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番外編 バーガンディの日常Ⅱ

アデルとグラナダ 第三子への道

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ある日の昼下がり、グラナダ様が神妙な顔をして言い出した。

「アデルよ…アベニアはもう6歳か…そしてグレンも大きくなった。そろそろ3人目を作るのはどうだ。」
「3人目…ですか?それは全然良いですけど…グラナダ様、3人目は考えてないって言ってたじゃないですか」
「いやあれは…」

「旦那様はグレン様のいつか来る嫁入りを考えて寂しくなってしまわれたんですよ。まったく気の早い…」
「って言うか、婿を取るかも知れないでしょう?なんで嫁入り限定なんですか?」

グラナダ様は、最近4歳になったばかりのその可愛い可愛いグレンを膝に乗せ何を馬鹿な事をって顔とポーズでこっちを見る。なにそのポーズ。

「グレンの可愛らしさをみればわかりきった事であろう。見よ、このお前に似た天使のようなこの姿を。ああ、カマーフィールドのご両親はこんな可愛いアデルを毎日見ておったのか。嫁に出すときはどれ程辛かったろう。今ならどれほどでも詫びたであろうよ」
「辛かっただろうことは否定しませんけど…今ではみんなグラナダ様に感謝してますよ。なにしろ僕はグラナダ様に一目惚れしてこんなに強くなりましたから」

あのタイミングでの性格変貌をすべてグラナダ様への愛情ゆえで片付けてきた。カマーフィールドの心配をすべて払拭してくれたグラナダ様にみんな本当に感謝しかしていない。

「アデル様。感謝しているのはこの爺もでございます。旦那様を救ったどころかこんな可愛い孫までも…」

トマスさんはグレンが生まれた後くらいから一人称が爺になった。グラナダ様のご両親は既に霊廟の地中深くだし、アベニアの時から当たり前みたいにおじいちゃまだよって言い続けてたから気づいたらそうなってた。

「とうちゃま、グレンはおよめになんかいかないよ…グレンはとうちゃまのおよめになるの。」
「ぐ、グレンっ!何と可愛い事を…お、」
「お?」
「お前は誰にも嫁にはやらぬ!絶対にだ!」

グラナダ様のあまりの剣幕に、グレンの独身人生が決定する前にと早急に生誕珠を賜りに行くことを決めたのであった。


今では様変わりした王都の商業街を恋人繋ぎしながらグラナダ様と歩く。きれいになったなぁ、ここも。
はじめて歩いたあの時は乱の名残でそこらじゅうで補修工事が行われててガタガタ道で抱きかかえてくれたっけ。
その後もここへ来るたび整えられていくその様に、国の繁栄を肌で感じてとても嬉しくなったものだ。

「辺境伯様!辺境伯夫人!いつもごひいきありがとうございます!」

今ではすっかり常連になった王都の宝飾店。
4歳になるまでグレンの石がおあずけだったのは良質な石が手に入らなかったから。
グラナダ様のチョイスしたそれくらいレアな石はセレンディバイト。気品と勇気をたたえる石。艶やかに煌めくその石をじっと眺めていると奥の方に青や緑が揺らめいて…まるで時空の海を思い出させる。

「良い石が入って良かったですねグラナダ様。ねぇ、こっちのブラックオパール、これも一つ買っても良いですか?」
「ふむ、気に入ったのか?」
「ブラックオパールの石言葉は威嚇と魅力。意地っ張りなグレンにはぴったりだと思って」
「意地っ張り…そうであろうか?」
「そうですよ、グレンはたとえ転んでも人前では絶対に泣かないんです。すぐにピーピー泣いてたアビーとは大違い。ふふ、兄弟って一人一人違うんですね。どの子もみんな可愛い!」

「そうか、泣かぬか…子供の頃の私のようだ。」
「グラナダ様…グレンの力になってくださいね。繊細なあの子はきっと僕よりグラナダ様のほうが分かってやれるから…。ね、お父ちゃま」

僕からのお父ちゃま呼びにグラナダ様の瞳の奥が妖しく光った。「第三子か、楽しみだ」そう言いながら。
きっと今夜は酷い目に合う。久しぶりの受精行為だ。覚悟しとくか…ふぅ。





中央神殿、何かとここへはやって来るけど生誕珠の間にやってくるのは実に4年ぶりの事なのだ。

「これはこれは辺境伯閣下…。相変わらず仲睦まじい。とても好ましいことでございます。」
「うむ、聖人殿も健勝なようでなによりだ。此度は第三子を賜りに来た。良しなに頼む」

「さすがは天下のバーガンディ。第三子とは豪勢な。良き治世に良き繫栄。まことこの国は盛時でございますな。」
「うむ。陛下にも勧めておこう。子は多いほうが良い。良き治世の元においては」



久しぶりの神殿の最奥。祈りの最中うっかりふと思ってしまったのだ。
ああ、あそこに水鏡が…。懐かしい。本物のアデル楽しそうだった。アデル…。グレンの中身はグラナダ様だ。アビーの中身は僕と一緒。じゃぁアデルの子供時代、パーバートに会う前ってどんな風だったんだろう…

そんなことを一瞬考えてしまったのだ…






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