241 / 247
番外編 バーガンディの日常Ⅱ
アデルとグラナダ 第三子への道⑤
しおりを挟む
「あれ?コラート君来てたの?久しぶり。ああ、そういえば運営の手伝いしてるんだっけ?」
「ええ、家計の足しに…って、そうじゃなくて大変なんですっ!」
生まれたばかりの赤ちゃんを宿舎に預けて先月からコラート君は手伝いに来てる。
どうせ来るなら歌えばいいのに彼の夫は嫉妬深い。舞台には立たせたくないと言われてしまった…。
いくら自分がそうだったからと言って、ファンを目の敵にするのは違うでしょうが!まぁ、気持ちは分からないでもないけどね。
バタバタと楽屋へ行けばガトゥ君が呻いていた。
「えぇ!どど、どうしたのガトゥ君!大丈夫?」
「うぅ…」
「それが…のど飴と間違えて小さな魔石を飲みこんでしまったみたいで…」
「えぇー!なんでそんな間違い…って言ってる場合じゃない!」
「アデル様のヒールでどうか…」
「ヒール…ヒール⁉」
ヒールは怪我や不調を治すもの。魔石を飲み込んだ…この場合は…どうなのよ?これって怪我でも無ければ病気でもない。
大急ぎで探査をかける。ううん…これは…魔石の魔力が魔力回路を持たないガトゥ君の中で暴れている。
「だめ。ヒールでは何ともならない。魔石自体を身体から出さないと。ちょうどいいことに御典医様が邸に居るから通信送るね。大丈夫。短距離転移の護符を使って直ぐに来てもらうから。ガトゥ君頑張って!」
「アデル様…舞台…どうしましょう?今は教会の場面ですけど次は墓場の…」
「う…いや、この後はクライマックス、胸を剣で突くシーンだよね。こ、こ、こ、コラート君…歌…覚えてるよね?」チラッ
「歌…もちろん覚えてますけど、ダメです。僕…マックスと約束してて…絶対舞台には上がらないって…」
うぅぅ…マックスめ。嫉妬深い男は嫌われるぞ!いやでも、こんなことで人んちの家庭不和を引き起こすわけにはいかない。どうする…
「アデル様が出てはいかがです?」
「へっ?ナイジェルさん何言って…いやいやいや、僕歌えないから」
「コラート、歌は歌えるんだろう?陰に隠れて歌え。アデル様はそれに合わせて演じて下さい。こんなところで終わらせたら観客から苦情が出ます。」
「はっ?そんなの…え、ちょ、あ”ーーー!」
ナイジェルさんめ…やっぱり鬼プロデューサーだった。
無理やり予備の衣裳を着せられステージへと上がる。幸か不幸かジュリエットの衣装は妊夫仕様だ。参ったなぁ。演技なんて幼稚園以来だ。でもまぁ、鼓笛隊に居たから度胸だけはある。緊張はしない。
ああ…コラート君。相変わらず良い声だなぁ。観客として聴きたかった。そろそろかな?ここで剣を両手で掲げて胸に…
ズクン
んん?何か嫌な痛みが……。いや気のせい気のせい、剣を胸に刺して…っと。
ズクンズクン
あー、これって…だめだこりゃ…
とりあえずロミオに被さって息絶えてみる。周りでは残された両家が後悔と反省をして…る…
コソッ「アデル様大丈夫ですか?すごい汗ですけど…」
コソッ「う…生まれる…」
コソッ「えっ…ちょ、いいんですか?こんな…」
コソッ「あと少しで幕だ…か…ラ…」
コソッ「痛って…ぐぅ…アデル様…腕掴む力…弱めて下さい…」
コソッ「ム…ムリ…」
大歓声と共に幕が下りる。僕のブレスレットはとっくの昔にエマジェンシーを送ってる。僕の守護神グラナダ様に。
「アデル様、だ、大丈夫ですか?プッぐふっ、ふっ…」
「本当にもう、あなたって人は…。くくっ」
う、うるさい!マカフィーさんが余計なフラグを立てるから…くそぅ…
とりあえず支配人室に運び込まれる。どこかで大きな声がする。きっとグラナダ様だ。
「あ、アデル!大丈夫か!」
「ご、ご典医様は…」
「ガトゥの処置をしておる!安心せよ、直ぐにここへ来る!」
「うぅ…よか、良かったガトゥく…んあ…ダメ…も、だめ!グラナダ様早く取り上げて!!」
「なっ!またか!」「早くっ!も、出てるっ!」
んあー、んあー
ご典医様は間に合わなかった。だけど駆け付けるや否や呆然とするグラナダ様に代わって後の処置をしてくれた。
「いつになったら私めに取り上げさせてくれるのですかな?」
「あ、ほら…アベニアは無事に…ねぇ?」
力尽きたと思ったグラナダ様はキレイにくるまれた生まれたばかりの我が子を抱いて、主役の不在にざわつく観客に向かって舞台中央に進み叫んだらしい。
「皆これを見よ!我が第三子!ミルドレッドである!ああ…なんという生命の神秘…今ここに居る全ての者よ!祝福を分かち合おうぞ!」
ベイビーハイとでも言うんだろうか…お産婆ハイとでも言うんだろうか…
とりあえず歌劇場は宴会会場へと変貌し、近隣の店からあらゆる食べ物飲み物が運ばれ、観客の皆様全員がこのまま祝福の宴への招待客となったとか。めでたいめでたい。
だけど舞台に上がったことは…後からしっかり叱られた…。
「ええ、家計の足しに…って、そうじゃなくて大変なんですっ!」
生まれたばかりの赤ちゃんを宿舎に預けて先月からコラート君は手伝いに来てる。
どうせ来るなら歌えばいいのに彼の夫は嫉妬深い。舞台には立たせたくないと言われてしまった…。
いくら自分がそうだったからと言って、ファンを目の敵にするのは違うでしょうが!まぁ、気持ちは分からないでもないけどね。
バタバタと楽屋へ行けばガトゥ君が呻いていた。
「えぇ!どど、どうしたのガトゥ君!大丈夫?」
「うぅ…」
「それが…のど飴と間違えて小さな魔石を飲みこんでしまったみたいで…」
「えぇー!なんでそんな間違い…って言ってる場合じゃない!」
「アデル様のヒールでどうか…」
「ヒール…ヒール⁉」
ヒールは怪我や不調を治すもの。魔石を飲み込んだ…この場合は…どうなのよ?これって怪我でも無ければ病気でもない。
大急ぎで探査をかける。ううん…これは…魔石の魔力が魔力回路を持たないガトゥ君の中で暴れている。
「だめ。ヒールでは何ともならない。魔石自体を身体から出さないと。ちょうどいいことに御典医様が邸に居るから通信送るね。大丈夫。短距離転移の護符を使って直ぐに来てもらうから。ガトゥ君頑張って!」
「アデル様…舞台…どうしましょう?今は教会の場面ですけど次は墓場の…」
「う…いや、この後はクライマックス、胸を剣で突くシーンだよね。こ、こ、こ、コラート君…歌…覚えてるよね?」チラッ
「歌…もちろん覚えてますけど、ダメです。僕…マックスと約束してて…絶対舞台には上がらないって…」
うぅぅ…マックスめ。嫉妬深い男は嫌われるぞ!いやでも、こんなことで人んちの家庭不和を引き起こすわけにはいかない。どうする…
「アデル様が出てはいかがです?」
「へっ?ナイジェルさん何言って…いやいやいや、僕歌えないから」
「コラート、歌は歌えるんだろう?陰に隠れて歌え。アデル様はそれに合わせて演じて下さい。こんなところで終わらせたら観客から苦情が出ます。」
「はっ?そんなの…え、ちょ、あ”ーーー!」
ナイジェルさんめ…やっぱり鬼プロデューサーだった。
無理やり予備の衣裳を着せられステージへと上がる。幸か不幸かジュリエットの衣装は妊夫仕様だ。参ったなぁ。演技なんて幼稚園以来だ。でもまぁ、鼓笛隊に居たから度胸だけはある。緊張はしない。
ああ…コラート君。相変わらず良い声だなぁ。観客として聴きたかった。そろそろかな?ここで剣を両手で掲げて胸に…
ズクン
んん?何か嫌な痛みが……。いや気のせい気のせい、剣を胸に刺して…っと。
ズクンズクン
あー、これって…だめだこりゃ…
とりあえずロミオに被さって息絶えてみる。周りでは残された両家が後悔と反省をして…る…
コソッ「アデル様大丈夫ですか?すごい汗ですけど…」
コソッ「う…生まれる…」
コソッ「えっ…ちょ、いいんですか?こんな…」
コソッ「あと少しで幕だ…か…ラ…」
コソッ「痛って…ぐぅ…アデル様…腕掴む力…弱めて下さい…」
コソッ「ム…ムリ…」
大歓声と共に幕が下りる。僕のブレスレットはとっくの昔にエマジェンシーを送ってる。僕の守護神グラナダ様に。
「アデル様、だ、大丈夫ですか?プッぐふっ、ふっ…」
「本当にもう、あなたって人は…。くくっ」
う、うるさい!マカフィーさんが余計なフラグを立てるから…くそぅ…
とりあえず支配人室に運び込まれる。どこかで大きな声がする。きっとグラナダ様だ。
「あ、アデル!大丈夫か!」
「ご、ご典医様は…」
「ガトゥの処置をしておる!安心せよ、直ぐにここへ来る!」
「うぅ…よか、良かったガトゥく…んあ…ダメ…も、だめ!グラナダ様早く取り上げて!!」
「なっ!またか!」「早くっ!も、出てるっ!」
んあー、んあー
ご典医様は間に合わなかった。だけど駆け付けるや否や呆然とするグラナダ様に代わって後の処置をしてくれた。
「いつになったら私めに取り上げさせてくれるのですかな?」
「あ、ほら…アベニアは無事に…ねぇ?」
力尽きたと思ったグラナダ様はキレイにくるまれた生まれたばかりの我が子を抱いて、主役の不在にざわつく観客に向かって舞台中央に進み叫んだらしい。
「皆これを見よ!我が第三子!ミルドレッドである!ああ…なんという生命の神秘…今ここに居る全ての者よ!祝福を分かち合おうぞ!」
ベイビーハイとでも言うんだろうか…お産婆ハイとでも言うんだろうか…
とりあえず歌劇場は宴会会場へと変貌し、近隣の店からあらゆる食べ物飲み物が運ばれ、観客の皆様全員がこのまま祝福の宴への招待客となったとか。めでたいめでたい。
だけど舞台に上がったことは…後からしっかり叱られた…。
162
お気に入りに追加
3,284
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
市川先生の大人の補習授業
夢咲まゆ
BL
笹野夏樹は運動全般が大嫌い。ついでに、体育教師の市川慶喜のことも嫌いだった。
ある日、体育の成績がふるわないからと、市川に放課後の補習に出るよう言われてしまう。
「苦手なことから逃げるな」と挑発された夏樹は、嫌いな教師のマンツーマンレッスンを受ける羽目になるのだが……。
◎美麗表紙イラスト:ずーちゃ(@zuchaBC)
※「*」がついている回は性描写が含まれております。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
殿下、俺でいいんですか!?
神谷レイン
BL
薬剤魔術師として王宮に勤める若者セス。
ある日突然王様から十一歳年上の第三王子のレオナルド殿下と結婚して欲しいと頼まれた。なんでも広まっていない同性婚を世間に周知する為らしい。
でも、どうして俺なの!? レオナルド殿下って、美丈夫じゃん! 俺みたいなのじゃ見劣りするよ!
そう思いつつも、当の本人レオナルドに他の人に変えてもらうように頼むが、ほだされて形式上の結婚を結ぶことに。
困惑しっぱなしのセスに待っている未来は?!
小説家になろうでも同時掲載しています。
https://novel18.syosetu.com/n8355gi/
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる