上 下
247 / 247
番外編 バーガンディの日常Ⅱ

アデルとグラナダ 第三子との道 ②

しおりを挟む
ああー…昨日はうっかりやってしまった…。感動のあまり我を忘れてしまったのだ…。
あの素晴らしい歌声も姿も覚えているのに記憶が無いとはこれいかに。

正直もう一生見れないと思っていた推しの未来像をこんなところで見れるなんて。
着席スタイルとは言え歌も振りも完ぺきだった。
覚えてもらったのはJJF中期のCP曲。珍しく推しの歌わりが多い、低音を中心としたメジャーコードの柔らかいバラード。
夢へと向かう友人の為に、推しが作詞をしたファン垂涎の1曲だ。
発売時、特典違いジャケ写違いで、合計8パターンも発売されて、ライブのチケット代金を振り込んだ、まさに直後の僕のお財布に大ダメージを与えたとても思い出深い1曲でもある…。


その声も、ブレスも、少し眉間に皺を寄せて歌うところまでも…握りこぶしの握り方まで同じだなんてっ!もうっ!

気が付いた時にはグラナダ様の腕の中で、あー…ウォッホンッ…ともかく、それは良いんだけど、問題はそこに魔道映像機があったことだ……。

起動しっぱなしだったことをすっかり忘れていた…。そのうえさらに不幸だったのは、その事実に気が付いたのがグラナダ様の方が先だったことだ…。
グラナダ様ときたら映像が映しこまれた魔石を、さっさと取り出し内ポケットにしまうとどれだけ言っても返してくれない…。記念に取っておくなどと馬鹿な事を言う。あの手この手で散々交渉したけどどうしてもダメで…涙で枕を濡らしたあの夜…。嘘だけど。

「あの、魔石にはお前が涙した私の姿も映っているのだぞ。割っても構わぬのか?」
「え、ダメ、あいや、…けどっ!だからって…あぁっ!」

もう一回歌ってもらうことを条件にその魔石は諦めた…。あの嬉しそうなエロい顔を見たら、もう諦める以外の選択肢はかき消えた。

「その代わりあのニセ生誕珠みたいにアベニアが開けないよう、厳重に厳重にすっごーい封印かけて隠しておいてくださいね!もうほんとにお願いですから…。あんなの見られたら死ねる…」
「お前に死なれるのもお前の痴態を見せるのもお断りだ。言われなくとも誰の目にも触れさせぬわ」

「あんなのどうするんです?本人はここに居るじゃないですか。」
「それはそれ、これはこれだ。」
「あ”ーーー!」





と、まぁ、そんなことはあったけど気を取り直して今日はミルドレッドに披露する日だ。
グラナダ様が好んで着る衣装は大抵の場合ダークカラーが多いんだけど、今日はさすがにキラキラ感を優先して、白ベースに髪色に合わせた濃紺を差し色に入れ、金モールと金エモレットと金ボタンで正装に近い感じに仕立ててみた。
王子様というより王様だけど、悪の総督感はほとんど消えた。


パシャー「あ、視線くださーい」
パシャー「はいラストでーす」

「アデルよ、今日の主役はミルドレッドではないのか。いい加減にせよ」
「はぁい。」





グラナダ様の白い衣装に陽の光が反射して、そのキラキラした王族感にミルドレッドは泣くこともせず魅入っている。
こっそりピンクベージュの魔法を飛ばしてグラナダ様にさらに金ラメのようなエフェクトを纏わせる。エフェクトはグラナダ様の周りを舞って、まるでベッドメリーみたいだ。

「おお…笑っておりますぞ。」
「ああ、本当ですね。嬉しそうだ」
「閣下、今ですよ、指っ!指を出して!」

歌いながらも覗き込み、その指をそっと差し出すと…

「あーだー」キュッ

グラナダ様のその太い指を小さなお手々がそっと握った…。





僕のグラナダ様キラキラロイヤルエフェクト作戦は大成功で終わったようだ。
ミルドレッドはグラナダ様を怖がらなくなったし、抱き上げても笑うようになった。ああ良かった。



僕のグラナダ様ミュージアムには久々に新作がいっぱい増えた。おかげで顔のニヤニヤがとまらない。

「あー、母さま、父さまがいっぱい!」
「エヘヘ、いーでしょアベニア。」
「あれ?なんかしんでんで見たのに似た小さいのがある…あー!ここにも父さまが!」
「じゃーん、自慢の祭壇です。」

「ふうん?じゃあせいたんじゅここでもお祈りしたの?」
「えっ?なんでそう思うの?」
「だってせいたんじゅって、しんでんでたくさんお祈りしないとダメなんでしょ?さいだんならお祈りするんだよね?」
「!」

目からウロコ!流石アベニア!
そうだよ!僕には祭壇があった!



ぎゅぅって抱きしめてほっぺにちゅぅってしたらアベニアは笑いながら逃げて行った。




そして僕はいつかの日の4人目を夢見て今日も大好きな家族と過ごすのだ。
恐ろしくにぎやかで、浮足立つほど華やかで、堕落的なほど享楽に満ちたこのバーガンディという楽園で。




しおりを挟む
感想 102

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(102件)

四葩(よひら)

すみません、誤字かな?報告です

父子の対面②
グラナダ様の、台詞の「アデルを娶れたことは行幸~」とありますが
行幸→僥倖ではないでしょうか?意味が変わってきてしまうような?

お手数おかけしますが、ご確認いただけたら幸いです。

精神的に不安定になって安心出来るものが読みたくなりまたまたこちら読んでます💦
何だかホッとするので定期的に読みたくなります( *´艸`)💕

他の作品も読み進めたいのに己の精神状態が邪魔をします💦

kozzy
2024.05.24 kozzy

多分承認不要なのでしょうが返信したかったので…

初作品であるドルオタには今読み返すと結構他にも誤字脱字が残っています(;^ω^)
文章もおかしなところがあったりしますし
もうキリが無いのでスルーしてたりするのですが
こうして今でも教えていただけるのが本当に嬉しいです。

アデルには思い入れが強いのでそう言って頂けることが光栄です。
どの作品であれ、好んで読んでいただけることが幸せです(*´ω`*)

解除
丁
2024.03.18

46話で「能面」の単語に、思わず、
「ちょっと待ったあ!能?あるの!」
とつっこんでしまいました。

いや世界の自動翻訳が適切に訳したに違いない!
さすが翻訳。

kozzy
2024.03.18 kozzy

(;^△^)
言われて見れば…。

その通りです。転生転移の神様は親切翻訳機能付きです!

解除
nro
2023.06.09 nro

更新中の別のお話を読んでいましたが、このお話も拝読させていただき、一気読みしてしまう程本当に面白いです。
尋常じゃないぐらい前向きな主人公に、読んでいるこちらも明るい気持ちにさせてもらえました!

番外の師匠とルミエ…最高すぎ☆

kozzy
2023.06.09 kozzy

感想ありがとうございます!

久々のドルオタ感想。なんだかすごく嬉しいです。

あの番外気に入っていただけて感激です!
実はとてもノリノリで書いておりまして…(笑)

更新作品共々、今後もよろしくお願いします+。:.゚٩(๑>◡<๑)۶:.。+゚

解除

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

市川先生の大人の補習授業

夢咲まゆ
BL
笹野夏樹は運動全般が大嫌い。ついでに、体育教師の市川慶喜のことも嫌いだった。 ある日、体育の成績がふるわないからと、市川に放課後の補習に出るよう言われてしまう。 「苦手なことから逃げるな」と挑発された夏樹は、嫌いな教師のマンツーマンレッスンを受ける羽目になるのだが……。 ◎美麗表紙イラスト:ずーちゃ(@zuchaBC) ※「*」がついている回は性描写が含まれております。

人気アイドルになった美形幼馴染みに溺愛されています

ミヅハ
BL
主人公の陽向(ひなた)には現在、アイドルとして活躍している二つ年上の幼馴染みがいる。 生まれた時から一緒にいる彼―真那(まな)はまるで王子様のような見た目をしているが、その実無気力無表情で陽向以外のほとんどの人は彼の笑顔を見た事がない。 デビューして一気に人気が出た真那といきなり疎遠になり、寂しさを感じた陽向は思わずその気持ちを吐露してしまったのだが、優しい真那は陽向の為に時間さえあれば会いに来てくれるようになった。 そんなある日、いつものように家に来てくれた真那からキスをされ「俺だけのヒナでいてよ」と言われてしまい───。 ダウナー系美形アイドル幼馴染み(攻)×しっかり者の一般人(受) 基本受視点でたまに攻や他キャラ視点あり。 ※印は性的描写ありです。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

殿下、俺でいいんですか!?

神谷レイン
BL
薬剤魔術師として王宮に勤める若者セス。 ある日突然王様から十一歳年上の第三王子のレオナルド殿下と結婚して欲しいと頼まれた。なんでも広まっていない同性婚を世間に周知する為らしい。 でも、どうして俺なの!? レオナルド殿下って、美丈夫じゃん! 俺みたいなのじゃ見劣りするよ! そう思いつつも、当の本人レオナルドに他の人に変えてもらうように頼むが、ほだされて形式上の結婚を結ぶことに。 困惑しっぱなしのセスに待っている未来は?! 小説家になろうでも同時掲載しています。 https://novel18.syosetu.com/n8355gi/

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。