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番外編 第二世代の恋模様
グレンの初恋は…④
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「それで、グレン様は剣の稽古はしないのですか?」
「しない。かあさまがしなくて良いって。それより魔法の訓練しなさいって。僕の属性は特殊だから。」
「特殊?」
ルミエと兄さまと…ついでにモデーロの剣の稽古。ちょっとだけ時間があったから特に理由はないけど見学してた。
そうしたらモデーロが汗を拭きながら「少し休憩」ってやって来て、僕の返事も聞かないで勝手に隣に座るものだから。
だ、誰が座っていいなんて…別にいいけど…
落ち着かない気分が続くものだからついうっかり、母様に「誰にも言っちゃいけないよ」って言われてた僕の属性、ぽろっと口をすべらしちゃった。
「ここだけの話だけど…時属性って聞いたことある?」
「いいや、もしや…過去や未来へ行けたり?」
「まさかっ!ちがうよ、少し先のことが見えるだけ。いまはそれだって10秒先くらい。役に立たないよ。レベルが上がればもっと先のことも見えるようになるかもって、カマーフィールドのおばあさまは期待してらした。」
時属性…未来視が出来る特殊属性。過去に一人だけ確認できたことがあるという。このリーガル王国の中で今は多分僕しか居ない。
どうして僕がこんな属性をって持ってるか父様に聞いたことがある。
父様が言うには、僕がまだ母様のお腹に居た頃、母様はわけあって時空を超えたことがあるんだって…なんだかすごい…
だからおそらくその影響なんじゃないかって言ってらした。兄さまもその事はなんとなく覚えてて、母様が居なくなりそうで怖かったって、すごく怖かったってそう言っていた。
「…グレンさま、いくらバーガンディにウワサに名高い第二第三衛兵隊があるからって、悪人が入り込まないわけじゃないんです。そのこと安易に話してはいけませんよ」
この間モデーロにからかわれてから僕は警戒心を最大限にしてる。だけどこうして二人きりでいると、どうしても気持ちが落ち着かなくて…。それでつい余計な事まで話し過ぎちゃう。話しちゃいけなかったことぐらい分かってる。だからってこんな言い方しなくてもいいのに。
「せっかく教えてあげたのに…ならもういい!モデーロにはもうなにも教えない」
「俺は知れて良かったですよ。グレン様を守るにしたって知ってるのと知らないのとでは大違いだ」
「守るって、モデーロはルミエの従者じゃない。ルミエのことだけ守ってればいいよ。それにモデーロは護衛じゃないし。それならどうして騎士を目指さなかったの?護衛や近衛ならそのほうが近道でしょ」
「誰も彼も守りたいわけじゃありませんからね。もちろん殿下の側付きとして何かあれば身を盾にする覚悟はありますが、俺が心から守りたいのは一人だけなんで」
心臓が跳ねあがった。守りたいって、それ…。もしかして…ううん、そんな。だってモデーロは…でも、もしかしたら…。どうしよう…ドキドキする…
「守ってあげたい子が居るんですよ。その子のことは一年前、王宮の裏庭で知りました。」
…王宮…そうか、好きな子が居るんだ…。2年たったら婚約したいってあれはやっぱり冗談だったんだ…バカみたい、真に受けたりなんかして…。ショックなんかじゃない…だってモデーロは意地悪で…僕をからかってばかりいる。ちょっと年上だからって。僕を子ども扱いして…。守ってあげたい子、僕より年上なのかな…
「ある日王宮の花の蜜に誘われてどこからかキングビーが入り込んだことがありました。そいつはその子とその子のまだ幼い弟を敵認定して狙っていたんです。大きな音をたてると余計に興奮させるって知ってた俺は物陰から奴の死角に入ろうと静かに機会を伺っていました。」
「え、それって…」
「その子は弟に、持ってたぬいぐるみを抱かせて泣かないよう言い聞かせると、自分だって怖くて震えてるのに両手を精一杯広げて前に出ました」
一年前、王宮で開かれた第二王子エスパールの誕生日会。退屈してぐずり始めたミルドレッドをなだめようと裏庭の花壇まで連れて行った。
そこに迷い込んできたキングビー。
体長50ソートくらいある大きなその虫は身体に似合った針を持っていて、あの針に刺されたらただでは済まないってゾッとした。
だけど僕は兄さまだから、僕よりちいさなミルドレッドを守らないとって、そう思って…だけど足が震えて止まらなかったんだ。
「俺は不謹慎にも、涙をこらえて必死になって弟を守ろうとキングビーに立ち向かうその姿から目が離せなかった。とても健気でそして、所々オーロラ色に輝く黒髪はとても気高くて、」
黒髪…やっぱり僕の事だ…。まさかあの姿をモデーロに見られてたなんて。け、気高いって…何言って…やだ…
さっきから感情の上がり下がりが忙しい…僕はすっかりモデーロの手の平の上で。コロコロと転がされているみたい。
「あ、だけどあの時助けてくれたのは…」
「残念なことに俺が飛び出すより先にその子の兄が駆け付けてあっという間に退治してしまいました」
「…兄さまが切ってくれた…」
「その時心に誓ったんです。もし今度同じような場面に遭遇したら…、今度こそ俺が守ってやりたいって」
モデーロの声はとてもやさしい声色で、僕を見つめるその瞳からもう一瞬だって目が離せない。
「その子は王家に近しい子で…だから考えたんですよ。どうしたらお知り合いになれるのかって。それで俺は殿下の従者に選ばれるよう努力したんです。殿下の側付きになれば、きっとその子に会えるはずってね。」
「ど、努力…って何の?」
「教養も、剣も、魔法も、立ち居振る舞いもなにもかもですよ。なにしろその子の周りにはとてつもなく強い人も、とんでもない魔法を使う人もごろごろしてて、おまけに生まれた時から容姿の整った集団に囲まれてますからね。どうしたらその子の気をひけるのかって…正直悩みましたよ。」
「あぅ…ぅ…」
ダメ!こんな顔、兄さまに見られたらまた熱があるって大騒ぎになっちゃう。戻って!僕の顔。赤くならないで!
モデーロの言葉なんかで…モデーロの…モデーロが…うぅ…
「真っ赤な顔が恥ずかしいですか?じゃぁほら、こうしたらどうですか?」
「ふぇ?」
どうしてモデーロには考えてる事全部わかっちゃうんだろう…?だけどこんなのは…
胸の中に抱きしめられて、僕はもう顔をあげられなかった。
「しない。かあさまがしなくて良いって。それより魔法の訓練しなさいって。僕の属性は特殊だから。」
「特殊?」
ルミエと兄さまと…ついでにモデーロの剣の稽古。ちょっとだけ時間があったから特に理由はないけど見学してた。
そうしたらモデーロが汗を拭きながら「少し休憩」ってやって来て、僕の返事も聞かないで勝手に隣に座るものだから。
だ、誰が座っていいなんて…別にいいけど…
落ち着かない気分が続くものだからついうっかり、母様に「誰にも言っちゃいけないよ」って言われてた僕の属性、ぽろっと口をすべらしちゃった。
「ここだけの話だけど…時属性って聞いたことある?」
「いいや、もしや…過去や未来へ行けたり?」
「まさかっ!ちがうよ、少し先のことが見えるだけ。いまはそれだって10秒先くらい。役に立たないよ。レベルが上がればもっと先のことも見えるようになるかもって、カマーフィールドのおばあさまは期待してらした。」
時属性…未来視が出来る特殊属性。過去に一人だけ確認できたことがあるという。このリーガル王国の中で今は多分僕しか居ない。
どうして僕がこんな属性をって持ってるか父様に聞いたことがある。
父様が言うには、僕がまだ母様のお腹に居た頃、母様はわけあって時空を超えたことがあるんだって…なんだかすごい…
だからおそらくその影響なんじゃないかって言ってらした。兄さまもその事はなんとなく覚えてて、母様が居なくなりそうで怖かったって、すごく怖かったってそう言っていた。
「…グレンさま、いくらバーガンディにウワサに名高い第二第三衛兵隊があるからって、悪人が入り込まないわけじゃないんです。そのこと安易に話してはいけませんよ」
この間モデーロにからかわれてから僕は警戒心を最大限にしてる。だけどこうして二人きりでいると、どうしても気持ちが落ち着かなくて…。それでつい余計な事まで話し過ぎちゃう。話しちゃいけなかったことぐらい分かってる。だからってこんな言い方しなくてもいいのに。
「せっかく教えてあげたのに…ならもういい!モデーロにはもうなにも教えない」
「俺は知れて良かったですよ。グレン様を守るにしたって知ってるのと知らないのとでは大違いだ」
「守るって、モデーロはルミエの従者じゃない。ルミエのことだけ守ってればいいよ。それにモデーロは護衛じゃないし。それならどうして騎士を目指さなかったの?護衛や近衛ならそのほうが近道でしょ」
「誰も彼も守りたいわけじゃありませんからね。もちろん殿下の側付きとして何かあれば身を盾にする覚悟はありますが、俺が心から守りたいのは一人だけなんで」
心臓が跳ねあがった。守りたいって、それ…。もしかして…ううん、そんな。だってモデーロは…でも、もしかしたら…。どうしよう…ドキドキする…
「守ってあげたい子が居るんですよ。その子のことは一年前、王宮の裏庭で知りました。」
…王宮…そうか、好きな子が居るんだ…。2年たったら婚約したいってあれはやっぱり冗談だったんだ…バカみたい、真に受けたりなんかして…。ショックなんかじゃない…だってモデーロは意地悪で…僕をからかってばかりいる。ちょっと年上だからって。僕を子ども扱いして…。守ってあげたい子、僕より年上なのかな…
「ある日王宮の花の蜜に誘われてどこからかキングビーが入り込んだことがありました。そいつはその子とその子のまだ幼い弟を敵認定して狙っていたんです。大きな音をたてると余計に興奮させるって知ってた俺は物陰から奴の死角に入ろうと静かに機会を伺っていました。」
「え、それって…」
「その子は弟に、持ってたぬいぐるみを抱かせて泣かないよう言い聞かせると、自分だって怖くて震えてるのに両手を精一杯広げて前に出ました」
一年前、王宮で開かれた第二王子エスパールの誕生日会。退屈してぐずり始めたミルドレッドをなだめようと裏庭の花壇まで連れて行った。
そこに迷い込んできたキングビー。
体長50ソートくらいある大きなその虫は身体に似合った針を持っていて、あの針に刺されたらただでは済まないってゾッとした。
だけど僕は兄さまだから、僕よりちいさなミルドレッドを守らないとって、そう思って…だけど足が震えて止まらなかったんだ。
「俺は不謹慎にも、涙をこらえて必死になって弟を守ろうとキングビーに立ち向かうその姿から目が離せなかった。とても健気でそして、所々オーロラ色に輝く黒髪はとても気高くて、」
黒髪…やっぱり僕の事だ…。まさかあの姿をモデーロに見られてたなんて。け、気高いって…何言って…やだ…
さっきから感情の上がり下がりが忙しい…僕はすっかりモデーロの手の平の上で。コロコロと転がされているみたい。
「あ、だけどあの時助けてくれたのは…」
「残念なことに俺が飛び出すより先にその子の兄が駆け付けてあっという間に退治してしまいました」
「…兄さまが切ってくれた…」
「その時心に誓ったんです。もし今度同じような場面に遭遇したら…、今度こそ俺が守ってやりたいって」
モデーロの声はとてもやさしい声色で、僕を見つめるその瞳からもう一瞬だって目が離せない。
「その子は王家に近しい子で…だから考えたんですよ。どうしたらお知り合いになれるのかって。それで俺は殿下の従者に選ばれるよう努力したんです。殿下の側付きになれば、きっとその子に会えるはずってね。」
「ど、努力…って何の?」
「教養も、剣も、魔法も、立ち居振る舞いもなにもかもですよ。なにしろその子の周りにはとてつもなく強い人も、とんでもない魔法を使う人もごろごろしてて、おまけに生まれた時から容姿の整った集団に囲まれてますからね。どうしたらその子の気をひけるのかって…正直悩みましたよ。」
「あぅ…ぅ…」
ダメ!こんな顔、兄さまに見られたらまた熱があるって大騒ぎになっちゃう。戻って!僕の顔。赤くならないで!
モデーロの言葉なんかで…モデーロの…モデーロが…うぅ…
「真っ赤な顔が恥ずかしいですか?じゃぁほら、こうしたらどうですか?」
「ふぇ?」
どうしてモデーロには考えてる事全部わかっちゃうんだろう…?だけどこんなのは…
胸の中に抱きしめられて、僕はもう顔をあげられなかった。
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