゃん、、、タンスを倒した時に手の怪我を悪化させたのか?」
「、、、手足を動かしていたら当たって倒れた」
「手足を動かし、、、手と、、、足?、、、、葵ちゃん」
「、、、。」
「怪我した足見せて?」
「、、、。」
「葵?俺にも怪我した足見せてくれるか?」
「、、、。」
「葵、わたし達はタンスを倒したのを怒っているんじゃないんだ。葵に怪我がないか心配してるんだ。見せてくれるな?」
「、、、白兄、、、分かった」

葵ちゃんは白銀にそう言われて頷いたあと渋々布団の中にあった足を出す。
(うわぁ、、、包帯が真っ赤だ。これ全部葵ちゃんの血か)

「これは痛いだろう、血がこんなに出て。よく我慢出来たな葵くん」
「、、、痛いが我慢出来ないほどじゃない」
「手の方が終わったらすぐ診るから待っててくれ」
「、、、黒さん」
「ん?」
「、、、手間をかけて、、、ごめんなさい」
「っ~、んンッ、コホン、、、手間だと思ってないから謝らなくていいぞ?な?」
「、、、ん。ふふっ、黒さんの良い子良い子気持ちいい」
「っ!、、、、。」

黒先生が死んだ。
けど、アレは仕方ない。
オレ達も死にそうだ。
何があったか説明しよう。
まず、黒先生は葵ちゃんの手の怪我を治療していた。
その後にまだ酒が残っている葵ちゃんが、、、つまり素直で少し泣き虫で幼さが出ている可愛い葵ちゃんが泣き出しそうな不安そうな顔(多分だが、手間をかけて嫌われると思ったのだろう)をしながら謝った時の可愛らしさに黒先生は(見ていたオレ達も)少し悶えてから、泣き出しそうで不安そうな葵の頭を優しく撫でたら可愛らしい言葉(良い子良い子)でふにゃりとした可愛らしい笑顔をしながら自分から頭を撫でられようと甘えてきたので黒先生は死んだ。
(かっ、、、可愛い!葵ちゃんくっそ可愛い!あー!本当に可愛い!キスしてぇ!、、、あ、そういえば)

「葵ちゃんって黒先生に撫でられるの好きみたいな事を前に言ってたよな」
「あ?、、あー、、、黒と初めて会った日にそんな事言ってたな」
「わたし達の事を説明していた時だったか?確か、、、『今までで一番気持ち良い』だったか?」
「そうそう、それ。それにあの顔見ると葵は本当に黒に撫でられるの好きなんだなって思うよな」
「そうだな。葵の一番を取られるのは少し悔しいが黒先生なら仕方ないと思う。それに葵のあんなに可愛い顔を見れるのだからわたしは満足だな」
「そうだな、俺も白と同じだな」
「オレもそう思うけど、、、今回の事で本当に葵ちゃんからは目が離せないって思った」
「ああ、俺も葵から目が離せないってのは思った。何時何処で怪我してるか分からねぇし?」
「わたし達が居ない時に泣いているかも知れない」
「それに葵ちゃんのあんなに可愛い顔を見逃すのは絶対に嫌だしな?」

オレが最後にそう言うと二人は力強く頷いた。
(さて、黒先生が治療し終わったら何があったか葵ちゃんに話してもらわねぇとな?まだ酒が残ってる今の状態の葵ちゃんなら素直に話してくれるだろうしな?、、、けど、本当に可愛くて目が離せねぇな)



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