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番外編 バーガンディの日常Ⅱ
アデルとグラナダ 第三子との道 ②
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ああー…昨日はうっかりやってしまった…。感動のあまり我を忘れてしまったのだ…。
あの素晴らしい歌声も姿も覚えているのに記憶が無いとはこれいかに。
正直もう一生見れないと思っていた推しの未来像をこんなところで見れるなんて。
着席スタイルとは言え歌も振りも完ぺきだった。
覚えてもらったのはJJF中期のCP曲。珍しく推しの歌わりが多い、低音を中心としたメジャーコードの柔らかいバラード。
夢へと向かう友人の為に、推しが作詞をしたファン垂涎の1曲だ。
発売時、特典違いジャケ写違いで、合計8パターンも発売されて、ライブのチケット代金を振り込んだ、まさに直後の僕のお財布に大ダメージを与えたとても思い出深い1曲でもある…。
その声も、ブレスも、少し眉間に皺を寄せて歌うところまでも…握りこぶしの握り方まで同じだなんてっ!もうっ!
気が付いた時にはグラナダ様の腕の中で、あー…ウォッホンッ…ともかく、それは良いんだけど、問題はそこに魔道映像機があったことだ……。
起動しっぱなしだったことをすっかり忘れていた…。そのうえさらに不幸だったのは、その事実に気が付いたのがグラナダ様の方が先だったことだ…。
グラナダ様ときたら映像が映しこまれた魔石を、さっさと取り出し内ポケットにしまうとどれだけ言っても返してくれない…。記念に取っておくなどと馬鹿な事を言う。あの手この手で散々交渉したけどどうしてもダメで…涙で枕を濡らしたあの夜…。嘘だけど。
「あの、魔石にはお前が涙した私の姿も映っているのだぞ。割っても構わぬのか?」
「え、ダメ、あいや、…けどっ!だからって…あぁっ!」
もう一回歌ってもらうことを条件にその魔石は諦めた…。あの嬉しそうなエロい顔を見たら、もう諦める以外の選択肢はかき消えた。
「その代わりあのニセ生誕珠みたいにアベニアが開けないよう、厳重に厳重にすっごーい封印かけて隠しておいてくださいね!もうほんとにお願いですから…。あんなの見られたら死ねる…」
「お前に死なれるのもお前の痴態を見せるのもお断りだ。言われなくとも誰の目にも触れさせぬわ」
「あんなのどうするんです?本人はここに居るじゃないですか。」
「それはそれ、これはこれだ。」
「あ”ーーー!」
と、まぁ、そんなことはあったけど気を取り直して今日はミルドレッドに披露する日だ。
グラナダ様が好んで着る衣装は大抵の場合ダークカラーが多いんだけど、今日はさすがにキラキラ感を優先して、白ベースに髪色に合わせた濃紺を差し色に入れ、金モールと金エモレットと金ボタンで正装に近い感じに仕立ててみた。
王子様というより王様だけど、悪の総督感はほとんど消えた。
パシャー「あ、視線くださーい」
パシャー「はいラストでーす」
「アデルよ、今日の主役はミルドレッドではないのか。いい加減にせよ」
「はぁい。」
グラナダ様の白い衣装に陽の光が反射して、そのキラキラした王族感にミルドレッドは泣くこともせず魅入っている。
こっそりピンクベージュの魔法を飛ばしてグラナダ様にさらに金ラメのようなエフェクトを纏わせる。エフェクトはグラナダ様の周りを舞って、まるでベッドメリーみたいだ。
「おお…笑っておりますぞ。」
「ああ、本当ですね。嬉しそうだ」
「閣下、今ですよ、指っ!指を出して!」
歌いながらも覗き込み、その指をそっと差し出すと…
「あーだー」キュッ
グラナダ様のその太い指を小さなお手々がそっと握った…。
僕のグラナダ様キラキラロイヤルエフェクト作戦は大成功で終わったようだ。
ミルドレッドはグラナダ様を怖がらなくなったし、抱き上げても笑うようになった。ああ良かった。
僕のグラナダ様ミュージアムには久々に新作がいっぱい増えた。おかげで顔のニヤニヤがとまらない。
「あー、母さま、父さまがいっぱい!」
「エヘヘ、いーでしょアベニア。」
「あれ?なんかしんでんで見たのに似た小さいのがある…あー!ここにも父さまが!」
「じゃーん、自慢の祭壇です。」
「ふうん?じゃあせいたんじゅここでもお祈りしたの?」
「えっ?なんでそう思うの?」
「だってせいたんじゅって、しんでんでたくさんお祈りしないとダメなんでしょ?さいだんならお祈りするんだよね?」
「!」
目からウロコ!流石アベニア!
そうだよ!僕には祭壇があった!
ぎゅぅって抱きしめてほっぺにちゅぅってしたらアベニアは笑いながら逃げて行った。
そして僕はいつかの日の4人目を夢見て今日も大好きな家族と過ごすのだ。
恐ろしくにぎやかで、浮足立つほど華やかで、堕落的なほど享楽に満ちたこのバーガンディという楽園で。
あの素晴らしい歌声も姿も覚えているのに記憶が無いとはこれいかに。
正直もう一生見れないと思っていた推しの未来像をこんなところで見れるなんて。
着席スタイルとは言え歌も振りも完ぺきだった。
覚えてもらったのはJJF中期のCP曲。珍しく推しの歌わりが多い、低音を中心としたメジャーコードの柔らかいバラード。
夢へと向かう友人の為に、推しが作詞をしたファン垂涎の1曲だ。
発売時、特典違いジャケ写違いで、合計8パターンも発売されて、ライブのチケット代金を振り込んだ、まさに直後の僕のお財布に大ダメージを与えたとても思い出深い1曲でもある…。
その声も、ブレスも、少し眉間に皺を寄せて歌うところまでも…握りこぶしの握り方まで同じだなんてっ!もうっ!
気が付いた時にはグラナダ様の腕の中で、あー…ウォッホンッ…ともかく、それは良いんだけど、問題はそこに魔道映像機があったことだ……。
起動しっぱなしだったことをすっかり忘れていた…。そのうえさらに不幸だったのは、その事実に気が付いたのがグラナダ様の方が先だったことだ…。
グラナダ様ときたら映像が映しこまれた魔石を、さっさと取り出し内ポケットにしまうとどれだけ言っても返してくれない…。記念に取っておくなどと馬鹿な事を言う。あの手この手で散々交渉したけどどうしてもダメで…涙で枕を濡らしたあの夜…。嘘だけど。
「あの、魔石にはお前が涙した私の姿も映っているのだぞ。割っても構わぬのか?」
「え、ダメ、あいや、…けどっ!だからって…あぁっ!」
もう一回歌ってもらうことを条件にその魔石は諦めた…。あの嬉しそうなエロい顔を見たら、もう諦める以外の選択肢はかき消えた。
「その代わりあのニセ生誕珠みたいにアベニアが開けないよう、厳重に厳重にすっごーい封印かけて隠しておいてくださいね!もうほんとにお願いですから…。あんなの見られたら死ねる…」
「お前に死なれるのもお前の痴態を見せるのもお断りだ。言われなくとも誰の目にも触れさせぬわ」
「あんなのどうするんです?本人はここに居るじゃないですか。」
「それはそれ、これはこれだ。」
「あ”ーーー!」
と、まぁ、そんなことはあったけど気を取り直して今日はミルドレッドに披露する日だ。
グラナダ様が好んで着る衣装は大抵の場合ダークカラーが多いんだけど、今日はさすがにキラキラ感を優先して、白ベースに髪色に合わせた濃紺を差し色に入れ、金モールと金エモレットと金ボタンで正装に近い感じに仕立ててみた。
王子様というより王様だけど、悪の総督感はほとんど消えた。
パシャー「あ、視線くださーい」
パシャー「はいラストでーす」
「アデルよ、今日の主役はミルドレッドではないのか。いい加減にせよ」
「はぁい。」
グラナダ様の白い衣装に陽の光が反射して、そのキラキラした王族感にミルドレッドは泣くこともせず魅入っている。
こっそりピンクベージュの魔法を飛ばしてグラナダ様にさらに金ラメのようなエフェクトを纏わせる。エフェクトはグラナダ様の周りを舞って、まるでベッドメリーみたいだ。
「おお…笑っておりますぞ。」
「ああ、本当ですね。嬉しそうだ」
「閣下、今ですよ、指っ!指を出して!」
歌いながらも覗き込み、その指をそっと差し出すと…
「あーだー」キュッ
グラナダ様のその太い指を小さなお手々がそっと握った…。
僕のグラナダ様キラキラロイヤルエフェクト作戦は大成功で終わったようだ。
ミルドレッドはグラナダ様を怖がらなくなったし、抱き上げても笑うようになった。ああ良かった。
僕のグラナダ様ミュージアムには久々に新作がいっぱい増えた。おかげで顔のニヤニヤがとまらない。
「あー、母さま、父さまがいっぱい!」
「エヘヘ、いーでしょアベニア。」
「あれ?なんかしんでんで見たのに似た小さいのがある…あー!ここにも父さまが!」
「じゃーん、自慢の祭壇です。」
「ふうん?じゃあせいたんじゅここでもお祈りしたの?」
「えっ?なんでそう思うの?」
「だってせいたんじゅって、しんでんでたくさんお祈りしないとダメなんでしょ?さいだんならお祈りするんだよね?」
「!」
目からウロコ!流石アベニア!
そうだよ!僕には祭壇があった!
ぎゅぅって抱きしめてほっぺにちゅぅってしたらアベニアは笑いながら逃げて行った。
そして僕はいつかの日の4人目を夢見て今日も大好きな家族と過ごすのだ。
恐ろしくにぎやかで、浮足立つほど華やかで、堕落的なほど享楽に満ちたこのバーガンディという楽園で。
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(;^△^)
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